謎の究明
隼人達は、謎を解明する為に調査を深めて行った。
***事務室にて***
週末、隼人たちは健一の紹介で学校事務室を訪れていた。
「古い生徒名簿、見せていただけますか」
隼人が事務員に丁寧に頭を下げる。
「うちの学校の七不思議、調べてるんです」
美優が明るく付け加えた。
事務員は少し驚いた様子だったが、快く資料庫へと案内してくれた。
「これが一番古い記録ですね」
事務員が埃をかぶった分厚いファイルを取り出す。
「ありがとうございます」
夕子が丁重に受け取った。
***名簿を追う***
五人は資料庫の隅で古い名簿をめくり始めた。
「何年分くらいあるんだろう」
秀が山積みのファイルを見てため息をつく。
「気が遠くなるな」
「手分けしよう」
隼人が提案した。
それぞれが異なる年代の名簿を担当し確認していく。
「日直の空白日と同じ曜日パターンの記録、探そう」
夕子が指示した。
「共通点が見つかるかもしれない」
しばらくの沈黙が続いた。
ページをめくる音だけが資料庫に響いていた。
***見つかった名前***
「あった、かもしれない」
隆が声を上げた。
「見て、これ」
古い学級名簿の一枚に、一人だけ名前の上に赤い線が引かれている生徒がいた。
「これ、何の印だろう」
美優が覗き込む。
「除籍とか転校の印かしら」
夕子が慎重に答えた。
名前の欄には――。
「山本 真依」
という文字が記されていた。
「まい……さん」
隼人が名前を読み上げた。
美優が震える声で続けた。
「ボイスレコーダーで聞こえた『ワタシ』……この人の、声だったのかな」
「まだ、分からない」
夕子が慎重に答えた。
「でも、可能性は、あると思う」
***消された理由***
「この山本さんについて、もっと何か分かることは」
隼人が名簿を見つめながら言った。
「担任のコメント欄、見てみよう」
夕子がページをめくる。
だが、その欄は――。
不自然に空白のままだった。
「何も書かれてない……」
美優が呟く。
「他の生徒の欄には、ちゃんとコメントがあるのに」
秀が周りの名前を指差した。
確かに他の生徒たちには、担任からの短い所見が記されている。
だが山本真依の欄だけが――。
まるで最初から何もなかったかのように空白だった。
***忘れられた存在***
「この子……」
夕子が静かに言った。
「記録からも記憶からも消されているのかもしれない」
「どうして……」
美優が声を震わせる。
「まだ分からない」
夕子が答えた。
「でも、日直の空白と、この名簿の空白……何か繋がってる気がする」
隼人はしばらく、その名前を見つめていた。
「山本真依さん……」
隼人が呟く。
「君は一体、何を伝えたいんだ」
誰もその問いに答えを持っていなかった。
だが確かに――。
この学校のどこかに、忘れられた誰かが、まだいる。
その事実だけは、はっきりと五人の胸に刻まれていった。
***帰り道***
「今度は、この山本さんについて詳しく調べよう」
隼人が言った。
「田島さんにも聞いてみようか」
隆が提案する。
「あの人なら、昔のこと色々知ってそうだし」
「うん」
隼人が頷いた。
「それに――」
夕子が続けた。
「瑞希さんにも一度、相談した方がいいかもしれない」
「そうだな」
隼人が同意した。
「この件は、少し大きくなりそうだ」
隼人が名簿を閉じようとした、その時だった。
パラリ――。
誰も触れていないはずのページが、一枚だけ静かにめくれた。
五人は思わず顔を見合わせる。
「……今、めくれたよな」
秀が小さく呟く。
誰も返事をしない。
ゆっくりと視線を落とすと、そのページには、卒業アルバム用と思われる集合写真が貼られていた。
「こんなページ……さっき見た?」
夕子が眉をひそめる。
「いや……見てない」
隆が首を振る。
最後列の窓際。
一人の少女だけが、真っ直ぐこちらを見つめていた。
周囲の生徒は笑顔なのに、その少女だけは表情がなかった。
写真の下には生徒全員の名前が並んでいる。
しかし、その少女の名前だけが――。
白く塗り潰されたように、跡形もなく消えていた。
「山本真依さん……?」
美優が小さく呟く。
その瞬間だった。
資料室の蛍光灯が、チカッ、と一度だけ明滅した。
全員が反射的に顔を上げる。
再び写真へ目を戻すと――。
「あれ……?」
隼人の声が震えた。
少女の視線が、さっきよりも少しだけこちらを向いたように見えた。
誰も動けなかった。
静まり返った資料室には、古い時計の秒針だけが時を刻んでいる。
カチ……。
カチ……。
五人は名簿を閉じることもできず、その写真を見つめ続けていた。
忘れられた少女は、まだそこにいた。
そして、自分の存在に気づいてくれる誰かを、長い年月待ち続けていたのである。
「そうそう」
花子があっさりと認めた。
「だって、みんなが朝慌てて直そうとする顔見るの、楽しいんだもん」
「花子さん……」
秀が呆れたように呟いた。
「それ、完全にいたずらだよな」
「怒った?」
花子が小首を傾げる。
その、動きに合わせて、髪が、一拍、遅れて、揺れた。
その表情には悪意はまるで感じられなかった。
ただ無邪気ないたずら心だけが伝わってくる、そんな様子だった。
## これからのこと
「花子さんは、どうしてここにいるの」
隼人が静かに尋ねた。
花子は少し考えるように花壇を見渡した。
「この場所……昔から好きなの」
「昔から、って……」
「ずっと昔から」
花子はそれ以上詳しくは語らなかった。
「でも、園芸部のみんなが困ってるんだ」
隼人が続けた。
「いたずら、少し控えてもらえないかな」
花子はしばらく隼人を見つめていた。
やがて、にっと笑う。
「じゃあ、条件があるの」
「条件……?」
「たまに私と遊んでくれるなら、いたずらやめてあげる」
花子は悪戯っぽく笑った。
隼人たちは思わず顔を見合わせた。
「……それなら、いいかもしれないな」
隼人が苦笑した。
こうして新霊体験隊は、また一人、少し変わった隣人と出会うことになった。
夜風に花壇の花々が静かに揺れていた。
その傍らで、花子は満足そうに微笑んでいた。
その夜、五人が部室へ戻ったあとも、花子は花壇に残っていた。
花子は、誰もいない校舎の方を、じっと見つめていた。
「……あの人、また来てる」
小さく呟いた花子の声は、誰にも届かなかった。
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