【現代】「新!令和のお嬢様」アフレコスタジオ
新宿のとあるアフレコスタジオに音響監督が入ってくる。
「「「「おはようございます。」」」」
声優が次々と挨拶をし集まってきた。
揃ったのを確認すると、音響監督は緊張した声で話し始める。
「みんな聞いてください。ニュースで知っている方もいると思いますが川田さんが刺されました。今はN病院に搬送されて家族が付き添っているそうです。現在も重体で意識が回復しておらず予断を許さない状況・・・と聞いています。次話を落とす訳にいかないので、今は川田さんの代役を探しているところです。代役が決まり次第、後日薫子だけ別撮りします。」
音響監督はふぅと息を吐くと、少し顔を歪め話し続ける。
「みんなへ誹謗中傷があると聞いていますが大丈夫ですか?実は私のTwitterにもきています。みんなは矢面に立たされることが多いので心配しています。噂が広がってそれを信じ込む人も大勢いますからね。川田さんは男性人気もあったから、男性陣は特に注意してください。それとマスコミも相当嗅ぎ回っているようですので意識して行動してくださいね。もちろん川田さんの回復が一番ですが、みんなで川田さんの分も頑張りましょう。」
音響監督の重い言葉に、皆は無言で頷く。
やはり代役については気になるようで、
「川田さんの代役候補はいるのですか?」
声優の1人が音響監督へ聞いた。
「悩んでいるんだけど、齋藤みおさんにオファーしているよ。」
その名前を聞くと場が一瞬ざわつく。
音響監督は、その反応をわかっていたというように説明を続けた。
「川田さんや近江君とも乙女ゲームで共演しているし、相手役の近江君もやりやすいだろうと思ってね。何より時間がないんだ。まぁ川田さんと代わったら誰でも必ず叩かれるよ。御長寿アニメの声優交代の際なんてすごいだろ?あれと同じだよ。」
音響監督は、この話はこれでおしまいだとPAルームへ入っていった。
音響監督がいなくなると雑談が始まる。
「薫子の役って凛とした感じだから、みおちゃんの甘い感じとちょっと違うよねぇ。」
「本当そうだよ、やっぱりこの役は真帆ちゃんじゃなくちゃ。真帆ちゃん心配だな。・・・お見舞いに行きたいけど。」
「近江は大丈夫?Twitterすごいことになってるんじゃない?」
近江は曖昧に頷いた。
近江と川田真帆は、熱愛が噂される程仲が良い。この業界は、とても狭いため誰もが知っていることだ。
声優をしていると熱心なファンも多く、近江のTwitterにはすごい数のDMがきている。
この話題は、Twitterのトレンドにも入っているようだ。
近江は、仕事に集中するため自分を律し、橋本の役に集中した。
「齋藤さんに決まって現場が荒れないといいけど。」
誰かが呟いたのが聞こえた。
しばらくして音響監督から「テスト始めます。」と声がかかると、皆真剣な顔に変わる。手に持つ台本には、《新!令和のお嬢様》と記載されていた。




