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深窓令嬢は世界を知る

ハインツは、たくさんの教科書を運んできた。


(なるほど、歴史はそれなりにありそうね)


「本日お待ちしたのは、歴史と地理、そして語学の教科書です。学園入学レベルの内容をお待ちしています。歴史には地理が必要ですし、隣国を知れば語学もついてきますので関わりあうものは一緒に学んでいただこうと思います。」


(ハインツは優秀だわ)


教科書を開くと日本語で書いてある文章が目に入る。


(日本語で問題なく話せていたから覚悟していたけれど、この国は日本語を使うのね。正直日本語は、読みは問題ないけれど書きが難解だからアルファベットのような語学が使われると思っていたのに。日本語なんて世界に広がる語学かしら。意図的な何かを感じるわ)


薫子(かおるこ)は歴史書を読み進める。


この国は、ステラルヴィア王国。人口は、900万人。北部は山に囲まれ山脈が連なり山から流れる幾筋(いくすじ)もの川が豊かな土壌を運んでいる。川付近は畑が広がっており河口へ進むと漁業が盛んだ。季節は春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)あり日本に酷似(こくじ)している。


(やっぱりここは全く知らない世界なのね)


隣国はムーメリアス王国、パズドナタ王国があり3国を合わせてステラ大陸と呼ぶ。ステラ大陸は、この世界の1番大きい大陸で世界の中心となっている。文明は現世と中世が合わさり現代人からみると不思議な世界だ。

ステラ大陸以外に他2大陸があり計3大陸で構成されている。全大陸を合わせても地球よりずっと小さい。


ムーメリアス王国は、人口300万人。パズドナタ王国は、人口500万人。ステラルヴィア王国と人口差が大きいので戦争もなく平和な治世が80年続いている。

隣国も公用語としてステラ語(日本語)が使われており、他の大陸では、メイ語とパナ語が使われるが大陸間の貿易も盛んなため公用語が十分に通じる。


(よく見るとメイ語は英語でパナ語はフランス語じゃないかしら。この小さな世界で日本語、英語、フランス語が言語として使われることあるのかしら?全く似ていない言語が使われるということは、大昔に大陸間で交流がなかったと考えられるかも。スペイン語、イタリア語、ポルトガル語とかならまだ理解できるけれど。この組み合わせがますます不思議)


現在ステラルヴィアの王族は、「終末戦争」後から80年続いており「ステラ一世」即位後、歴代嫡子が王となり世襲している。

男女どちらも王になる可能性があり、現在は第一王子のエリックか第一王女サファイアのどちらかが王となる。王子は16歳、王女は14歳でマリエッタと同い年である。


(歴史や地理はとても覚えやすいわね。大陸も少ないし。語学のチョイスが気になるものの、この2カ国語は幼少より学んできたから問題なさそう)


「マリエッタ様、教科書をめくるのはそれくらいにしていただき授業を始めてもよろしいでしょうか?」


ハインツの言葉にはっとした薫子は少し逡巡(しゅんじゅん)し、


「ハインツ、一つ質問してもいいかしら?」


とハインツに聞いた。


「はい、もちろんです。」


薫子の質問に戸惑うも、素直に頷くハインツに薫子は質問をする。


「この内容は、どれくらいの期間で終了する予定ですか?」


「マリエッタお嬢様は、久々に学ばれますので忘れていることもあるかもしれません。なので3ヶ月間、1日6時間かけて歴史と地理を学び終わる予定です。また語学の習得は時間がかかるでしょうから、デビュタントぎりぎりまでか、それ以降も忘れないようおこないます。」


「そうですか。まず教科書全てに目を通して必要ないと判断した分野は省略してしまいましょう。」


「マリエッタお嬢様、しかしそれでは・・・」


「(メイ語)わたくし語学はよく理解しています。(パナ語)語学の学習は問題なさそうですのでご容赦ください。」


「「マリエッタお嬢様・・・すごい。」」


(ふぅ時間は有限ですから、サクサクいきましょう)


「語学は覚えていたようです、歴史と地理は忘れてしまったのでそこからお願いします。」


そういうと、すごい勢いで教科書をパラパラめくり教科書を分類し、教科書はあっという間に仕分けされた。


「それでは僭越(せんえつ)ながら授業を始めさせていただきます。」


歴史は80年分なので薫子としてはたいした量ではない。


ハインツは、「社交の場で情報は必須です。」とし分厚い貴族年鑑の一つ一つ顔と爵位を紐付けながら説明していく。


マリエッタのバーリ家は、侯爵だった。


(なかなかに上位貴族でしたね)


公爵家は、ロイヤル家、コール家、スワロ家の3公爵とその下に5侯爵バーリ家、モル家、ノーマ家、ラル家、ヨルビィス家が連なり各領地を治めている。

隣国のムーメリアスと隣り合っているのは、王家筋であるロイヤル家が。軍人として大きな功績をみせたスワロ家はパズドナタと隣接し国境を守っている。

海側をコール家が治め、各侯爵は、内陸の主要な地を侯爵領として治めている。

どの公爵家も王家との繋がりは深く、3公それぞれが王家の血筋を引いている。


バーリ領は、王家筋ではないものの肥沃(ひよく)な土地があり豊かな農地を持っている。領内には15の農村と2つの町があり領民の暮らしは比較的安定しているようだった。

王国内では、どちらかというと河口にあり、温暖な気候のためか1年中穏やかな日が多い。

主要な農産物は野菜と米で降水量が多いので小麦の生産はしていないようだ。


(昨日はパンを食べたから小麦を他の領か隣国から買付しているのね)


「マリエッタお嬢様、初日はこのくらいでよろしいかと。」


「ハインツありがとうございました。」


薫子の熱心さにハインツも手応えを感じた。


「明日から午前中は、歴史と地理を。午後はマナーとダンスをおこないます。」


「はい大丈夫です。」


薫子も手応えを感じていた。


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