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砂漠の王と追放された龍の巫女  作者: 小笠原ゆか


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幕間 皇后の誤算

天曜が帝都を発った翌日、皇后は皇帝付きの宦官から、謁見の席で交わされた会話を聞き出した。


「立天曜が、蓮瑛を妻に望んだ?」

「はい。蓮瑛様を自分に賜りたいと。妻として迎えると、はっきり申し上げたそうでございます」


皇后の指が、茶器の縁で止まった。よりにもよって、立天曜が蓮瑛を望むとは。


天曜は北方で戦功を重ね、皇帝の覚えもめでたい。父は丞相の雲水であり、立家には皇宮の内情を探るだけの力もある。


もし蓮瑛がその妻となれば、皇宮で受けた仕打ちを天曜へ話すかもしれない。蓮瑛の言葉を信じて天曜が動けば、皇后に仕えていた者たちまで調べられるおそれがあった。


だが、皇后はやがて小さく笑った。

その笑いは次第に大きくなり、静かな室内へ甲高く響いた。


「妻に迎えるですって?」


碧砂国までの道程を考えれば、蓮瑛を乗せた荷車は、既に砂漠へ入っている頃だった。

満足な水も食料も持たされず、ろくに歩くこともできなかった娘が、生きて砂漠を越えられるはずがない。


「残念でしたこと。今頃は砂漠に放り出され、野垂れ死んでいる頃でしょうよ」

「では、立将軍のあとを追わせますか?」

「必要ありません」


天曜が蓮瑛を捜して国境へ向かったと聞いても、皇后に不安はなかった。自ら蓮瑛の死を確かめてくれるのなら、かえって都合がよい。


皇后は涙の滲んだ目元を指先で拭った。


「行かせておやりなさい。あの男がどれほど馬を急がせようと、死人を妻にはできないでしょう」

次回は明朝7時、通常通り本編を更新します。

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