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第14話 棺に入らなかった赤子

医師の証言だけでは、王族会議を動かすには弱い。私は次に、当時の埋葬許可証と葬列記録をあたった。


 王家の死産・夭折記録は、王都大聖堂の墓所台帳に必ず残る。開示には時間がかかるが、近衛総長の権限と私の専門職名義でどうにか閲覧にこぎつけた。


 古い台帳の頁をめくり、私はおかしな数字を見つける。


「棺の長さが合わない」


「何がだ」


 ルーファスが覗き込む。


「新生児用棺なら一尺五寸で足りるのに、これは二尺二寸。しかも副葬布の明細に“石灰袋一”ってある」


「……重さをごまかすためか」


「ええ。空の棺では不自然だから」


 さらに聖堂書記の控えには、こうあった。「王妃体調不良のため、遺骸の面前確認なし」。


 つまり誰も、中身を見ていない。


「死んだ王女は最初から棺に入っていなかった」


「代わりに石灰袋を入れて、葬儀だけ整えた」


 私は冷たい石机に手を置いた。二十七年前の嘘は、驚くほど雑だ。けれど王家の権威と恐怖があれば、それで押し通せたのだろう。


 台帳の端には、埋葬承認者としてもう一つ名があった。フリッツ・ハルトマン。エドガーの父。


「父も、子も」


「ハルトマン家は王太子の秘密で成り上がった」


 ルーファスが静かに言う。


「だからこそ、エドガーは必死だ。秘密が消えれば、家ごと崩れる」


 私は台帳を閉じた。


「崩れてもらいましょう。今度こそ、書類の前で」



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