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4章 第6話

取調室の中は静まり返っていた。


デスクライトの光が机の上を照らし、二人の影を長く引き伸ばしている。


沈黙のあと、デイヴィッドがふいに口を開いた。


「……今、何時だ?」


唐突な質問だった。


ライアンは眉をひそめながらも、腕を上げる。

手首のデジタル時計に視線を落とした。


「午後五時三十分だ」


その答えを聞いた瞬間、

デイヴィッドの口角がわずかに上がった。


ほんのかすかな笑み。


「……そろそろだな」


小さく、独り言のようにつぶやく。


ライアンの表情が険しくなる。


「何がだ」


デイヴィッドはすぐには答えなかった。


代わりに、ゆっくりと顔を上げる。


そして言った。


「ライアン」


声が低くなる。


「お前に質問がある」


ライアンは黙って見返す。


デイヴィッドは続けた。


「ナイフを持った犯人がいるとする」


淡々とした語り口だった。


「そいつは、お前の友人を殺した」


一瞬、間を置く。


「だが犯人は言うんだ」


デイヴィッドの視線が鋭くなる。


「一般人を五人以上殺せば、お前になら殺されてやる。」


静寂。


デイヴィッドはさらに続けた。


「だが、殺さなければ——」


ゆっくりと言葉を落とす。


「もう二度と捕まらない。」


机の上の光が揺れる。


「……その時、お前はどうする?」


ライアンは答えなかった。


できなかった。


突然すぎる問い。


そして、その内容。


「……なぜ急にこんなことを聞く?」


ライアンの声には警戒が滲んでいた。


デイヴィッドは少し身を乗り出す。


目の奥が暗く光る。


「答えろ」


声に、わずかな圧がこもる。


「どうするんだ?」


その言葉は、まるで試しているようだった。


ライアンの胸に重い圧力がのしかかる。


この問いはただの仮定じゃない。


答えによっては、自分もデイヴィッドと同じ狂気に踏み込む。


そんな不安が、頭の奥で警鐘を鳴らしていた。


ライアンは口を開こうとする。


その瞬間だった。


ビーッ!


突然、鋭い警報音が取調室に響き渡る。


天井のスピーカーから、緊急アナウンスが流れ始めた。


「——緊急連絡」


電子音混じりの声が続く。


「ジープが本部から逃走。

安全確認へ向かった捜査官と連絡が取れなくなっている。」


ライアンの顔色が変わる。


アナウンスはさらに続いた。


「ジープを追跡せよ。繰り返す——ジープを追跡せよ。」


取調室の空気が一変する。


ライアンが振り向いた瞬間。


デイヴィッドが、机に肘をついた。


そしてゆっくりと身を乗り出す。


顔が、ライアンのすぐ目の前まで近づく。


その表情には——


抑えきれない興奮が浮かんでいた。


だが声は、異様なほど落ち着いている。


「……ライアン」


口元が歪む。


「次の爆弾がどんなもんか」


ほんの少し笑う。


「教えてやろうか?」


デスクライトの光の中で、

デイヴィッドの瞳だけが冷たく光っていた。

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