時間稼ぎ
ナオヤとアリサは竜巻を見た途端息を合わせたように竜巻に向かって走って行ってしまった、冷静に考えて竜巻が市街地でいきなり現れるわけない、間違いなく能力者のものだ、しかし街中でいきなりブッ放すあたりこの間の爆発野郎と同じ迷惑野郎だろうか、あるいは何も考えてないか、どちらにしろ一般人に当たったらひとたまりもない、早く助けに行かなくては。
しかし、相手がもしこの町に自分と同じ能力者がいることを理解して、理解したうえでわざと目立つ能力を使い、能力者をおびき寄せているとしたら。
竜巻の方へ向かうと一人の男が横の路地裏にいたアリサは能力者かどうかの確認によく使う手段、自分の能力のペンライトをブン!とぶん投げた、寸止めはするが普通の能力者は反射で避けるモーションを取る、しかしこの男は避けなかった。
そのかわり自分の指先から出した竜巻で絡めとってどこかへ放り出してしまった
「能力者であることを隠すつもりはないから、僕の名前はタツヤ、そして君たちに質もブヘェ!」
阿呆みたいな声を出したのはナオヤが真っ先に突っ込んでいって顔を引っ掻いたからだ、ナオヤの間合いは大きいので割と離れていても届く
「オイイイイイイ!!人の話はなああああ!!」
「うっせえ死ね!!」
その爪と牙は殺意むき出しで相手の血肉を貪ろうと突っかかっていく、しかし相手も能力者、風をうまく操って防御する
「ナオヤ、私も!うおおおおおおおおおおお!!」
そういってアリサはペンライトを発射させる、しかしその量はおそらく50、この前に言っていた最大出力を出していると思われる。
アリサのペンライトは自身のテンションに左右される、この時のアリサは以前のことを思い出して最高に腹が立っていた、なのでほぼ最大火力を出せていた、しかし
「どうしても聞いてくれないんだなアアアアアア!」
こちらも話を聞いてくれない相手にイライラして自分の周りに竜巻を形成する、竜巻はだんだん大きくなっていき、その竜巻に乗って上昇してゆく
「待ちやがれ!」
ナオヤはそれを追っかけていくが、アリサは遠隔操作の能力のため、その場を動かなかった、その隙を一瞬突かれ、
ヒュンヒュンヒュン!と飛んできたもう一人の仲間に気づかなかった
「アリサ!危ない!」
飛んできた男を自分の体でタックルして弾き飛ばす
「クロハ先輩、ありがとうございます」
そういわれた直後
スッパーンと僕の体がバラバラにされてしまった
「きゃあああああああああああ!!」
アリサが発狂したのは同じように切り裂かれたミチルを思い出してだったことは僕は知らない
「俺は大丈夫だ、落ち着け」
「え?ええ?何で?」
僕は最近、能力を使って自分の血を一滴もこぼさない技術を考えた、その方法は
ギブミーメタファーをいったん消す
↓
もう一回出して無菌のギブミーメタファーを出す
↓
出た血を回収する
↓
血を注入する
これで出血した分貧血になっていた今までとは違ってどんなに出血しても元通りになる、もちろん多少無茶をするから結構痛いが
「お前が最近噂の不死身男か、あれだけバラバラにされても無傷とは」
「お前もさっきの竜巻野郎の仲間か?」
「ああそうだが、そんなことよりお前ら、「モモ」「アマバ」「セーラ」「トウマ」この4人の中で知り合いはいないか?」
「知らねぇ」
「なぜモモ先輩の名が」
「「!!!」」
俺は知らないと答える方が得策だと思ったがアリサは口が滑ってしまったらしい
「すみません」
「いいんだ、倒せば問題ない」
「なるほどな、「先輩」なんとなく分かって来たぞ。よし、今から君たちを嬲り殺す」
「物騒なこと言うねえ、アリサ、攻撃は全部僕が受ける、何なら僕一人でこいつを引き受けてもいい。アリサはここから離れながらナオヤと合流して」
「わかりました」
僕から離れてゆくアリサに向かって斬撃を放ったがギブミーメタファーで防御する
「切れない人間と切ることしかできない俺、これは厄介だな・・・」
「殴ってみるか」
