バレた深窓令嬢
薫子は勉強を終えるとリリーが用意したお茶を飲んでいた。
リリーは薫子にそっと話しかけた。
「あなた様は、どなたでしょうか?」
「「・・・・・・・・・・・。」」
(あら、やっぱり他人が成り代わるなんて所詮は無理な話なのね)
諦めた薫子は、リリーに向きあうと、
「薫子と申します。」
と言ってにこりと笑う。
「・・・・そうでしたか、カオルコ様というのですね。」
沈黙のあとリリーは笑った。
リリーは天井を見つめ逡巡し、薫子に向き直ると話し始めた。
「どこからお話しすればよろしいのかわかりませんが、この屋敷の者でしたら誰でも知っている話です。
2年前の朝、マリエッタお嬢様の叫び声が聞こえ当時のメイドが駆けつけますと、取り乱したお嬢様がいらっしゃったそうです。
その時、マリエッタお嬢様は「なんでマリエッタになるのよ!!最悪だわ!!」と独り言を話されていました。
その後、なぜかお出来になっていた勉学、教養、マナーが全く出来なくなり「できないのは当たり前でしょ、私は庶民なんだから。」とおっしゃられました。
ご家族には、「どうせ裏切られるのよ。」と冷たい態度をとり、周りのご友人方には、ご令息のみ媚をうるように近づきあしらわれ、ご令嬢には冷たい態度を続けた結果、避けられるようになりました。
仕様人には、無理難題を言いつける、嫌なことをする。小言を言う。怒鳴るなど私が話した通りです。
急に変わられたお嬢様をとても心配したご家族は、ある日、有名な占い師に遠目からマリエッタお嬢様をみてもらうことにしたのです。残念ながらその頃には、ご家族がマリエッタお嬢様に近づくことすら出来ませんでした。
その結果、マリエッタお嬢様に違う別の人物が憑依していること。マリエッタお嬢様の魂はまだ薄く繋がっているがここにいないこと。憑依している人物がいなくなるとマリエッタお嬢様が危険なことがわかりました。
ご家族はこの屋敷の者に真実を伝えて、どんなマリエッタお嬢様であったも仕えてほしいとご説明されたのです。昨日は、その、憑依者が変わったのではないかと驚き取り乱しました。侯爵家に勤める者としてお恥ずかしい限りです。」
(まさかわたくしの前にも同じような方がいたのですね。その方に比べるとわたくしはマシなのでしょう。皆さんが好意的な理由がよくわかったわ)
「リリーありがとう。わたくしは、マリエッタ様が戻るまで最善を尽くすと決めているの。なぜかしらね。でもそう思うのよ・・・本当よ?」
うふふと薫子が笑うと、リリーは顔を赤くして
「カオルコ様、マリエッタお嬢様が笑うお姿は久々でして。私どもまだ慣れないようです。」
と苦笑した。
(隠していても皆バレていたのですね)
少しすっきりした気分に薫子はなった。
「カオルコ様、私どもはカオルコ様を歓迎いたします。その、カオルコ様と外でお呼びするわけにいきませんので屋敷の者はお嬢様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「もちろん構わないわ。」
薫子は、今日のディナーで家族に会うのが楽しみになってきた。




