2章 第4話
午後四時。
テキサス州・FBI本部。
作戦室の照明は落とされ、巨大スクリーンだけが淡く
光っている。
ライアン・ケラーとマーカス・ブレイクは、事件の時系列と犯人像の仮説を並べていた。
「犯人は追跡型じゃない。舞台演出型だ」
ライアンの指先がホログラフィックパネルをなぞる。
「観測者が増えるほど行動がエスカレートするタイプだ」
その瞬間だった。
金属製の扉が、乱暴に開かれる。
鈍い音が作戦室に響き、二人は反射的に振り返った。
ダニエル・ホーキンスとルーカス・モンローが立っていた。
ダニエルの動きは普段より大きく、呼吸も荒い。
怒りを抑えきれないまま、金属製のテーブルに掌を叩きつける。
「逃げられた」
短く吐き捨てるように言う。
モンローが続けた。
「ジープは消えた。囮だった可能性が高い」
ライアンが何かを言おうと口を開いた瞬間、再び金属
扉が激しく開いた。
本部職員の若い分析官だった。
顔色は青白く、息が乱れている。
「ケラー、これを見てください」
タブレットを接続し、中央モニターに映像を投影する。
画面に映ったのは、日本のテレビ局のスタジオ。
平穏そうな朝の情報番組の映像が流れている。
次の瞬間、無線機がキャスターの前に落ちる映像。
そこから流れ出す音声――
局が爆弾で脅迫され、人質状態にあるという内容。
しかもそれは、SNS配信の画面だった。
「……日本でも発生してるのか」
ライアンの声が低くなる。
分析官は首を横に振った。
「まだ日本だけじゃありません」
画面が切り替わる。
英語翻訳されたロシアの速報記事。
モスクワ市内で二件の爆発事件発生。連続性の可能性。
モンローが息を呑んだ。
「なんてこった……世界規模じゃないか」
ライアンは無言で操作パネルに指示を出した。
巨大スクリーンに世界地図が展開される。
自動的に爆発地点にピンが打たれていく。
東京。
横浜。
モスクワ。
同時に、被害人数、周辺環境データ、推定爆薬種別、爆発時の物理シミュレーションが三次元で生成されていく。
作戦室に、機械音だけが響いた。
「……完成したな」
ライアンが静かに呟く。
「これは単発事件じゃない。
国際規模の連続実験型テロだ」
彼は地図を見つめながら、確信した。
世界が、舞台に選ばれたのだ。




