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砂漠の王と追放された龍の巫女  作者: 小笠原ゆか


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無事の報せ

本日は二話更新です。

こちらは二話目となります。未読の方は、前話「西街道を追って」からお読みください。

通された部屋には、砦を預かる隊長が待っていた。卓上には、天曜が差し出した官符と書状が置かれている。


「龍華国の将軍が、わずか二人で国境まで来られるとは」

「急ぐ旅でしたので、大勢を連れる方が遅くなります。それに、軍を率いて貴国との国境へ近づく理由もありません」

「書状には、先代龍の巫女との面会を許すとあります。だが、これは龍華国皇帝の許可に過ぎない」

「承知しております」


天曜は、帝都を発ってから得た証言を説明した。


「蓮瑛殿は、驢馬の引く粗末な荷車で西へ運ばれました。荷車の御者は、病を患った娘を碧砂国の親族へ送り届けるのだと偽っていたそうです」


隊長は口を挟まずに聞いていた。


「最後に荷車を見たという証言は、国境に最も近い集落で得ました。どうやら追いつく前に、国境を越えられたらしい。既にこちらへ入られたのか、確かめさせていただきたい」

「何故、そこまでして蓮瑛殿を追ってきたのです」

「無事を確かめるためです」


天曜は迷わず答えた。


「蓮瑛殿が碧砂国におられるのなら、かなうことなら会わせていただきたい。ですが、貴国の許しなく国境を越えるつもりはありません。蓮瑛殿ご本人が望まれない場合も、面会を求めることはいたしません」


隊長は、天曜と明慧を残して部屋を出た。

しばらくして戻ってきた時、その後ろには年嵩の女官がいた。


「この者はユエリーと申します。以前、貴殿が捜している娘の世話をした者です」


天曜はユエリーへ向き直った。


「蓮瑛殿は、こちらへ来たのですか」

「はい。驢馬と共に、砦へいらっしゃいました」

「無事なのですか」

「今は王都で保護されております。こちらへ着いた時は、長旅でひどく衰弱しておられました。ですが、王宮へ移られてからは食事も取れるようになり、少しずつ回復されていると聞いております」


蓮瑛は生きている。

追いつけなかったことで、最悪の事態を招いたわけではなかった。


「何故、王宮へ?」

「国王陛下が、自ら蓮瑛様を迎えにいらっしゃいました」


碧砂国には、龍華国から娘が送られることだけは伝わっていた。国王シンシャは事情の分からない娘に罪はないとして、丁重に保護するよう砦へ命じていたという。


「蓮瑛様は、共に旅をしてきた驢馬を置いていくことを案じておられました。陛下は、その驢馬も王都へ連れていくよう取り計らってくださいました」


わずかな水と食料だけを与えられ、砂漠へ送り出されたというのに、蓮瑛は自分を運んだ驢馬の身を心配していた。

それは天曜の知る蓮瑛らしかった。


「王宮では、どのように過ごしておられるのですか」

「客人としてお部屋を与えられ、王宮の医師が診ておられるそうです。陛下は婚姻について決めるより先に、まずお身体を治すようにとおっしゃってくださいました」


龍華国から一方的に花嫁を押しつけられながら、シンシャは蓮瑛を責めることはなかったようだ。

砦へ保護を命じ、自ら迎えに来て、蓮瑛が案じた驢馬まで王都へ連れていった。


「貴女の目から見て、蓮瑛殿はどのようなご様子でしたか」

「弱音は口になさいませんでした。ただ、お一人で見知らぬ国へ来られたのです。心細くないはずはなかったと思います」


天曜の膝の上で、握られた手に力が入った。


「話してくださり、ありがとうございます」


ユエリーが退出したあと、天曜と明慧は王都から返事が届くまで、砦の客室で待つことになった。


通された部屋の窓からは、見渡す限りの砂漠が広がっていた。その先に、蓮瑛のいる王都がある。


天曜は、王都へ続く砂漠を長く見ていた。


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