相手の後ろに人型のビジョンが現れる
「人型の能力・・・」
一方そのころ、ナオヤは結構苦戦していた、能力についてはだんだんと分かって来た、五本の指それぞれから噴出される小さな竜巻はだんだん大きくなってゆき、小さいうちにつぶせばいいと思っても小さいうちは高圧の風の刃で触れると危険、しかしある程度の大きさになると消える、という仕様だ
「あのさあ、何でいきなりブッ放してきたの?ひょっとして僕有名人?それとも君、ひょっとして「モモ」たちの仲間なのかなあ?」
「ああ、確かに俺はモモ先輩の仲間だが違うぜ、テメエがミチルを殺したからだ!」
「ミチル・・・どの子だろうか・・・」
30人以上殺したタツヤにとって心当たりなんてなかった
「ミチルのためにお前を殺す!」
「いいえ違うわ、これ以上奴の被害にあう人がいなくなるように正しくやっつけるのよ」
さっきからいなくなっていたペンライトがまたやってくる
その数は少なめだったが一つ、二つと増えてゆく
「一気に畳みかけるよ!」
「あーめんどくせえ・・・どっちか一人くらいなら殺ってもいいかな」
人型に変形した相手の能力はパワーがすごく強く、同じように人型に変化させたギブミーメタファーでもかなり押され気味だった、さらに相手が殴るたびにいくつかの斬撃を受けて風穴があきそうになっていた。
「うおおおおお!いけ!『カット・カット・カット』!」
強烈なラッシュによってギブミーメタファーがボロボロにされる
「まずい!!」
相手の能力がギブミーメタファーを突き破って来た
「勝った!そのまま顔面を突き破れ!」
ズン!ボキボキ!ととんでもない音が鳴り僕は後方に吹っ飛ばされる、顔面はぐちゃぐちゃで凹んでいて三日月のような形になっていただろう、更に殴りには斬撃の効果もあるみたいで、体のあちこちに切り傷ができた、すぐに直したが。
「切るよりも殴った方が効くとは面白い能力者だったな、さあ、とどめ・・・」
ここでさっきバラバラになったギブミーメタファーが集まって相手の本体に絡まったため本体は身動きが取れなくなっていた
「ははは、初心者め!別に俺が動けなくても『カット・カット・カット』は動けるぞ!」
能力の方が僕に殴りかかってくる、一方の僕はただ前に突っ込むのみ
(何だ?さっきの殴りで脳が破壊されたのか?)
思いっきり顔面をめがけて殴ってくる、顔面がまた凹んだ、しかしギブミーメタファーの破片で自分を背中からタックルをさせたため、後ろには吹っ飛ばされない。
「何!?」
全くうろたえない僕を見て焦った相手は僕を吹っ飛ばすためにさらに猛攻撃を仕掛ける、そのたびに僕の顔はボギ!ドシャ!と鈍い音がする
しかし追いつめられているのは相手の方であった
「うりゃあああああああ!!!!!」
僕の顔面、腹、体のあちこちを殴られ、そのたびに斬撃を受けた僕はとうとう
バラバラになった
バラバラになったならこれからやることは一つ、まずはバラバラになった僕の体をぐちゃぐちゃにし、相手の能力の後ろに回り込んで僕の形に戻した
「なにいいいい!?」
僕はさっき僕の背中を押していたギブミーメタファーの欠片を拳に纏わせなるべく威力が高くなるように鉄のように硬く、栗のようにトゲトゲな拳を作り
思いっきりぶん殴った
「グハァ!ギャア!ガア…」
一撃では沈められなかったので何回か殴ったらぐったりして能力も消えた
(よし、少々無茶をしたが少し息を整えたら合流しよう)
と思った時だった
ドシャア!と何かが落ちてきた
それが腹を引き裂かれたアリサだと分かるには少々時間がかかった、受け入れ難かったからだ
「アリサ!返事しろ!」
しかし返事はなく、その代わりにドクンドクンと小刻みに大量の血を流す
(ああ、どうしよう、どうしよう)
死にかけのアリサを前に一瞬何もできず立ち止まってしまう。しかしその時
ぴくっ、とアリサの腕が動いた
(いや、助けるんだ、僕の能力はまだ本体の僕が未熟だけど自分にやれることを探すんだ!)
