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レミーリア姫の黒騎士  作者: えながゆうき


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第11話 傭兵ギルドの掟

 何度かのボイドスペースへのワープを経て、最終目的である、バロン公爵の宇宙戦艦まで近づいた。

 ここまでは問題なし。問題があるとすれば、射撃訓練にハマったレミーリアが、毎日のようにギリアムの部屋を訪れたことくらいである。昼も夜も、お構いなしに。

 それともう一つ。レミーリアが軍用レーションに飽きてきたことである。


「予定ではあと二、三日で目的地に到着する」


 コクピットに座るギリアムのところへレミーリアがやって来た。決して広いとは言えない船内で退屈しているのだろうと思ったギリアムは、そう話しかけた。

 レミーリアがサブパイロットシートに座る。服はギリアムが用意していた、女性用の傭兵服である。


「これでやっとあの食事から解放されるのね」

「言っておくが、あれでも一番高価な軍用レーションだからな?」

「あれで……傭兵って大変なのね」


 それを聞いて頭を振るレミーリア。一番安価なレーションがどんな味なのか、今のレミーリアには想像することができなかった。

 きっともっと塩辛いに違いない。クラッカーも湿気ているに違いない。もちろんそんなことはないのだが。


「長期間、補給なしで宇宙空間を移動することもあるからな。そのための保存食だ」

「一度もコロニーを訪れなかったものね」

「姫さんの安全のためだ」


 コロニーに寄港すれば、その寄港ログに履歴が残る。それをたどれば、ハイペリオンがどこへ向かっているのか、どのルートを通るのか、推測することも可能だ。

 途中で偽装のために宇宙船を乗り換えるにしても、ずっとハイペリオンが寄港したままだと、怪しまれることになるのは間違いない。


 それならば、一番信頼の置ける宇宙船を使うのが得策だとギリアムは判断した。

 コクピットでギリアムとレミーリアがたわいもない話をしていると、突如、アラームが鳴り響いた。


『マイロード、救難信号です』

「こんなときに……さすがに見なかったことにするのはまずいよな、HG?」

『とてもまずいと進言します』

「ダメよ、ギル。助けに行きましょう!」


 傭兵ギルドに所属している者は皆、救難信号を受信したら、救助へ向かわなければならないというルールがある。ギリアムは傭兵ギルドに所属しているため、当然、そのルールに従わなければならない。ルールを破った場合、傭兵ギルドから除名される。


 すでに星系軍へ救援を要請していることだろう。そうなると、近くを通る宇宙船についてのログも記録していることになる。どの宇宙船が通り過ぎたのかも、すぐに分かるのだ。

 前に話していた、HGのフラグを回収することになったな。ギリアムはさりげなく、HGにフラグを押しつけた。


「HG、場所の特定を頼む」

『場所を特定しました。レーダーに座標を表示します』

「姫さん、シートベルトをしっかりつけておくように。俺の操縦は荒いぞ」

「知ってるわ!」


 レミーリアは言われたとおりにしっかりとシートベルトで体を固定する。そしてシートベルトを握りしめた。

 またあのときのなんとも言えないスリルを味わうことになるのだろうか?

 そのときレミーリアは、自分がそれに対して、ワクワクしていることに気がついた。


 ドン! と鈍い音がして、ハイペリオンは通常の宇宙空間に出た。救難信号の発信源までは少し距離がある。ギリアムはエンジンの出力を戦闘レベルへと引き上げ、船の速度を上げた。

 モニター上に映る点が近づき、そして大きくなっていく。


『敵船十隻、そのうちの二隻が中型船です』

「おお……よりどりみどりだな」

「この緑の点が救難信号を出している船ね。そしてこの赤い点が敵の船。まさか、共和国軍の宇宙船じゃないわよね?」

「それはない。この遅さだからな。それよりも、舌をかんでも知らないぞ」

「心配ご無用。前の戦いでギルの操縦には慣れたわ」

「それならいいんだが……」


 レミーリアはなかなか肝が据わっている。どうやらただのじゃじゃ馬ではなさそうだと、ギリアムは認識を改める。なかなか頼もしい性格をしているらしい。

 そうこうしている間に、モニターに敵船の調査結果が表示される。どれも賞金つきの宙賊だった。


「この辺りを縄張りにしている宙賊みたいだな」

「ねえ、数が多いけど、大丈夫なの?」

「確かに数はいるが、どれもポンコツのオンボロ船だ。俺の敵じゃないな。問題は襲われている船が保つかだな」


 宙賊はまだ後ろから光速で近づくハイペリオンに気がついていなかった。そのため今も、交易船と思われる宇宙船に向けて、攻撃を続けている。


「HG、救難信号を出している船に通信を入れる」

『いつでもどうぞ、マイロード』

「こちら傭兵ギルド所属、ハイペリオンの艦長、キャプテン・ギリアムだ。これより支援を開始する」


 ザザ、ザザ……とノイズが少し混じってはいるが、すぐに相手側の声が聞こえてきた。宙賊が通信を妨害しようとしていたが、HGの前ではなんの意味もなさなかったのである。


『傭兵ギルド!? 助かった! こちらコロンブス商社の交易船、岩窟丸だ。支援に感謝する。星系軍にはすでに救援を出しているが、到着までにはもう少しかかると思う。時間稼ぎをお願いしたい』

「了解、岩窟丸。シールドの維持にエネルギーを回してくれ」

『分かった!』


 モニター上に映る岩窟丸の速度が落ちた。推進力に使っていたエネルギーを防御に回したためである。そうなると、ミサイルなどの実弾兵器を使わない限りは、宙賊の戦力ではシールドをなかなか破ることはできない。

 そして宙賊は費用がかかる実弾兵器をなるべく使いたがらない傾向にあった。時間稼ぎには持って来いである。

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