2章 第3話
犯人を名乗る声が生放送で流れた瞬間、世界が反応し
た。
SNSは瞬時に炎上し、
#爆弾放送
というタグが数十分でトレンド入りする。
副調整室で黒瀬はモニターに表示された視聴率を凝視していた。
「……あり得ない数字だ」
インカム越しに、興奮を抑えきれない声で告げる。
「桐生、視聴率が五十パーセントを超えてる。局の歴代最高だ」
桐生は言葉を返せなかった。
歓喜すべき数字のはずなのに、背筋に寒気が走る。
「一度、CMを入れる」
黒瀬の指示が飛んだ。
フロアのスタッフが一斉に反論する。
「今止めたら、何が起きるかわからない!」
「犯人を刺激する可能性が――」
だが最終的に、決定は覆らなかった。
番組はCMに切り替わる。
スタジオの照明がわずかに落ち、緊張が空気に沈殿し
た。
桐生は無線機に向かって口を開いた。
「……あなたの目的は何だ」
直球の問いだった。
だが、応答はない。
ノイズだけが返ってくる。
桐生は視線を上げ、観覧者の方を見た。
数人の参加者が、スマートフォンを桐生に向けている。
赤い録画ランプが点灯しているのが見えた。
「何してるんですか。すぐに止めてください」
思わず声を荒げた。
だが参加者の一人は、悪びれた様子もなく言った。
「これ、生配信してる」
その一言で、桐生の背中に冷たい汗が流れた。
放送だけではない。
今この瞬間、無数の個人配信が世界中に拡散している。
もはや、局の管理下にはない。
そのとき、インカムに声が入る。
「……CM、終了五秒前」
桐生は無線機とカメラを交互に見た。
生放送が再開する。
そして、犯人もまた――見ている。




