古い写真
隼人達は写真を調べる事にした。。。
*** 写真の調査***
翌週。
五人は部室で、松田先生からもらった古い写真を拡大していた。
昭和四十年代の校舎の写真。複数枚。
それぞれが異なる時期、異なる角度から撮られたものだった。
「まずはこれ」
隆がスキャナーで読み込んだ写真の一枚目を表示した。
昭和四十一年撮影。
学校の全景を捉えた写真だ。
「校舎の位置……」
隼人が指摘した。
「今の位置と違う」
「ああ。昨日気づいた」
隆が頷いた。
「この写真の時点では、校舎は現在地より南に位置してる」
五人でその事実を確認した。
これは既に判明していることだった。
だが、改めて見ると、その「ズレ」の大きさが気になった。
「校舎が北へ移動する時に……」
秀が呟いた。
「何か理由があったのかな」
「地盤とか」
美優が仮説を立てる。
「だから動かしたのかな」
隼人はその写真をじっと見つめていた。
校舎。
校庭。
そして背景の山。
特に山。
「こっちが二枚目」
隆が別の写真を表示した。
***山の変化***
昭和四十三年撮影。
やはり校舎の全景だ。
だが、この写真では校舎が既に北へ移動していた。
ほぼ現在位置だ。
「この時点で既に新しい場所に建ってる」
隆が説明する。
「そこまでは第43章で分かってたんだけど……」
隆が写真の背景を指した。
「山……」
「何ですか」
美優が尋ねる。
「同じ時期の写真なのに」
隆が昭和四十一年の写真と、昭和四十三年の写真を並べた。
「山の輪郭が……違う」
五人は二つの写真を見つめた。
言われてみると、そう見える。
昭和四十一年の写真では、山は穏やかな曲線を描いている。
だが、昭和四十三年の写真では、その山に何か、角ばった部分が見える。
「建物ができたんでしょうか」
夕子が推測する。
「山に」
「かもな」
隼人がそう答えた。
「でも、昔の学校新聞に、『山に何かを建てた』という記事とか……ありましたか」
秀が隆に聞く。
「……ない」
隆が確認した。
「資料の中には、そういう記事はなかった」
五人は、その事実に少し無言になった。
山の輪郭が変わったのに、その理由が記録されていない。
「写真の判読ミスかな」
秀がそう言ったが、誰もがそれを確信できなかった。
***隅の構造物***
「三枚目」
隆がまた別の写真を表示した。
昭和四十五年撮影。
やはり校舎の全景だ。
だが、この写真では、校舎が現在と同じ位置に定着していた。
「この時点で建て替えが完了したんでしょう」
隆がそう説明した。
だが、その写真を見ていた秀が、ふと声を上げた。
「あ……」
「どうした」
隼人が聞く。
「写真の隅……」
秀は写真の隅を指した。
校舎の左端。
その奥。
写真の端にかろうじて映っているもの。
「何か……あります」
隆が拡大ボタンを押した。
映像が拡大される。
写真の隅に、石垣のようなものが見える。
「これ……」
美優が呟いた。
「何ですか」
「石垣?」
隆が提案した。
「古い塀とか?」
「でも」
隼人が言った。
「今、この位置に石垣ってあります」
五人は現在の学校の配置を思い起こした。
「……ない」
夕子が答えた。
「この隅には、何もない」
昭和四十五年の写真には確実に写っていたもの。
だが、現在は存在しない。
「何だったのか」
秀が呟いた。
「壊されたんでしょうか」
「それとも……」
隼人がその先を言わなかった。
「それとも何ですか」
美優が聞く。
「いや……」
隼人は首を振った。
「分からない」
***撮影場所のメモ***
それから、五人は他の写真も調べていった。
だが、特に注目に値する異変は見当たらなかった。
しばらくして、隆が写真の裏側に目をやった。
「あ、これ……」
「何?」
「写真の裏にメモがある」
隆が古い写真の裏を向けた。
薄れた鉛筆書きで、何か書かれていた。
『昭和四十五年十月二十日 校舎完成記念写真
撮影地点 校庭北側より。山を背景に』
「山を背景に」
秀が読み上げた。
「校庭北側から」
「では」
隼人が言った。
「その場所を、現在の地図で確認してみましょう」
隆がパソコンを操作した。
学校の地図が表示される。
校庭北側。
その地点から見た写真の背景は、現在の山と一致するはずだ。
だが。
「あれ……」
隆が眉をひそめた。
「校庭の北側って……」
現在の校庭の北側は、体育館がある。
その体育館の向こうに山が見える。
だが、その位置関係が、昭和四十五年の写真と明らかに異なっていた。
「これ、変ですね」
美優が言った。
