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3章 第6話

無線機から、再び男の声が流れた。


「これから名前を三つ言う」


スタジオにいる全員の視線が、机の上の無線機に集まる。


「月島 剛。

 戎谷 徹。

 扇田 恒人。


この三人を、今すぐスタジオに連れて来い」


副調整室がざわめいた。


黒瀬が短く命じる。


「探せ。全力でだ」


スタッフが一斉に動き出した。


そして――


一時間後。


スタジオの扉が開いた。


三人の男が、スタッフに案内されて入ってくる。


戸惑い、警戒し、状況を理解できない顔。


その瞬間。


無線機から、再び声が響いた。


「よし、全員揃ったな」


低く、落ち着いた声だった。


「これからルールを説明する」


スタジオの空気が、一段階冷える。


「そこにいる三人は、ある罪を犯している」


間。


「だが、その罪は無罪になったか、あるいは隠蔽された」


桐生の喉が小さく鳴った。


「これから俺が、その罪を読み上げていく」


男の声は、淡々としている。


まるで、書類を読み上げる事務員のようだった。


「三人のうち――」


わずかな間。


「罪を認めなかった人数に応じて、渋谷駅に仕掛けた爆弾が爆発する」


副調整室で誰かが息を呑む。


「それぞれに猶予時間を与える。

その時間内に罪を認めなければ――」


男は少し楽しむように言った。


「渋谷駅の爆弾が一つ爆発する」


スタジオの空気が凍りついた。


「もし認めた場合」


声が続く。


「最終的に、番組の視聴者投票によってその人物の生死を決定する」


ざわめきが広がる。


「生と判定された者は解放。

死と判定された者は――」


一拍。


「その場で処刑する」


沈黙。


完全な沈黙だった。


無線機のノイズだけが微かに響く。


「桐生キャスター」


突然、名前を呼ばれる。


桐生の肩が小さく震えた。


「今の説明を、視聴者に伝えろ」


冷たい命令。


「説明は以上だ」


通信が途切れる。


桐生は、マイクを見つめた。


言葉が出ない。


こんなことを、自分が伝えるのか。


こんな放送を――


だが。


奇妙なことに。


心の奥では、それを受け入れている自分がいた。


もう止められない。


この番組は、すでに動き出している。


桐生は深く息を吸い、カメラを見た。


「……ただいま、犯人を名乗る人物から、新たな要求がありました」


震える声を抑えながら、説明を始める。


スタジオの空気は、張り詰めたままだった。


その時。


無線機から再び声が流れた。


「では、始めよう」


短い宣告。


「一人目は――」


わずかな間。


「月島 剛」


名を呼ばれた男が顔を上げた。


「お前からだ」


「猶予は一時間」


月島の口から思わず声が漏れる。


「え……?」


状況を理解できていない。


その瞬間。


無線機から鋭い命令が飛んだ。


「キャスターの隣に座れ」


月島は動けない。


足が床に縫い付けられたようだった。


次の瞬間。


怒声がスタジオに響いた。


「早く座れ!」


月島はびくりと肩を震わせた。


慌てて歩き出し、桐生の隣の椅子に座る。


手が震えていた。


「では――」


無線機の声が再び落ち着く。


「月島剛」


一文字ずつ確認するように言う。


「お前の罪を読み上げる」


スタジオの空気が重く沈む。


「職業、建築施工管理技士」


紙をめくる音がした。


「独身。大学卒業後、大手ゼネコンに就職」


淡々とした読み上げ。


「八年間、施工管理として勤務」


月島の顔色が少しずつ変わっていく。


「だが、とあるマンション建設に関わったことで――」


声がわずかに低くなった。


「すべてが変わった」


月島の額に汗が滲む。


「当初、工事は順調だった」


沈黙。


「しかし工期短縮のため」


一拍。


「耐震データの改ざんを行った」


月島の呼吸が乱れる。


「結果――」


声が続く。


「マンションは崩落した」


スタジオが静まり返る。


「原因は施工時の鉄筋不足」


誰も動かない。


「多数が重傷」


そして。


「死亡者も出た」


月島の手が震えている。


「だが事故は――」


男の声は冷たかった。


「設計ミスとして処理された」


紙の音。


「会社は示談で事件を処理」


沈黙。


そして。


「これが、月島剛」


わずかな間。


「お前の罪だ」


スタジオの空気が凍りつく。


「……認めるか?」


月島の額から、汗が一滴落ちた。

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