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第34話 婚姻台帳への二度目の改竄

王家会議の前夜、東塔書庫の鍵が不自然に動いた。


 監査局へ届く夜間出入り記録を見た瞬間、私は立ち上がる。婚姻台帳室に入ったのは、財務卿付きの書記ひとり。理由欄は“補修確認”。そんな予定は入っていない。


「行きます」


 ルーファスが無言で外套を取った。


 書庫へ駆け込むと、書記は台帳の前で固まっていた。机の上には補修用の赤糸、まだ乾いていないインク、そして書き足しかけの名前。


「動かないでください」


 私が告げると、男は紙切れを握って逃げようとした。だが扉前にいた近衛兵がすぐに押さえる。


 私は台帳を開いた。婚姻欄には“エリーザ”の名を復旧しようとした跡がある。だが今回の糸は色が浅い。古い帳面に触れば、嘘はすぐに浮く。


「命じられたんです!」


 書記が叫んだ。


「明日の会議までに婚姻記録を整えろと、ローデリヒ卿が!」


 その言葉だけで十分だった。過去の偽装だけでなく、今この瞬間も改竄を続けている。


 私は証拠封筒へ糸とインク見本を入れた。手が少し震えていたのは、怒りのせいだ。


 同じ手口を、二度も、同じ王宮で。


 なら明日は、書類の前で終わらせる。


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