まあ、急に死んでしまったら仕方ないですわね。
「そうですね。⋯⋯わたしなんて、悪霊となって病院に取り憑いてしまっていて、多大なご迷惑を⋯⋯」
「ははは!仲川さんが悪いわけではありませんから。不慮の事故で亡くなった方には多い事例でして。特に、あなたのように未来に向けて目標を持って明るく人生を歩んでおられた時に起きた突発的な出来事でしたからね。無理はありません」
「そうよ!悪いのは事故を起こしたドライバーなんだから!ささっ、あなたもコーヒーお飲みなさい!やけに美味しいわよ、これ!」
「⋯⋯はい」
本来ならば所属先のお局様。僅かな研修期間にも大変お世話になった人。雑な励まし、ごまかし方とはいえ、少しは救われた気持ちにはなった仲川。ひと口啜ったコーヒー。その美味しさに飛び上がりそうな思いになった。
「な、なんですか!このコーヒー!!」
「お口に合いましたかね」
得意げにそう訊ねる霊人。随分と見てきた様子だ。
「すごく美味しいです!!思わず、魂が抜けそうになりましたよ!!」
「あなたはもう、魂しかない状態なんですよ」
「あっ、そうでした!抜けようがありませんね!」
「「アッハッハッハッハッハ!!」」
4人はそんなノリ話でひとしきり大笑いした。
「そういえばここって」
思い切りどうでもいいこと笑ったおかげか。仲川の気分がだいぶ晴れたようだ。少しずつ余裕が出てきた彼女はなんとなく周りを見渡した。
幽霊屋と名乗るまだ若い男に手を繋がれて、いつの間にかやって来たこの場所。随分と開けた空間。勤めるはずだった、町1番の病院の待ち合いロビーくらい広い。
彼女が座っているのはL字のカウンター。そこに、やや足の長い椅子が並べられている。カウンターの中には、まるでレストランのように、シェフが何人も並んで調理が行えるような大型のコンロや流し台。壁際のグラスや食器の類がぎっしり詰め込まれている棚。少し離れたところには銀色に光る業務用の冷蔵庫。大きなオーブンや、今は蓋が閉じられているが銅板もある。
そんなところからコーヒーやコーラなんてものが出てくれば喫茶店と認知してしまうが、ちょっと違う。そういった場所には少し不釣り合いな液晶モニターが何枚も天井に固定される形で設置されている。さらにそれが眺められる位置に、順序よくいくつもの列をなした長椅子。その後ろには長テーブルもある。
なにより窓から見える外には⋯⋯。
「あの、幽霊さん、ここって⋯⋯」
「ああ、見ての通り、自動車教習所になる筈の場所だったところだよ」
「やっぱり。外のアレとか。そうですよね」




