表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/79

5-11. 裏切者

 暗闇から、俯くカエデに寄り添うルドルフが現れた。

 カエデは巻かれた包帯から所々血が滲み出ているが、特に傷はなさそうだ。

 もちろん、ルドルフも無傷だ。


「よし、任務完了。

 エイルくんも大丈夫そ?」


「まだ震えているが、問題ない。

 しばらく温めていれば、完全に回復そうだ」


 そう言うアインツの横には、何枚もの上着に包まるエイルがいた。

 もう自力で歩けるところまで回復していて、ロバートともちゃんと会話ができている。

 

 ルドルフはほっと息をつくと、ここまで案内してくれたラトーにお礼を言おうとした。

 しかし、彼の姿はどこにもない。

 エイルを見つけたあと、そそくさと姿をくらましてしまったようだ。


「あっ、カエデもポーションの効果切れてんじゃない?

 はいこれ、僕が持ってきた予備」


「……」


 カエデは差し出された試験管を受け取ると、静かに蓋を開けて中身を飲み干した。

 病室で目覚めた頃は威勢があったのに、今の彼女にはまったくない。


「……ここで何があったんだい?」


「……」


 ルドルフの質問に、カエデは答えなかった。

 周りの様子からある程度予想はできている。

 でも無関係な人達を巻き込んでしまった以上、そこははっきりとさせないといけない。

 笑顔を崩さないルドルフの目は、至って真剣だった。


 しばらくすると、エイルが代わりに答えた。


「さっき聞いたんですけど、他のパーティーに襲われたらしいです。

 カエデさんは一時的に耳をやられながらも、かろうじて逃げることができたとか……」


「えっ? 耳?」


 ルドルフが反射的にカエデの方を見ると、彼女は静かに頷いた。

 それが肯定だとわかると、ルドルフはすごく複雑な顔をした。


「あちゃー……これは厄介だね」


 彼は必死に頭を掻きむしると、大きなため息を漏らした。

 アインツはそれを見て話し始めた。


「この後のことについては出てから話そう。

 襲撃犯がまだここにいる可能性は十分ある」


「そうだねぇ……考えるのは団長の仕事だし。

 カエデの耳がいいことを知っている以上、相手は僕達劇団を目の敵にしている筈だし。

 ねぇ、悪いんだけど仲間達を運ぶの手伝ってくれる?」


 アインツは呆れたように溜息を漏らした。

 そして近くにいるロバートに顎で手伝うように指示を出したあと、彼自身も死体に歩み寄る。

 エイルも手伝おうとしたが、ルドルフに服を引っ張られて止められた。

 まだ体が温まりきっていないから無理しなくていいと、そう言われた。




 その時、カエデの足に何かが触れた。

 彼女は仲間の持ち物かと思い、そっと拾い上げた。

 そしてそれを指でなぞって形を確認した途端、カエデの顔色が急激に変化した。


「……カエデさん?」


 不思議に思ったエイルはカエデに声をかけた。

 だが彼女は、拾ったものをずっと触り続け黙り込んでいる。

 遺体を回収しようとしていた三人も、カエデのおかしな様子に気が付いた。


「…………ルドルフ」


「ん? どうし――」


 ルドルフが返事し終わる前に、カエデは突然刀を抜いた。

 そして彼に急接近し、仲間を斬ろうとした。


「え、まっ――!?」


 ルドルフは反射神経で何とか彼女の攻撃を躱した。

 だが完全に避けきれず、彼の頬に小さなかすり傷ができた。

 そしてすぐに、傷口から黒い炎が燃え上がった。


「うっ……!」


 ルドルフは咄嗟に距離を取るも、体のバランスを崩ししゃがみ込んでしまった。

 エイルは何が起きているのか理解できず、彼に駆け寄ろうとした。

 しかし、アインツに止められた。


「……貴様、知っていたのだな?」


「なんの事!? 全然よくわかないんだけど!」


「とぼけるな!!」


 カエデは怒りのままに叫んだ。

 そして肩で息をしながら、彼女は拾ったものを荒々しくルドルフに見せる。


「これは何だ!? 今ここで拾ったぞ!

 何故団長のバッチがこんな場所にある!?」


「――え?」


 カエデが持っているものは、銀色の小さなバッチだった。

 暗くてよくエイルには見えないが、小さな花のようなものが精巧にあしらわれているものみたいだ。



 ルドルフは大慌てで言い返そうとした。


「ストップ! それはにせ――」


「言い訳はするな!!

 団長のバッチは特注品、世界に1つしかない!

 それに偽物などあるものか!!」


 カエデは取り付く島を与えることなく、そのまま言葉をまくし立てる。


「ルドルフ! 貴様は善悪の判断ができないうえ、思考は全て団長に委ねている!

 副団長である癖にな!

 それ故、団長から仲間殺しを頼まれても貴様は疑問を抱かず笑いながら殺せるのだろう!?

 とてもめでたい頭をしているな!?」


「待って!? 少しは僕の話を――」


「黙れぇぇぇぇ!!!」


 カエデはルドルフに向かって突進した。

 ルドルフは渋々武器を手に取り、防御を取る。

 しかしカエデの勢いは凄まじく、彼は後方の壁まで吹き飛ばされた。


「うぐっ――!」


 ルドルフはガラガラと音を立てて落ちる岩と一緒に、地面に落下した。

 そしてしばらく、その場から動けなくなった。


「小生の炎は、引火した相手の体力を糧に燃え続ける……

 さぞ力が出ず、苛立っておるのではないか?」


「……」


 ルドルフはゆっくりと起き上がりながら、口に溜まった血を唾と一緒に吐き捨てた。

 そして、カエデをジロッと見る。


「許せぬ、許せぬ……!

 小生を裏切った上、仲間の命を奪うとは……!

 貴様を殺したあと、団長にこの恨みをぶつけてやる!!」


「……」


 ルドルフは殺気立つカエデに何も言わなかった。

 代わりに何故か、エイル達の方を向く。


「ここまで巻き込んじゃってごめんね?

 君達は今すぐ逃げて。

 カエデはああなると、話が全く通じなくなる。

 だから……武力行使しないと絶対に止まらない。

 君達が取り返しのつかないことにならないで、本当に良かった」


 ルドルフはエイル達に向かって、優しい笑みを向けた。

 それは俳優としての演技ではない、本心のようだ。

 そのせいか、少しぎこちなかった。

 

 そして突然の仲間割れでまだ思考がついていけないエイルとロバートをよそに、アインツを見た。


「悪いんだけど、一瞬だけ本気を出すから2人を守ってくれる?

 できれば死んだ仲間達も一緒にしてくれると嬉しい」


「……ああ」


 ルドルフが3人から距離を置くと、アインツは分厚い氷のドームを形成した。

 それを見てルドルフは苦笑いを浮かべると、大剣を構える。

 そして敵対するカエデをよそに、天井に向かって大きうジャンプした。


「待って! ダメ!」


 エイルが叫ぶ中、ルドルフは自身のスキル名を口にする。


「――愉快な一撃アミューズ・インパクト!!!」


 彼の攻撃がぶつかると同時に、天井に大きな蜘蛛の巣上のひびが入った。

 そして、すぐに崩落を始めた。


<<???の一言メモ>>

ひひっ……ははは……

そうだ、殺し合え……無駄ないがみ合いを続けろ……

そして自滅すればいい……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