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第32話 第一王女の公開講義

調査が進むほど、王宮では“早く婚姻をまとめろ”という圧が強くなった。


 そこでヘレーネ殿下は、自ら先手を打った。


「公開講義をするわ」


「講義?」


「王家会計の基礎。婚姻の話ばかりされるなら、私が何をしたいのか先に見せるの」


 止める理由はなかった。むしろ、そのほうがいい。


 講義当日、殿下は大広間で年貢配分と施療院予算の見直し案を説明した。白い指で黒板の数字をなぞり、余計な飾り言葉は使わない。


「王家が贅沢を減らせば、地方の施療院を六つ維持できます」


 貴族たちは最初こそ怪訝そうだった。だが、説明が進むほどに空気が変わる。ヘレーネは“飾る王女”ではなく、“理解している王女”として立っていた。


 後方で見ていたカスパル公子だけが、微妙に笑みを失っていた。


 講義のあと、殿下は私の横へ来て小声で言う。


「少しは値段が上がったかしら」


「人に値段はつきません」


「そうだったわね」


 それでも彼女は満足そうだった。未来を婚姻で封じる前に、自分の能力を表へ出した。その意味は大きい。


 政略結婚は、相手が黙ってくれると信じた瞬間に強くなる。だからこそ、ヘレーネ殿下の声は何よりの証拠だった。


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