しかしその時ナオヤもこちらに落ちてくる
「クロハ、アリサが!どうしよう!」
ナオヤの顔は不安でいっぱい、と見て分かるような顔をしていた
「ナオヤ、ああ分かってる。それより敵は?」
「ここだよ」
上からゆっくり降りてくる、僕はギブミーメタファーでアリサを敵から遠ざける
「ナオヤ、今から俺が言うことよーく聞け、アリサは俺が病院に連れて行って必ず助ける。だからお前は一人であいつを足止めしろ、時間稼ぎで良い、倒してしまっても構わないけど。お前がアリサを助けるんだ!」
「助かる・・・のか」
わからない、とは言わない。不安にさせないために
「絶対助ける」
「信じるぞ」
その一言は僕にとってプレッシャーになる
「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ナオヤは今まで見せたことの無いすごい気迫を見せる、あっという間に見えないところまで飛んで行ってしまった。
こうなったらここはナオヤに任せてこちらはアリサの応急手当に集中しなければならない、そう、病院に連れていく前に応急手当をしないと病院につく前に死んでしまう、なのでせめて止血くらいはしないといけない、しかし立ち止まってはいけない、なのでギブミーメタファーで持ち上げて運びながら止血をするということだ。
しかしここで思ったのは病院か治癒能力者か、どちらを頼ればいいのか、ということを思った、なのでアリサの胸ポケットから携帯電話を拝借する、モモに電話できるはず
「もしもし」
「もしもし・・・ひょっとしてアリサじゃない?」
「クロハだ、アリサがやられた、傷はだいぶ深い、病院と治癒能力者、どっちが頼れる?」
かなり端折った説明だがモモは一瞬で状況を把握したようで
「病院とアジト、同じくらいの距離ならアジトに来なさい、でも病院の方が一キロ以上近いのなら病院に行きなさい」
「アジトへ行く」
「了解」
こうして一キロ離れたアジトまでアドレナリンがドバドバだったので全力で走れた僕はドアを開けた途端倒れてしまった、しかしアリサを引き渡すことは出来たようだ
「アリサ、助けられますか?」
「難しいかもしれないけど全力で治すわ、私たちに任せて!」
希望はありそうだ
「じゃあ僕残してきたナオヤが心配なので行きます」
「待って、私も行くわ」
もう限界レベルで疲れたのに一キロ先の現場にどうやって戻るのか、それは空飛ぶ絨毯である、そう、ギブミーメタファーを空飛ぶ絨毯にして楽に移動するのだ
「うわーーーなんだあの男女!空飛んでやがる!あぐら掻いて!」
しかしさっきの二人、モモの名前を出していた、連れてきてよかったのだろうか・・・
「ナオヤ!大丈夫か!?」
「くろは・・・あ、ありさは・・・」
ナオヤはすっかり疲弊しきっていて、僕がやってきたとたん安心したのかへたりと座り込んでしまった、その体は傷だらけだったが致命傷は負っていなかった
「アリサは大丈夫だ、もうアタシたちに任せろ」
「モモ先輩・・・良かった・・・」
「あれはミツル君を殺した竜巻野郎ね、ごめんなさい、ナオヤたちに合わせる前に私が仕留めておきたかった。しばらくここで休んでなさい」
「モモォ!会いたかったぜぇ!死ねえ!」
指先から竜巻を発生させる、十本指全てから同じ回転の竜巻を同時に出し、一つの最大火力の竜巻を出す
それに対してモモがとった行動はたった一つ、スイカ大の三角錐を相手の懐へ発射させただけ
三角錐は竜巻を逆に吸収しひとまわり大きくなった、竜巻の影響がなくなったので三角錐はまっすぐに向かっていき、腹にぶつかって吹っ飛んだ、そこに追撃でモモの指先の動きに合わせた三角錐が何度も追い打ちをした
「もう動けないかしら」
「俺を・・・殺すのか・・・」
「いいえ、殺さないわ。そういうことは好きじゃないの」
「へへ、甘いな、その甘さがてめえの首を絞めるんだよ!」
「あなたが何を言っても所詮は負け犬の遠吠え、聞く価値ないわ」
「いいか、いいこと教えてやる、というかそれを伝えに来たんだ、よーく聞け、俺たちは今、チームを組んで行動している、名前は「スターダスト」、俺はそこの5番隊のナンバー3、そう、俺はただの下っ端だ、だが隊長、副隊長クラスの実力はバケモンだ、これからお前たちは長い戦いに身を投じることになる、震えて待て!」
「あっそ興味ないわ。帰ろう、アリサが心配だ」
相手も相当ボロボロだったので、そうだな、と俺たちはもう帰ることにした
「やめて・・・やめて・・・殺せ・・・俺を殺していってくれ・・・」
そうお願いするのはこれから死よりも恐ろしいことが起こるかもしれなかったからだ・・・
しかしその言葉はモモたちには聞こえなかった
「やあ・・・その・・・誰だっけ」
「そ、総長!」
総長だ、良かった。と思った
「あ、最初に僕に会えてほっとしたでしょ、僕はほかの奴らと違って残虐な性格じゃあないから・・・とか思ったでしょ」
「はい
タツヤの首が吹っ飛んだ
「ふふ、君は自分が死んだことに気づかない、やはり最高だな、僕の『フローズン・ワールド』は」
(まだ5秒・・・これでアマバと戦えるのか?あの背中がら空きのモモを殺せばすぐに戦えるかもしれないが今はまだ我慢しよう、約束だからな)
「早く会いに来てほしいな、僕は君が愛しくて愛しくてたまらないんだ・・・アマバ」




