014話 またマダーニが!
招かれざる客との対面を終え、師匠との一時を過ごそうと思った俺だったが。
「……しばらく1人にしてちょうだい」
ベッドで丸まってしまった師匠を見ては諦めざるを得なかった。
一応「師匠好みの美少年が添い寝しても良いですよ?」とは言ってみたんだが。
「……あなた中身が全然違うんだもの」と言われてしまっては引き下がるほか無い。
師匠はどうやら精神ダメージが大きすぎたらしい、しばらく1人にするしかなさそうだ。
なら今はこの一件が村にどんな影響を与えていたか、確認しておこう。
そう考えて村中を歩き回っている訳だが――。
「さすがに噂話が回るのは早いが、あの男と村長の口が固いのが幸いしたな」
村の中で一仕事終えたいい汗を拭い、感想を漏らす。
グレアムという名の厄介者は個人的な要件だと部下を連れて来なかったらしいが、村人にも師匠との関係や目的は話していなかったようだ。
ただ村長にだけは手土産を持って挨拶に行き、事情を説明していた。
おのれ常識人ぶりやがって。
だが村長もあの男と師匠の関係については、他に漏らして無いそうだ。
まったく、婚約者なんて出てこられちゃたまったものじゃない。
俺が新規移住者の対応を一任されている立場を利用して、新しい村人に師匠との関係を広めておいたのが無駄になる所だったじゃないか。
既に村では俺と師匠の関係は動かしようのない事実という事になってるんだぞ。
「こんな所にいたのかユーマ。また何か悪どい事を考えている顔をしているぞ?」
「それはいけないな、上っ面だけでも師匠好みを取り繕わないと」
俺を見かけて走ってきたジローの言葉で自分の顔をムニムニとマッサージする。
自分としては不満だが、師匠との距離を詰めるには武器になる童顔なのだ。
「で、わざわざ探しに来たみたいだけど、何があった?」
「ソフィアさんの所に客が来た後に、マダーニの住人が押しかけてな……」
大体要件は分かった。
でもジローがこんな使いっぱしりする事は無いだろうに。
いわゆる社会的な地位でなら、正騎士であるジローは村で一番高いんだぞ?
「ジローが権力を笠に着て追い散らせば終わると思うけどな?」
「そういう事を言わないでくれ。それに一時しのぎにしかならないだろう」
権威を持ってるなら使っても良いと思うが、一時しのぎというのは確かにな。
この村がある台地の上に元々存在したマダーニとは、以前から色々とあった。
向こうが持っていた採石場の権利もそうだが、自分達が立ち退いた後に場所を占有して発展されると腹が立つ、という多分に感情的な問題なので始末に悪い。
こちらとしては国内有数の街であり、近隣でもあるマダーニと揉めたくはない。
なので色々と交流を図って、向こうの支配層とはそれなりに関係を改善できた。
領主の諮問機関に席を有する、有力な商会や防衛を担当する軍人、神殿関係者などはこちらと揉めるより付き合った方がメリットがあると理解している。
でもその他、特に一般の街の人間は自分達より下にいたはずだった村が順調に生活を改善し、発展しているのを認めたくないのだ。
採石場の一件では国に求めて仲裁の裁判を行ってもらったが、マダーニ側はそこで負けた形になっているのも一因だろう。
「そろそろ口先で誤魔化すのも限界かもしれないな」
「あぁ、双方が多数で睨み合って今にも殴り合いを始めかねない」
それなりに大事だ。
殴り合いとはいえ、周辺の街と武力衝突をしたと噂になれば村にとって大きなマイナスになる。
今の村に来てる追い風は良い噂による所が大きいからな。
「殴り合いはとりあえずは止めとこうか、ここは俺とジロー式で解決しよう」
「私と君の? ……なるほど」
気持ちの問題ならスッキリさせればいい。
一回失敗してるし、反省を踏まえて上手くやってみせようじゃないか。
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