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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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027話 逃避行! 前からも後ろからも

「それじゃ跳ね橋を降ろしてくれる?」

「わ、分かった! 言う事を聞くから水を止めてくれ!」


 城門を守っていた見張りの人を、指先から出る空気の噴射で部屋に押し込んで、その中に大量の水を作って注ぎ込んだ。

 あちこちから水が溢れ出してるのが見えるけど、私が作り出す量の方がずっと多くて部屋の中では足が着いているのかどうかも分からない。

 少なくても、中から声をかけてる人はこんな死に方は嫌だ! って叫ぶくらいになってるみたい。


 扉を開けて水を抜いたら、怯える見張りの人に跳ね橋を操作してもらう。

 私たちの目の前で、行く道を塞いでた板がゆっくり倒れて――。


「ミュリエル! やったわよ!」

「うん、行こうレティシア!」


 跳ね橋を渡って砦の外に駆け出しながら、お父様との繋がりを意識する。

 建物の中から出た時と同じ場所……? 私に気がついてないのかな。   

 それとも……昨日伯爵が言ってた、交渉する相手っていうのがお父様?

 今その交渉中なのかも、私たちを人質にして。


「しっかしさっきの作戦も中々の怖さだったわね、空精系の素質があるのに空を歩いたりはできないんだ?」

「う……他に思いつかなかったんだもの。それに、空を歩く魔法は、子供には教えない事になってるの。台地の上から空を歩こうとしたら、危ないからって」


 魔法の維持に集中が必要なのもあるけど、空を歩いてる最中に維持する体力が無くなる可能性もあるから。

 私なら自分の魔力があるからそんな心配はないけど、特別扱いは出来ないって言われてる。

 雷の球とか氷の剣を作る様な、直接的な攻撃魔法も同じ。


「でも帰ったら真面目にお願いしてみる。今日みたいに一緒にいる友達を守れなくなるもんね」

「友達……私の……ねぇ、いつか王都に――王宮に住んだりしない? そしたらずっと2人で遊ぶの!」


 レティシアがそれを想像してるのか、目を輝かせて楽しそうに提案する。

 ……でも。 


「お父様は村でずっと働くと思う。私はそのお手伝いがしたいの……ごめんなさい」

「むう……あいつ言う事聞かないもんね……たまに会うくらいは良いのよね?」

「うん、今度からお父様が王都に行く時にお願いしてみる!」


 森の中にある一本道を走りながら、2人で顔を見合わせて笑い合う。

 このまま真っ直ぐ行けば、きっとお父様のところに――!


「ミュリエル! 後ろ! 追ってきてる! しかも馬⁉」

「ちょっと待ってて、嵐で追い散らしてみる」


 村の襲撃の時に使った、私の使える魔法で一番強力なもの。 

 魔法の発動から最強の竜巻になるまでは時間がかかるから、少し距離が開いてる間に準備しないと――!


「おぉ……? 強……うわわっ⁉ ス、スカート……どころじゃない! 痛っ痛だだだ⁉ ちょっと待ってミュリエル‼」

「レティシア離れて! 木が倒れそう!」


 何もない台地の上でしか使った事の無い、嵐の魔法。

 それを森の中で使った結果は……酷いものだった。


 最初の内は、派手にバタバタとめくれるスカートを気にしてたレティシア。

 だけど、その内に葉っぱや木の枝なんかが、凄い勢いで飛び回り始めて――ついには周りの木が、ミシミシと音を立てて折れそうになっていた。


 体にぶつかってくる葉っぱや枝はともかく、この木は……⁉

 嵐の魔法じゃ木が倒れる方向なんて、コントロールできない!


「この魔法ダメよミュリエル⁉ もっと他のないの⁉」

「そんなにたくさんの魔法、まだ覚えられないよ!」

「もう、そこまで来てる!」

 

 レティシアが私の後ろに隠れる。

 見張りの人に使った空気の噴射で、時間をかせぐことは出来るかな?

 砦の中で使ってた靴下は、重いから置いてきちゃったけど、あった方が良かったかも……。

 迫ってくる馬に乗った追手は10人はいる、もう少し近づいてきたら水を作って浴びせて――。


「レティシア様! お戻り下さ――ぐわっ⁉」

「い、1回で成功した⁉」

「う、馬を! 抑えろ!」

 

 目の前まで追手が来た瞬間、レティシアが私の後ろから飛び出して、突き出した両手から強烈な閃光を放った。

 突然の目潰しに暴れ回る馬を御そうと必死な人達に背を向けて、2人でもう一度走り出す。


「すごいねレティシア、もっと時間がかかるかと思ってた!」

「私も驚い……まあね! これが実力ってもんよ!」

 

 レティシアが持ってる魔法の素質は、ジローと同じ光や闇を操る系統。

 その中でも特に使い勝手が良いってジローが言ってた、閃光が――2回やれば1回は成功するはずっていうのを、ベッドの中で聞いてた。

 発動の集中にも時間がかかるっていう話だったけど、今はちゃんとできてる。

 一生懸命練習する約束をしたっていうのは、本当みたい。


「レティシア! 前からも!」

「うぇぇっ⁉ あれって伯爵の護衛よね? 挟み撃ちになっちゃうじゃない!」


 レティシアの手を引いて、道を外れて森の中に飛び込んでいく。

 初めて見る森に飛び込むなんて、危険すぎるけど……!


「とりあえず馬は追ってこれなさそう⁉」

「そ、そこ隠れられないかな⁉」


 お父様のいる場所までは、まだしばらく距離がある。

 2人でパニックになりそうだけど、追いにくそうな場所を選んで走っ――!


「誰っむぐ――⁉」

「ミュリ――ふぎゃ⁉」


 急に現れた男の人の太い腕に、私とレティシアは抱えられて、その口を塞がれた。

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