↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の王と追放された龍の巫女  作者: 小笠原ゆか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/42

求婚の保留

天曜の言葉が、すぐには理解できなかった。


私の妻として迎える。


聞き間違えようのない言葉が、蓮瑛の中で繰り返された。


「天曜様が、私を……?」

「急な話で驚かせてしまい、申し訳ありません」


それでも、天曜は先ほどの言葉を取り消さなかった。


「ですが、今、この場で思いついて申し上げたことではありません」

「皇帝の許しは得ているのか」


シンシャが尋ねた。


「いいえ。ですが、私は北方へ出征する前、父に、蓮瑛殿を妻として迎えたいと願い出ておりました」


一年前。

蓮瑛が龍の巫女として皇宮に入り、雨を止められないことで疎まれ始めていた頃だった。


「父からは、蓮瑛殿を妻として迎えることを望むのであれば、皇帝陛下に認められるだけの功を挙げるよう命じられました。そのために北方へ赴き、此度の戦功によって将軍に任じられました」


天曜は、蓮瑛との婚姻を認めさせるために、一年を費やしていた。

その事実だけで、戯れや同情からの申し出でないことは十分に分かった。


「帝都へ戻り、皇帝陛下へ願い出ましたが、蓮瑛殿は既に碧砂国王へ下賜した後でした。そうして私には下賜することはできないと退けられました」

「ならば、現状の立将軍には、彼女を妻に迎える許しがないということだな」

「はい。皇帝陛下から許されたのは、蓮瑛殿を訪ねることだけです」


許しを得ていないことまで、天曜は隠そうとしなかった。


「蓮瑛殿が私の申し出を受け入れてくださるのであれば、皇帝陛下に婚姻の許しを願います」

「今度は認められると?」

「此度の戦功であれば、許しを得るに不足はないと考えております」


天曜は、実現する当てもない慰めを口にしているのではなかった。

蓮瑛が帰国を望んだ時、再び誰かの都合で扱われないよう、天曜は妻として迎える道を考えていた。


「ただし、蓮瑛殿のお心を置き去りにして、婚姻を進めるつもりはありません」


妻として迎える。

立家で保護するというだけの話ではない。天曜は、蓮瑛に自分の妻になってほしいと言っているのだ。


「お返事は、今でなくて構いません。急にこのようなことを告げられても、すぐにはお決めになれないでしょう」

「では、蓮瑛殿が望まなければ、連れ帰るつもりはないのだな」

「無論です」


天曜は即答した。


「私は、蓮瑛殿に選んでいただきたいと申し上げているのです。皇帝陛下の命であろうと、私の望みであろうと、ご本人が望まぬ婚姻を押しつけるつもりはございません」


その答えに、蓮瑛は安堵した。だが、自分が何を望むのかを問われることは、思いのほか恐ろしかった。

今、目の前には二つの道がある。


碧砂国に残る道と、天曜の妻として龍華国へ帰る道――つい先ほどまで、考えたこともなかった道だった。


「私は……」


答えようとしても、言葉は続かなかった。


天曜を嫌だと思ったわけではない。妻に迎えたいと言われたことが、迷惑だったわけでもなかった。


龍の巫女として皇宮へ入ることも、役目を解かれて碧砂国へ送られることも、蓮瑛が決めたのではない。命じられるままに生きてきた蓮瑛にとって、自ら行き先を選ぶことは、あまりにも不慣れだった。


「今、お答えいただく必要はありません」


天曜は言った。


「まずは、お身体を治すことをお考えください」


それは、シンシャからも言われた言葉だった。


「ですが、先ほど申し上げたことを撤回するつもりもありません」

「少し、考える時間をいただけますか」

「もちろんです」


天曜はそれ以上、答えを求めなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。