小公爵のトラウマ
レックスは、侯爵を待つ間マリエッタの悪行を思い出していた。
もともと、マリエッタは大人しい令嬢でレックスもマリエッタに対して何の感情も抱いていなかった。
当時マリエッタはレックスへ好意があるようには見えなかったが、
レックスは、次期公爵という立場もあり婚約者候補としてマリエッタを考えていない訳ではなかった。
コール家は、今でこそ遠縁になるが遡れば王家とつながりがある。
公爵の地位を盤石にするために、アルシャードとの仲は友好だが、さらにバーリ家と血縁関係になるに越したことはない。
コール家の歴史は、終末戦争後、新王家設立と絶対王政を敷くため、当時の王弟が娘、コレットと王家を支持した貴族が婚姻したところから始まる。戦後は、領地運営と貴族間の絆を強くし王家を支えてきた。
公爵領は、海に面しており貿易も盛んだ。
ステラ大陸は近隣諸国と比べ、国が栄えているため大規模に貿易を担うコール家はとても裕福だ。
さらには、王家と3公爵の関係も表面的には友好的で争い事もない。各領地が潤っていることもあり、争うよりも領地運営に力を入れている。
親からは時期公爵として領地運営、社交に必要な技術、情報を学んでおり、政治について土台を固めつつある。学園では、同年代との交流に力を入れており周囲のサポートも盤石にしてきた。
順風満帆な日々の中、ある日それは起きた。
学園生活を迎えた初年度、週末にアルシャードの家へ行った。アルシャードとは特に親しいためそれぞれの家へ何度も行き来しているが、その日は金髪縦巻きーロールの怪物がいた。
マリエッタは、レックスを探し庭に出てくるとすごい勢いで「推しーーーー♡」と言いつつ抱きついてきた。そして・・・周囲に人がいるにも関わらずキスをしてきた。
アルシャードがすぐに剥がしたが、マリエッタの豹変ぶりにすっかり圧倒された。
その日は、平謝りでアルシャードからお詫びをされ解散となった。
それから何回かバーリ家を訪れると、毎回マリエッタに突撃された。
とある日、アルシャードがちょうど席を外したタイミングを狙い、マリエッタがアルシャードの部屋へ断りなく入ってきた。
侍女は、マリエッタを絶対に入れないよう言いつけられていたがマリエッタの迫力に負けたようだ。
マリエッタは、レックスを見るや抱きつき少し膨らみかけた胸を押し付け色仕掛けをしてきた。
胸を押しつけたまま器用に自分のドレスを肌けさせていく。貴族令嬢という立場を顧みず、胸元を露出していくさまにレックスは恐怖が浮かんだ。
レックスはついに「!」と悲鳴をあげると、マリエッタをドンと押していた。
一部始終を見ていた侍女の悲鳴でアルシャードが駆けつける。
レックスは「違うんだ・・・これは・・・」と言葉が続かない。
倒されたマリエッタは、「こうなり様に押し倒されちゃった・・・♡」と意味不明だ。
すぐに事情を理解したアルシャードは、レックスへ「何も言うな全てわかっている。申し訳ないことをした。」と謝罪し家まで送っていった。
翌日塞ぎ込んだレックスは学園へ行くことができなかった。
たかが少女、しかも年上の自分が小さな少女に圧倒されたことは一点の曇りなく歩いてきた道を汚されたようで気分が晴れなかった。醜聞も顧みず、貴族から逸脱した行動は経験したことのない恐怖だった。
その翌日も学園を休んだレックスの元には、侯爵直々にお詫びの品と手紙が届いた。
手紙を読んで、レックスも少し大事にしてしまったなと思い始めたその時・・・それは起こった。
レックスが休んでいると聞きつけたマリエッタは、レックスへのお詫びを持参したと見舞いにきた。
レックスは塞ぎ込んでいたため、マリエッタのことは誰にも説明していなかった。親交のある侯爵令嬢が見舞いに来たことに公爵家の屋敷の誰が疑うだろうか。
皆は、マリエッタを不審に思わずレックスの部屋へ通した。
レックスが目を開けると、目の前にマリエッタがいた。
レックスは、胸がドクドクした。動悸が激しくなり息ができない。
今日のマリエッタは、簡素なドレスをきていた。
簡単に脱ぎ着できるような・・・
レックスが思ったその時、マリエッタは衣服を脱ぎレックスをベットへ押し倒した。
「こうなり様〜♡興奮した?会いたかった!!!!」
半裸になりニタリと笑うマリエッタは、まだ少女なのに娼婦のようでまるでアンバランスだ。
レックスが目を見開いて驚いていると、
「やだ?私に興奮した?思い出作りに私を抱いて???」
そういうと抱きついてくる。
男女や年齢を考えると圧倒的にレックスが有意なはずなのに、レックスは動くことができない。
マリエッタの顔がレックスに迫ってくる・・・
その時、アルシャードがバタンと入ってきた。
「貴様!レックスから離れろ!!」
レックスの順風満帆な人生は、こんな小さな少女に汚された。
小さな少女に汚された事実にレックスは酷く傷ついたのだった。




