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第18話 偽王太子の血統証

ヒルデブランド医師は震える声で、それでもはっきり証言した。


「二十七年前、王妃陛下が産まれたのは女児です」


 議場がどよめく。


「男児レオポルト殿下は、同夜に大公家分家で生まれた子でした。宮務局とハルトマン家がすり替えを主導した」


「虚言だ!」


 レオポルトが立ち上がる。だが私はすぐ次の証拠を重ねた。


「大聖堂墓所台帳。死んだとされた第一王女の棺には石灰袋が入れられ、遺体確認は行われていません」


「さらにこちら」


 焼け残った頁の写し、乳母名簿、旧庫の覚え書き、そして文書庫放火犯の自白書。書類は一つひとつでは弱くても、並べれば一本の線になる。


「最後に、北塔修道院で育てられた女性エルザの腕輪です。王家女児用の護符であり、二十七年前の寄進帳簿には“E嬢教育費”の送金が記録されています」


 エルザが前に出る。緊張で青ざめているのに、足は止まらなかった。


「私は……王女になりたいわけではありません。でも、もし私が誰かの嘘のために捨てられたのなら、見なかったことにはしたくありません」


 国王が震える手で顔を覆った。


「ヘレーネ……」


 その呼びかけに、議場が静まり返る。王妃にしか教えていない幼名を、病床の王だけが知っていたのだろう。


 レオポルトはなお否定しようとしたが、近衛兵がその腕を押さえた。文書庫放火犯はすでに彼の名を挙げ、エドガーも旧印の持出しを認めざるを得なくなっている。


「王太子レオポルト殿下、並びに宮務官エドガー・ハルトマン」


 ルーファスが議場に響く声で告げた。


「王家文書偽造、王族血統詐称、証拠隠滅の疑いにより拘束します」


 レオポルトの玉飾りが石床に落ちる音を、私は確かに聞いた。


 偽の血統証は、ついに王宮の真ん中で砕けた。



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