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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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026話 すにーきんぐみっしょん! 

「こ、殺したの……?」

「まだ生きてる……みたい」


 アゴの辺りをめがけてすくい上げるように振り抜いた一撃は、見張りの人の頭を弾き飛ばして後頭部を石壁に激突させた。

 そのまま崩れ落ちるのを支えて、レティシアと2人でゆっくり階段に下ろす。


 前に村が襲われた時に武器が足りなかったから、自警団の人達が考えた間に合わせの武器。

 訓練を見学した時、友達のパトリスに頼んでちょっとだけ練習をさせてもらった物だけど――。

 魔法で吹き飛ばすのと違って、石や土を詰めた靴下で人を殴った感触は直接暴力を振るった実感があって気持ち悪かった。


「じゃ、じゃあ……あっちの見えやすい場所に置いときましょ。誰かが見つけて助けるだろうし――」

「ダメだよレティシア、私たちが逃げたのがバレやすくなっちゃう。この人はこのまま置いていくの。私たちが助からないと、きっとお父様たちが危険だもの」

「そ、そうかもしれないけど……」


 階段を登りきって外の様子をうかがう間も、レティシアはチラチラと見張りの人を振り返ってる。

 本当は私も気になるけど、命がかかってる時は手段を選ぶなってお父様が何度も強く言ってた。

 今がその時だと思う。

 それに私がやらなきゃ、きっと優しいレティシアには出来ないから。

 私を守ってくれたレティシアを、今度は私が守らなきゃ!


「行くよレティシア。外へ出る道順は覚えてる?」

「……あんた寝てたもんね。でも正面の入り口はさすがに誰かいるんじゃない?」


 ……そうかも?

 でも他に外に出られそうなのは窓くらいだし、それは高い場所にしかない上に鉄格子がはまってた。

 難しくても、そこから行くしか――?


「あ、待って。お風呂の水をどうするのかって聞いた時……」

「あー! 台所に持ってって捨てるってメイドが言ってたわね! たしか狭い出入り口があるって!」

「こ、声が大きいよレティシア⁉」


 お風呂を片付けに来たメイドさんに、レティシアが好奇心で話しかけた時。

 「窓から捨てれば楽じゃないの? ジャバー! って」というレティシアにメイドさんが呆れたように言ったんだった。

 そこならきっと見張りは少ない。


「外に出られるって事は1階で、外側の部屋だよね」

「食堂の近く、でも奥の方ね。使うのは使用人だけだから表の方には無いのよ」

「なんでそんな事知ってるの?」

「こっそりおやつを手に入れるには、必要な知識だったのよ」


 レティシアらしい理由だけど、王女様らしくはないかなあ……。


 人目を避けて、身を屈めながら台所を目指す。

 思ったとおり、伯爵が外に出るのに護衛で人を連れて行ったみたい。

 砦の中は人が少ないのがすぐに分かるくらい、人の気配がしない。

 食堂に続いていた通路をそのまま真っ直ぐ進んだ先の部屋、扉も無いその入り口を2人で覗き込む。


「台所はここ……みたいだけど、メイドさんがいるね」

「外への扉はアレかな? 隠れて出るのは無理そうだけど……出来るだけ殺しちゃダメよ、ミュリエル」

「し、しないよ⁉ 包丁とかを向けて大人しくしててって言えば良いんじゃないかな」

「ん~……私たちがやっても迫力ってもんがないわね。それならいっそ……」

「レ、レティシア⁉」


 そのまま台所に入って行っちゃった⁉

 仕方なく私もその後ろからついて行く。

 いざという時の為に、持った靴下を振れるように手に巻いて握り直しながら。


「ねえちょっとあんた! 外に出る扉ってのはソレでいいの⁉」

「は? は⁉ なんで⁉ い、いえ、どうしてこの様な場所に⁉」

「良いから答えなさい、さもないと後ろの怖い子が何するか分からないわよ」

「ひどいよレティシア⁉」


 叫ぼうとしたら、殴らなきゃいけないかなって思ってたけど!

 メイドさんはどうして良いのか分からないみたいに、キョロキョロしてる。

 ひょっとしたら、悪い事の内容をあんまり教えられてない人なのかも。

 伯爵が言ってた、私たちの安全の為に閉じ込めてるって話だけを聞かされてる……とか?


「いい? 私の事をどう聞いてるか知らないけど、伯爵がペコペコ頭を下げるくらいには偉いのよ。その私の邪魔をする庶民なんて家族皆どうなっても――」

「お、お許しください! 母と妹だけは……私はどうなってもかまいませんから!」

「レティシア、すっごく悪い貴族のお嬢様みたいだよ?」

「し、仕方ないでしょ⁉ それでどうなの? そこから外に出られるのよね?」


 レティシアの質問に、床に膝をついたメイドさんが必死で頭を上下に振る。

 それだけ聞ければ十分。

 扉を開けると、聞いてたとおりに狭くて細い通路の先に外の光――!


「あ、そうだ。あんたの名前は?」

「マルゴと申します……どうか……」

「マルゴね、覚えとくわ。怒られそうになった時は、あんたに何かしたらこのレティシアが絶対に許さないって伝えときなさい」

「あ、ありがとうございます!」


 床に頭がぶつかるんじゃないかってくらい、下げたまま返事をするマルゴさん。

 それを横目に、私は先に通路を確認して、外に向かう。


「建物の外には出れたけど、最後は城門があるわよ? 跳ね橋まであって……」

「大丈夫だよ、レティシア。もう人に見つかっても平気」

「へ?」


 建物から数歩外に出ただけで感じた。

 ここからは、魔力が使える!

ブクマ、評価、感想、誤字訂正等いつもありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 今私はどうなっても構わないって言ったよね…
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