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18 禁忌の魔法の効果

気が遠くなりそうな中で私はゆっくりと口を開いた。


「アウリス様」


 掻き消えるような声しか出なかったが、アウリス様は私を力強く抱き寄せてくれる。


「あまり声を出すな」


 そう言いつつアウリス様は掻き消えるような小さな私の声を聞き取ろうと顔を寄せてくる気配を感じる。

 アウリス様の体温を間近に感じながら私は声を振り絞った。


「私、アウリス様が好き。身分とか考えて言えなかったけれど……」


 息も絶え絶えにいうとアウリス様は私をぎゅっと力強く抱きしめた。


「知っている。とっくに気づいていた」


 そうか、感情を共有しているのだからアウリス様は私の気持ちがわかっていたのか。

 アウリス様の穏やかな声色に安心して力が抜けていく。

 体が冷たくなっていくのが自分でもわかる。

 ゆっくりと呼吸をしている私をアウリス様は抱きしめて顔を擦り寄せてくる。

 アウリス様の温かい体温が伝わってくる。

 ほっと息を吐くとアウリス様の悲痛な声が聞こえてくる。


「死ぬな、生きてくれ。俺と共に生きてくれ」


 私だって死にたくない。

 もし許されるならアウリス様のあのお屋敷で茶色い犬と共に生活ができたらどれだけ幸せだろう。

 傷口の痛みともう2度とアウリス様と過ごすことができないという悲しみで涙が頬を伝った。

 私の涙をアウリス様の指が拭う。


「ミユール。愛している。俺と一緒に人生を共にしてくれ、生きてくれ」


 悲痛に呟くアウリス様に都合のいい幻聴かと私はうっすらと目を開いた。

 アウリス様の大きな手で覆われていた手はどこかにいってしまい。彼の顔がよく見える。

 あの無表情なアウリス様が悲痛な顔で私を見つめている。

 今にも泣き出しそうだ。

 私を生かすために言ってくれてるの?

 それとも本当に思ってくれている?


 そう聞こうとするが声が出ない。

 口が動かない。

 浅く呼吸をする私をアウリス様はきつく抱き寄せた。


「ミユール。頼む生きてくれ、俺を置いていかないでくれ」


 悲痛な声でアウリス様が呟くとバチっと私の右手首に痛みが走った。


「ミユールの手首が光っているわ」


 マリア姫が啜り泣きながら小さく叫ぶ声が聞こえる。

 ぼやけてくる視界でアウリス様がゆっくりと私の右手を掴んだのが見えた。

 アウリス様と事故で契約魔法が結ばれた証のような印が光っている。


「アウリス、その紋章に力を流し込むかすれば助かるじゃないか?」


 焦ったように言ったのはフランシス様だ。

 アウリス様は少し考えて頷いた。


「契約魔法を少し改造して流し込む」


 早く口にいうアウリス様にフランシス様を含む他の魔法騎士が聞き返す。


「それってどういうことだ?」


「ミユールと感情が共有できているのなら、傷だって移すことができるはずだ。俺が倒れたらミユールを頼む」


「えっ?」


 魔法騎士の人たちが驚く声が聞こえたと同時に私の右手首の印にアウリス様は私の血がで濡れている手で包み込まれた。

 白く光っていた右手首の印は青白い色に変わりピリリとした痛みが走った。

 アウリス様と私の周りの空気が重くなる。

 私の右手の紋章を何度かなぞった後、アウルス様はそっと口付けた。

 温かいアウルス様の体温と何かが流れ込んでくるのがわかる。

 空気がますます重くなり、ガタガタとテーブルが振動している音が聞こえる。


「すごい力だ」


 フランシス様が呟いた。

 苦しかった呼吸と体がゆっくりと楽になる。

 荒く息をする私に、アウリス様が力を失ったように倒れ込んできた。


 重かった空気も元に戻り、私たちを見守っていた魔法騎士の人たちが近づいてくる。


「アウリス、大丈夫か?ミユール嬢、生きているか?怪我の具合は?」


 素早く私たちの状況を確認をしてフランシス様は叫んだ。


「医者はまだか!アウリスも負傷している」


 驚いて視線を向けるとフランシス様に支えられているアウリス様のお腹から血が滲んでいるのが見えた。

 私は自らのお腹を触る。

 まだ血は出ているが傷が塞がっているようだ。

 それでも痛みは少しばかり残っている。


「ミユール!顔色が良くなったわ。助かったのよ」


 倒れたままの私にマリア姫とソフィーが両側から支えて起こしてくれる。

 2人は泣きながら私の傷を確認して顔を見合わせた。


「傷が軽くなっているわ」


 ソフィーが叫ぶとマリア姫は頷いた。


「禁断の魔法がまさかミユールを生かすことになるなんて。アウリスに移したのよ」


「アウリス様は大丈夫ですか?」


 アウリス様が死んでしまうのではないかと心配になる。

 まだ力が入らない弱々しい私にフランシス様が励ますように頷いた。


「大丈夫だ。ミユール嬢の傷を全部分けたわけではないようだ」


「そうですか、良かった……」


 アウリス様も私も無事なら良かった。

 ほっとして私は目を閉じた。


 

 

 


  

 

 

 

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