第15話 文書庫に火をつけた者
王族会議の招集が決まり、王宮は目に見えて騒がしくなった。
その矢先、王宮系譜院の別館文書庫から火が出た。
「まさか」
報せを受けた私は、ルーファスとともに馬を飛ばした。現場では使用人たちが水桶を運び、黒煙が夜空へ立っている。燃えているのは、旧王家印の保管台帳が置かれた区画だった。
「狙い撃ちね」
私は口元を押さえる。あの台帳が焼ければ、儀礼印を持ち出せる人物の範囲を絞れなくなる。
だがルーファスは火の手を見ただけで裏門へ走った。そこに、煤を浴びた男が一人、書類束を抱えて逃げようとしている。
「止まれ!」
男は短剣を抜いたが、ルーファスの一撃で石畳に転がされた。奪った書類束の中には、旧式儀礼印の貸出簿と、エドガー直筆の指示書があった。
「“痕跡を残すな”」
私が読み上げると、捕らえた男は顔を背けた。
「私は命じられただけだ……宮務官殿に」
決定打だった。
その時、崩れた梁が火の粉を上げて落ちる。私が反応するより先に、ルーファスが私を抱き寄せて庇った。焦げた木片が彼の肩をかすめる。
「ルーファス様!」
「かすり傷だ」
そう言うが、外套の肩口は裂け、血が滲んでいる。私は思わず彼の腕を掴んだ。
「無茶をしないでください」
「君を焼くわけにはいかない」
その一言が、不意打ちのように胸へ落ちた。
火より熱いものが、確かにあった。




