2章 第5話
CMが明けると、映像は再びスタジオへ戻った。
桐生の前に広がる異様な緊張感は、電波を伝って全国へと流れ出し、まるで鰯の群れのように視聴者の間を走り抜けていく。
沈黙を破るように、参加者席の女性が立ち上がった。
「爆弾なんて冗談でしょ。ふざけないでよ!」
無線機に向かって吐き捨てるように叫ぶ。
数秒の沈黙のあと、無線機から乾いた声が返ってきた。
「なら、実演してやる。目の前でな」
次の瞬間だった。
彼女の目の前のテーブルが黒煙を噴き上げ、鈍い衝撃音とともに爆ぜた。
衝撃波がスタジオを震わせ、桐生のスーツに温かい液体が飛び散る。
女性は悲鳴を上げる暇もなく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて動かなくなった。
スタジオが凍りつき、同時に全国が凍りついた。
「キャアアアア!」
参加者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い、セットの端へと追い詰められていく。
桐生も反射的に席を立とうとしたが、無線機から怒声が響いた。
「お前は逃げるな!全国に放送し続けろ!巻き込まれた奴はもう用済みだ。外に運び出せ。
このスタジオのセット、機材、すべてが爆弾だ。どれか一つでも刺激を与えれば、全国の爆弾が爆発する。
桐生キャスター、お前が席を離れても爆発する」
その言葉に、桐生の身体が硬直した。
だが思考は恐怖よりも別の方向へ逸れていく。
――なぜ、このスタジオに爆弾を仕掛けられた?
内部犯行。
それしかあり得ない。
だが誰が、いつ、どうやって。
インカムから黒瀬の声が割り込んだ。
「桐生……視聴率がまた上がってる。もう60%だ」
史上最高の数字。
だがそれを聞いた瞬間、桐生の脳裏に浮かんだのは“番組として成立している”という冷酷な思考だった。
自分が、キャスターとしての本能でこの状況を“コンテンツ”として認識しかけている。
その事実に、桐生は戦慄した。
恐怖。
高揚感。
興奮。
緊張。
それらが混ざり合い、心臓が胸を打ち破りそうなほど激しく脈打っていた。




