深窓令嬢と小公爵
レックスは、来客がいたことに気がつくと、
「アルすまない。バームクーヘンがいるかもしれないから待てなかったんだ。」
と反省を言葉にした。
アルシャードは、頭を抱えて、
「レックスすまない・・・妹はここにいる。」
と呟いた。
ガタッとレックスは怯えた表情で薫子を見る。薫子は、頭を上げられずにレックスへ挨拶をした。
「小公爵様ごきげんよう。お兄様と話は終わりましたので、わたくしは失礼いたします。どうぞお寛ぎくださいませ。」
最後に顔を上げて挨拶をしないのは、お嬢様の矜持が許さない。
薫子は、羞恥心が顔に集まるのを感じるが、赤い顔のままレックスに視線を合わし「失礼いたします。」と告げて退出した。
薫子の後を、リリーが続く。
薫子が退出すると、レックスが「あれは誰だ?」とアルシャードへ聞いた。
「・・・レックス、忘れてしまったかな?うちの妹だよ?」
呆然としたレックスは、アルシャードへ5つ質問があると言ってきた。
「1つ、アルと2人で話していたのは何故だ?嫌っていたはずだ。
2つ、言葉遣いが違っていた。何度言っても貴族のマナーができなかったはずだ。
3つ、髪型が違う。串刺しバームクーヘンヘアーではない。
4つ、俺に抱きつかなかったし、構わなかった。
5つ、顔が赤かった・・・
疑問がありすぎて気持ち悪い。」
アルシャードはレックスの疑問は最もだと深く頷きながらも、答えが見つからず「マリエッタも変わったのです。」とだけ伝えた。
レックスは、「そんな説明で納得すると思うなよ?」と睨みつけた。
「俺がバームクーヘンにされたことを忘れたのか?アルだって覚えているはずだ。」
「もちろん忘れていない。君の寛容な措置にも感謝しているし、忘れるわけがない。レックスが妹を許す必要はないし、我が家は許されることを望んでいない。ただ、本当に妹は変わったんだ。それしか言えないんだよ。」
困ったようにアルシャードが説明をすると、
「いつからだ?バームクーヘンはいつから変わった?」
とレックスは聞いた。
「・・・3日前だ。」
アルシャードの回答に、レックスはかっとなった。
「ふざけるな!3日であそこまで変わるはずないだろう。俺を馬鹿にするのもいい加減にしろ。気分が悪いから今日はもう失礼する。アル、俺を馬鹿にしたこと覚えておけよ?」
アルシャードは、レックスに誠実でいたかった。
「レックス、本当のことなんだ。僕はレックスに恩を感じているから嘘をつきたくないんだ。」
「あれは別人の域だ。顔つきも違う。バームクーヘンは、演技の出来る賢い女ではなかったのだぞ。」
「レックス、公爵に無断で妹の話ができないんだ。少しだけ待っててもらえるか?必ず説明する。」
レックスは、「アルがそこまでいうなら。」とソファーにどさりと腰掛けた。
アルシャードは、急いで侯爵の元へ遣いを出した。
侍女は、急ぎ退出し侯爵の元へ向かった。




