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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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015話 村VSマダーニの街

「ゴーチェ! 見せてやれ!」

「ここで上げれば先取だぞ!」

「落とせぇぇぇぇっ‼」


 大混乱の歓声が響くのは、マダーニの街にある最も大きい広場だ。


 設けられたステージ上では村の代表として薪割りのゴーチェが上がり、水を入れた大きな青銅の壺を胸の高さまで持ち上げている。

 上半身裸の肌は真っ赤に染まり、限界まで膨らんだ筋肉が震え、壺の水を揺らす。

 マダーニ側の代表は同じ重さで壺を落としてしまったので、これを上げればこの競技は村の勝ちなのだが――。


「ぬぅぅああぁぁぁぁっ‼」

「いったぞぉぉぉっ!」


 ドッ! と歓声と悲鳴にも似たため息が一斉に上がる。

 怒声に鳴り物、周囲の売り子の声や賭けをしていた連中の声まで入り混じり、広場の喧騒が街中にまで響き渡った。


 マダーニの街では現在、ウチの村の代表に加えて100人を超える村人がイベントに押しかけている。

 しばらくの間、周囲の町でも告知を行った成果か、ウチ以外でも街の外から来ている観客は千を超えている様子だ。


 イベントの内容は単純だ。

 無秩序な争いを続けるよりはルールを設けてキッチリやろうぜ! というだけ。

 頭に血が登っていたマダーニから押しかけた連中だったが、それだけに――。


「万を超える人間を抱えてるクセに、500人の村の代表が怖いのか?」

 

 という安っぽい挑発には乗らざるを得なかったようだ。

 

 こちらから持ちかけたイベントだが、マダーニ側の支配層には承諾を得るのはそう難しくはなかった。

 街の人間が財布の紐を緩めると商会の人間は好意的だったし、イベント中に盛り上がりすぎての治安悪化を不安視した軍幹部や他の有力者も、村と正面衝突するよりはマシと判断したらしい。


「でもギーが弓術勝負で負けたのは意外だったな」

「……これだけの数に注目されると集中できない。それに相手の腕が良かった」

「確かにな、審判やってたジローも驚いてたし」


 騎士のジローは村の代表にはなれないので、審判の1人として参加中だ。

 参加できるなら馬術競技を任せたかったんだけど、仕方がない。


 全5種の競技で現在の所、ウチの村は俺が出た馬術とゴーチェの力比べを。

 マダーニは弓術と走力を勝ち取って2対2で引き分けている。


 ジローが馬術に出てくれれば俺が走力で勝ってたんだけどなあ……。

 ちなみにタロでも勝てただろうが、不公平感を与えるので却下しておいた。

 あいつの四足は人間が勝てるレベルじゃない。

 

 村で代表者を決めた時にはそれを伝えられてションボリしてたタロだが、今はミュリエルやミアと共に屋台でご機嫌なご様子だ。

 馬術競技では俺もミュリエルにカッコいいとこを見せられたし、言う事はない。

 後は――。


「では本日ラストにしてメインイベントの代表者! 入場だぁーっ‼」


 向こうの商会が雇ったらしい司会の声に怒涛の歓声が木霊する。

 この手の集落同士の揉め事の解決法といえば、昔から相場は決まっている。

 マダーニの人間が押しかけてきた時に起こりそうになっていた、集団での殴り合いだ。

 それを止めたのは、ロクな観客も無しにやるなんてもったいないから。


 マダーニ側の代表者5人がステージに姿を現し、こちらも自警団最古参のガエル、ジル、ゴーチェ、ギーが次々に登壇していく。

 1人姿を現すごとに歓声が上がっていくが、その最後。


「最後の1人は追放者の村代表! 勇者ユーマ・ショートだっ‼」


 この日一番の歓声に応えて拳を突き上げ、ステージに上る。

 やっぱり争いの決着には暴力が一番だ。

 分かりやすく、観客を納得させる事ができる。


 そして名前を売っている以上、俺が殴られなきゃマダーニの住人は絶対に納得しないだろう。

 相手の顔を凹ませてこその勝負なのだ……だから噂とか嫌なんだよ⁉


 勇者というのは不思議な能力こそが本命の力、というのは様々に語られる物語で知らないものはいない。

 それを使わず単純に殴り合う、というルールなので負けても噂にはさほど傷が付くことはない。

 ――が、やる以上は負けたくなんてない!


「師匠! 励ましのお言葉をお願いします! 勝ったらデートしましょう!」


 壇上から声をかけられた、村と街の重要人物用の特別席に座る師匠が、注目を浴びて目を白黒させている。

 髭の爺さん連中の中に美人の師匠だ、当然最初っから男どもの目は師匠に向いていた。

 師匠が目立つのを嫌がってるのは知ってるが、ちょっと無理を言って来てもらったのだ、このために。


「……勝ちなさい!」


 ステージ下に向けて両手を上げ、既に勝ったようなポーズを取る俺に、登場時を遥かに凌ぐ凄まじい罵声が轟く。

 ウチの村の連中までがブーイングしてやがる――ジルお前もか⁉

 

 だが。

 ふはは、あの美人はお前たちのものにはならないのだ!

 もはや目的は達した! 後は勝つのみ!


 感情の問題なのだ、自分達も参加して大騒ぎして決着をつければいい。

 そこでの勝敗はさほど問題ではない。

 もちろん冷静な話し合いもした上での事ではあるが。


 マダーニの商会からは次回以降の打診もあった。

 次の開催を予定していれば結果に不満な連中も直接相手に殴り込むよりは、次の祭りでのリベンジに燃えるだろう。


 なので――俺の勝敗は関係ないのだ。

 盛り上げ役としては非常に頑張って、大成功させたと言っておく。

 こうして俺達の春は、騒々しく過ぎていった。

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俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
― 新着の感想 ―
[一言] 次はデート会ですか。がんばえ〜
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