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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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013話 師匠とその趣味は俺が守る!

「師匠の好みについては知ってたが――」

「知っていたの⁉ 村では誰にも話した事なんてないのに⁉」


 師匠も時々抜けてるとこが可愛いですよ!

 師匠の横槍が入ったので、改めてグレアムと向かい合って言い直す。


「師匠の好みくらい村の人間なら誰でも知ってるが、俺は師匠よりひとつ年上だ」

「誰でも⁉」


 なんかショックを受けてる師匠。

 時々村の子供達や奥様方を集めて読み聞かせをしている師匠だが、物語を読む時に美形の王子様とか青年騎士や頼りになるおじ様と違って、少年主人公なんかは明らかに熱が入ってるからな。

 特に好みだろうと思われるのが健気に頑張る12歳くらいまでの少年、という見解を俺達村人は話し合いで出している。


「落ち着けソフィア、隠し事という物はいつまでも出来るものではない。君が逃げ出す前に処分したらしい少年役者の絵姿や愛好家の本なども、君を探す者達によって回収、復元されて資料として展示されているそうだ」

「――――⁉ っ‼」


 師匠がふわふわの金髪ロングヘアを抱え、声にならない悲鳴をあげながら珍妙なポーズで固まっている。

 もうちょっとセクシーなポーズなら嬉しかったが、目の前の敵に見せてやる物でもないので我慢しよう。

 

「師匠ははっきりと拒絶の意思を示してる、それ以前にあなたが師匠の将来に関わる事を決める権利があるのか?」

「ソフィアは早くに両親を亡くしている。俺との婚約はその前からの物だった縁で保護者に近い関係だった事がある。恩を着せるつもりはないし、彼女の独立が早かったのでごく短い時期だがな」


 道理は向こうにある気がしないでもないな。

 でも認めてしまえば、この男との結婚は別にしても師匠は村から去る事になるだろう。

 元々いた場所に謝罪して回って、そこに帰るって話だからな。


「親の決めた事とはいえ、婚約は成立している。それは契約だ、ソフィアと雇用主との間にも契約はあった。話し合いも無く一方的に破棄して良いものではない」


 正論だが、師匠には師匠の事情があるだろう。

 初めて会った頃の師匠は追い詰められていたが、それでも村にいたという事は元々いた場所よりも村の方がマシだったって事だ。


「逃げ出したという事は辛い目にあっていたはずだ、なぜその時に誰も手を差し伸べなかった? あなたも、雇用主もだ。そこまで追い詰めた責任の一端はあなた達にもあるだろう」

「それは認めよう。だからこそ戻って話し合い、やり直すべきだと言っている」


 まともな話し合いで勝てる気はしないが、俺の主張は簡単だ。

 ソフィア師匠が嫌だと言っている。

 なら守らなくてどうする、責任感の強い師匠を逃げ出すまで追い詰めた連中とは違う!


「この村は元々『追放者の村』と呼ばれていた、過去との関わりを断った者達の村だ。俺には村人であるソフィア師匠を過去から守る義務がある。弟子として、友人として、求婚者として、それが俺と師匠、そして村の契約だ」


 グレアムに指を突きつけ、俺の言いたい事を一言で分かる様に言ってやる。


「過去なんか知った事か」


 明文化なんて立派な事はされてないが、村の暗黙の了解でもある。

 古参の村人が追放された理由には個人によって様々あるが、助け合って生きてきた結束は固い。


「もし強引に連れて行くというのなら、村人全てを敵に回す覚悟をした方が良い。師匠は村に必要な人間だし、敬愛されている」

「……事を荒立ててまでとは言わん」

 

 事を荒立てる……途中で思い出したが、グレアムの鞘にあった狼の紋章。

 あれは国境を越えた時に、山道を塞いでいた傭兵団が掲げた旗と同じ物だ。

 この装い、団旗と同じ紋章を身につけるというのは、グレアムが団長と考えてもそう間違ってはいないだろう。


 団長がここまで見た目を整える、整えられる傭兵団――手強そうだな。

 さすがに国の耳目が集まっている最中の村に攻撃をかける、なんて無茶はしないだろうが。


 本人の言う通り、あくまで話し合いに来たんだろう。

 俺の様子を見て説得を諦めたのか、グレアムが席を立った。


「また連絡を取る。彼女にこれを、俺に連絡が届く手筈を書いてある。それとせめて謝罪の手紙は書くようにと伝えてくれ」

「分かった、確かに伝える……部下を連れてきたりはしているのか?」


 折りたたまれた羊皮紙を受け取りながら、気になっていた質問をする。

 村の近くに傭兵団がいるのに、俺に報告が無いなんてのはちょっと問題だ。

 村人の心情や治安も心配だが、国境を越えようとした時の俺達の様に、街道の交通が遮断されている可能性もある。


「個人的な要件に部下を関わらせる趣味はない。それにフランツなら気がついて報告くらいはしているだろう」

「団長を知ってるのか?」


 フランツというのは、村と契約を結んでいる傭兵団の団長だ。

 同業者だし、知っていてもおかしくはないんだろうが。


「職業柄敵に回したく無い相手くらいは覚える、良い団を雇ったものだな」

「紹介者が良かったんでね」


 再契約が出来たのは幸運というしかない。

 国が手放してくれて本当に良かった。

 

 グレアムが家から出る背中を見送った後、扉が閉まった直後に大きく息を吐く。

 怖いわ! あからさまに格上じゃないか!

 野盗軍の頭とまでは言わないが、上背も分厚さも威圧感でいっぱいだ。


 でも! 今の俺には心を癒やすアテがある。

 頭を抱えてしゃがみ込んでいる師匠の肩をポンと叩くと、体全体が怯えるように震える。

 かわいそうに、慰めの言葉は何がいいかな。


「……気にする事ないですよ師匠。ロミオとアルフレドの友情、俺も好きですし」

「ふぐぅっ⁉」


 振り返った師匠の目は涙でいっぱいだった

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俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
― 新着の感想 ―
[一言] 復元して展示するなんて…なんという外道
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