「校舎が移動しただけじゃなくて、校庭そのものの形が……」
「変わってる」
隼人が完成させた。
その時だ。
秀が、ゆっくりと口を開いた。
「こういう……時間差ってさ」
「何?」
隆が聞く。
「昭和四十年代から今までで、色々変わるのって……偶然なのかな」
誰も、その問いに答えることができなかった。
校舎の移動。
山の輪郭の変化。
消えた構造物。
一致しない地図。
すべてが、偶然で説明できるのだろうか。
それとも、何か理由があるのか。
五人には、判断できなかった。
***瑞希への相談***
その日の放課後。
隼人は瑞希に、古い写真をメールで送ることにした。
瑞希は大学生で、新霊体験隊の顧問的な立場である。
また、瑞希自身、何か霊的なことについて知識がありそうだった。
『古い学校の写真です。何か気になることがあれば教えてください』
そう添えて。
二時間後。
瑞希から返信が来た。
『これ、見に来てもいい?明日の放課後』
隼人は即座に返信した。
『わかりました。部室で待ってます』
***瑞希の来訪***
翌日の放課後。
瑞希は部室を訪れていた。
五人と瑞希。
六人で写真を見つめていた。
「このメモ……」
瑞希が写真の裏側を見ていた。
「撮影場所が……」
「地図と合わないんです」
隼人が説明した。
瑞希はそれでも、写真を見つめていた。
特に、背景の山を。
「この山……」
瑞希がようやく口を開いた。
「何か……違うね」
「違う?」
隆が聞き返す。
「どういう風に」
「うーん……」
瑞希は首をかしげた。
「説明しにくいんだけど。何か、この山だけが……」
瑞希は言葉を途中で止めた。
「気になります」
夕子が促す。
「……ちょっと、一度師匠に聞いてみようか」
瑞希がそう言った。
「師匠?」
美優が目を丸くした。
「瑞希さんは、誰かに習ってるんですか」
「ああ。霊的なことについて、ね」
瑞希が説明した。
「この学校のことについても、何か知ってるかもしれない」
隼人が聞いた。
「師匠は、学校について何か知ってるんですか」
「多分ね」
瑞希が言った。
「この辺りには、色々な場所がある。その一つかもしれない」
瑞希は写真をもう一度、じっと見つめた。
「一度聞いてみた方がいいかもしれない」
そう言って、瑞希は写真をスマートフォンで撮影した。
***部室でのお札***
瑞希が去った後。
五人は部室で、古い写真を見つめていた。
「師匠って誰だろう」
秀が呟いた。
「瑞希さん、こういう人に教わってたんだ」
「何か……力があるのかな」
美優が呟く。
その時。
隆が壁を見た。
「あ……」
「どうした」
隼人が聞く。
「お札……」
隆は部室の壁に貼られていたお札を指した。
瑞希からもらったお札。
床に落ちていたそのお札だ。
「これ……」
隆は札を外して、じっと見つめた。
文字が書かれている。
だが、隆はそれが何の文字か、分からなかった。
「瑞希さんに聞いても、説明してくれなかったね」
秀が言った。
「何で貼られてるのか」
夕子が付け足した。
「ただ、貼っておくといいって」
隼人がそう言った。
そして、そのお札が夜、剥がされたことを思い出した。
何かが、その札を外そうとした。
あるいは、壊そうとした。
だが失敗した。
「このお札も……」
隼人が呟いた。
「何か関係があるんだろう」
だが、その「何か」が何なのかは、誰にも分からなかった。
***謎の積み重ね***
その夜。
部室には、新しい謎が一つ加わっていた。
瑞希の師匠という、まだ登場していない人物。
その師匠が、古い写真の山に何か感じたこと。
そして札という、まだ説明されていないもの。
数十年にわたる学校の変遷。
消えた構造物。
一致しない地図。
花子という少女の存在。
山からくる「古いもの」。
部室の安全性。
すべてが、その時点では結びつかないまま、五人の前に積み重なっていた。
隼人は、その夜。
古い写真を改めて見つめていた。
昭和四十年代の校舎。
昭和四十年代の山。
そして、その背景に隠されたもの。
「花子さんは……」
隼人が呟いた。
「あの時代にいたんだ」
そう思い至った時。
別の疑問が浮かんだ。
花子は、あの時、何があって亡くなったのか。
それとも、今も学校のどこかに?
そして、消えた構造物は何だったのか。
山の輪郭は、なぜ変わったのか。
部室の札は、何を守っているのか。
答えは、まだ遠かった。
だが、確実に。
学校の過去へ向かって、五人は進んでいた。
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