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クローバー・デイズ  作者: 原ボディ男
5/10

アニキ

 アニキ、もといチルドはいったん回れ右をし、その場から引き返す


 「おい待て、逃げるな!」


 相手の能力の射程距離が少しでも短くあってくれ、と祈りながらケータイを操作する、近くにいる仲間にメールを打つためだ。なるべく手短に、しかし連絡事項が確実に伝わるようメールの内容は考えなくてはいけない。


 「ぐっ!」


 背中をスイカ位の大きさの拳に殴られる、拳の先はウニや栗のようにトゲトゲで非常に痛い。もう追いつかれてしまったか、しかしもう十分だ、目的地までたどり着いた。


 「追いついたぞ!」


 もう一撃やってくるが何とか身をひるがえしてしっかり避ける、それと同時にアタッシュケースを取り、中から取り出したのは、仮面。


 (絶対に使いたくなかったが、あんな奴相手なら仕方ない)


 思い出すのは悪趣味なエンジニアの野郎・・・


 五日前


 「やあ、チルド君」


 俺はいかにも理系といった感じの白衣を身にまとった男に呼ばれた


 「私なんかに何の用ですか」


 相手は鼻につく野郎だが俺らはこいつらの開発したアイテムがないと能力者には全く歯が立たない。だからいわゆる鉄砲玉の俺に比べて圧倒的にヒエラルキーが高い


 「いやー、実は新しいパワードスーツが出来てねえ、今回はパワーアップはもちろんのこと、モルモットどもから研究した属性攻撃、そして大幅な小型化に成功したのだ」


 モルモットども、とはそのままの意味ではない、ここのエンジニアたちは捕らえた能力者たちに様々な非道な実験を行っている、しかし彼らにとって能力者は人間ではない、故にモルモットと呼ばれている


 「じゃーん!これがそのパワードスーツだ!!」


 そうして出されたのはラグビーボールのような形の穴が三つ空いた仮面


 「こんな仮面がパワードスーツなんですか・・・?」


 「うーわチルド君のコメントつまんなーい、今まで見せた七人の中で一番つまらないよー、もっと面白いこと言えるようになんないといつまでも下っ端のまんまだよ」


 周りのエンジニアどもがクスクスと笑う


 「まあ、お前のギャグセンスなどどうでもいい、この仮面の話をしよう、これはまあ見ればわかると思うが被ることで被った人間の体をパワードスーツで覆うという新技術だ、まあこれは私の優秀な後輩が一昨日完成させた新技術なんだがな、さすが私の見込んだ後輩だ」


 するとその新技術とやらを開発したのであろう近くにいた後輩が「いえいえ、あれもこれもいろいろな技術を教えてくださった先輩のおかげですよ」と言う


 「そこに丁度私の考えた新技術を合体させて作ったのがこの仮面なのだが我々インテリには到底扱えない代物でな・・・君みたいな脳筋・・・ふふ、武闘派に実験を頼みたくてね・・・」


 テメエの方がよっぽどユーモアがねえじゃねえか


 「え?でもあんな代物いくら体を鍛えているといって計算上じゃ死んじゃいますよ、着せないほうが・・・」


 (バカ野郎!死んでもいいんだよあんな下っ端、もっと上の階級の方に安全に着てもらうためにこのモルモットの死体で実験するんだよ)


 (あ、なるほど合理的ですね)


・・・・・・・・・・・・・・・


 何が合理的だ広辞苑読み直せあの野郎共!足元見やがって・・・


 あの野郎の思惑通りに行くのは納得いかないがあの男を生かしておく方がよっぽど危険だ、女の方は仲間が殺してくれることを信じて、男の方を殺すことに全力を尽くすッ!


 思い浮かべるのは苦楽を今まで共にしたノルド、子供のころからこんな情けねえ俺をアニキと呼び慕ってくれた、お前は俺が助ける!!!


 アタッシュケースの中には仮面に装着するいろんな属性のメモリ、まだ試作段階だと三種類しかない、火、風、雷、雷は論外、風も効かないだろうという判断で火


 「『ペルソナ・ボイス』」


 せっかくなのでかっこいい名前を付けてやった


 「させるか!」


 変身中の攻撃という最も効果的なタブーを行う、しかし


 「「熱いいいいいいいい!」」


 発動者も攻撃側も熱さに苦しむ緊急事態


 「熱い、暑いじゃなくて熱い、これじゃあまともに戦えない、脱ごう」


 しかし


 「脱げねえ、脱げねえ、どうなってるんだクソォ!!!!脱げねええええええ」


 

