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第35話 監査局長の白い礼装
王家会議当日、私は監査局長の正式礼装を纏った。
白銀に近い灰の上着、黒の細帯、胸元には監査局の印章。華やかさはない。けれど、記録を守る者としての重さがある。
「似合っています」
ルーファスがそう言うので、私は鏡越しに彼を見た。
「褒め言葉として受け取っていいんでしょうか」
「判決文のように綺麗だ」
「それは少し怖いですね」
けれど笑えた。緊張が少しだけほどける。
ヘレーネ殿下も今日は王女の礼装だった。だが胸元には宝石より先に、小さな計算帳を差している。
「お守り?」
「ええ。私、数字を見ると落ち着くの」
その返事に、私は深く頷いた。
会議室へ向かう廊下で、イレーネ女史が私たちへ一礼した。
「今日は、静かな微笑みより正しい記録のほうが王宮を守ります」
「ありがとうございます」
扉が開く。中には王、評議会、財務卿ローデリヒ、カスパル公子、そして主要貴族たちが揃っていた。華やかな場ではない。書類で人の未来を決める場所だ。
だからこそ、私は一歩も引かない。




