4章 第3話
取調室の空気は重かった。
机の上のデスクライトだけが、二人の間を照らしている。
その光の境界線を挟んで、ライアンとデイヴィッドは向き合っていた。
ライアンはしばらく黙っていたが、やがて低い声で口を開いた。
「……あの時」
言葉を選ぶように続ける。
「お前は、あの爆発で死んだはずだ」
デイヴィッドの表情は変わらない。
ライアンの視線が鋭くなる。
「なのに——なぜ生きてる」
短い沈黙が落ちる。
デイヴィッドは椅子にもたれ、わずかに肩をすくめた。
「さあな」
乾いた声だった。
「俺も不思議に思ってる」
そして、どこか嘲るように言った。
「……なんで生きてるんだろうな」
ライアンの拳が机の下で強く握られる。
その態度が、余計に神経を逆撫でした。
ライアンは一歩身を乗り出した。
「質問を変える」
低く、はっきりとした声。
「郊外の爆弾。
マフィアの拠点の爆発」
一瞬、間を置く。
「——全部、お前がやったのか?」
デイヴィッドは迷いなく答えた。
「その通りだ」
あまりにもあっさりした口調だった。
まるで、天気の話でもしているかのように。
デイヴィッドは指を軽く机に当てながら続けた。
「郊外の爆弾はC-4」
淡々と説明する。
「幹線道路で、お前たちに投げ込んだのは——」
薄く笑う。
「改造したグレネードだ」
ライアンの目が細くなる。
デイヴィッドはさらに続けた。
「それから、マフィアの拠点」
一瞬、視線を上げる。
「……あれはハンドメイドだ」
自慢でもするかのような口調だった。
取調室の空気が、さらに冷たくなる。
ライアンはしばらく黙っていた。
そして、静かに言った。
「……何人死んだか、わかってるのか」
デイヴィッドは答えない。
ただ、デスクライトの光の中で、ゆっくりと目を細めた。
その表情には——
罪悪感が一切なかった。
ライアンの胸の奥で、何かが音を立てて軋んだ。
目の前にいるのは、かつて命を預け合った相棒。
だが今、そこにいる男は——
まるで別人だった。