 一昨日、某研究室


 「先輩、仮面スーツの脱ぐ方法なかったので脱げるようにしておきました」


 「え?あれ脱げなかったの?じゃあもし火のメモリ使ったら最後スーツに焼かれて終わりじゃん」


 「そうなりますね」


 ・・・・・・・・・・


 「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」」


 


 相手が強そうな何かを身にまとったが相手が一番苦しんでいる、まったく意味の分からない状況にクロハは困惑していた、いろいろな事態が考えられるが分かることは相手が自分を焼いていること、となればやることは一つ


 「アンナ、逃げるぞ」


 「え?うん」


 二人で相手のいるところと反対に逃げる


 「待て!」

 「危ない!」バシュ


 さっき覚えた電撃弾をしっかり使いこなすアンナ


 「よし、なるべく遠くに逃げるぞ」


 クソっダメだ、もう俺の体はボドボドだ、俺はここで何も成し遂げられずに終わるのか・・・


 いや、まだだ、俺はやれる!まだやれる!!!


 その時、自分の命を燃やし尽くそうとした男の体が、文字通り巨大な火の玉となる


 「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


 クロハの顔面にパンチを食らわせるためにに何度も電撃弾やトゲパンチを食らったが、止まることはなかった


 「オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”!!!!」


 そしてその拳がとどく・・・


 ことはなかった、クロハのギブミーメタファーがまとわりつき、身動きが取れなかったのだ


 しかし


 「ウギャオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 言葉にならない叫びが響き、ギブミーメタファーが引きちぎられる、パワードスーツの強化はかなり強かった


 (触れたらまずい!)

 (触れたら勝ちだ!)


 顔面のパンチをクロハはさっと避けた、しかし膝蹴りが当たってしまった


 「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」


 ギブミーメタファーで体を覆ったため致命傷になることはなかったが、あまりの熱さに悶絶する。しかし相手の攻撃は止まらない


 「うわあああああああああ」

 「あああああああああああ」


 お互いもう全身全霊だが殴り合いは止まらない。実際はそんなに長い時間ではなかったが、とっくに疲れた状態で触れたらおしまいの炎の恐怖の前で戦った時間はとてもとても長く感じた


 「・・・・・・・・・・・」


 やがてチルドの声が聞こえなくなった、しかし攻撃は止まらない、もうスーツの中では虫の息だが、パワードスーツの影響でほんの少しの力でパンチが繰り出せるのだ


 「ーーーーーーーーーーー」ドサッ


 とうとうパワードスーツが倒れた


 「ハア、ハア、ハア・・・」


 終わった、と思うと一気に疲れが出てきたのでどうせ人もいないのでここで寝転んで休んだ


 「アンナ、ケガはないか?」


 「私は全然大丈夫だよ、それよりクロハはもうボロボロでしょ、大丈夫なの?」


 「やけど以外は自分の能力で直したから一応軽傷だな」


 「そっか、私を守ってくれてありがとうね」

 

 「まあ、盾役みたいな能力だし男だから女の子は無条件で守らないとね」


 「クロハ」


 「何?」


 ここまでの会話、ずっと目を閉じていたまま行っていたが、クロハが目を開ける隙もないままアンナは



  クロハの唇にキスをした

 

 (!?!?!?!?!?!?)


 いきなりのキスにとてもとても驚き、アンナの電流が流れない事にも気づけなかった


 ちなみに電流が流れなかったのは今日いっぱい放電したから


 最初は初めてのキスというものをじっくり味わっていたが、


 (唇やわらかい・・・口内のぬくもりが伝わってやばい・・・)


 しかしキス時間のあまりの多さに


 (あ、アンナ、長いよ・・・しかもさっきから圧がすごいし)


 キスというのは女の子の方が好きだというのをなんか知ってるな、だから長いのか、と勝手に仮説を立てて勝手に納得してしまっているが・・・




 

 しばらくして


 やっと唇が離れたと思ったら


 自分の左耳の真横で


 ゴンッ


 と鈍い音がした


 横を見てみると


 

 

 


 アンナの顔だけが落ちていた


 「あ・・・あんな・・・・」


 「え?なんで・・・」


 自分の上にのしかかっている体と横に落ちている首


 アンナが死んだと理解するのに少し時間がかかった


 「え?なにこれ」


 「は?、え?、は?」


 ナイフを持った犯人が逃げていくのが見えた


 「う・・・あ・・・・・」


 「あ・・・・・・・・・・・・・・・」


 「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 つづく


この回ちょっと残酷描写があったのでR-15にしておきました

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