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第五話:検証実験。廃棄場に響く爆音

このシリーズは既に完結まで執筆しております。

3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。

街外れ。

打ち捨てられた魔術具の残骸や鉄屑が山をなす廃棄場。人の気配はなく、ただ乾いた風が砂埃を巻き上げ、錆びついた金属板を鳴らす音だけが響いていた。

忘れもしない、忌々しい場所でもある。

その荒廃した静寂の中に、場にそぐわないほどの人影が集まっている。


「……やっぱり、来たんだね」


設置した装置の最終確認を終え、エディは溜息混じりに呟いた。


「そりゃ来るでしょ。こんな面白そうな実験、見逃すとか無理なんだけど!」


クロエが即答する。その隣には、リテラと、そしてメディウスの特訓で全身に包帯を巻いたレオンの姿もあった。


「……極めて危険だよ。今回の実験は、見学を許可できる性質のものではないはずだけど」


エディは表情を硬くし、教え子たちを諭すように言った。


「ですが、先生の到達点をこの目で確認したいのです。それが私たちの先にあるものだと思うから」


リテラの瞳は静かに、それでいて決して譲らない意志を宿している。


「俺も見届けたいんです」

「エディ、悪いな。生徒の熱意を止められなかった」

「いや、メディウス……普通は止めるべきですが……」


メディウスが苦笑いに頭を押さえるが、その隣でガルドが低く笑った。


「なに、生徒の安全は私が保証しよう」


少し離れた位置では、ミラ理事長が腕を組み、冷徹な観察者の目でこちらを射抜いていた。


(完全に、最終試験の面持ちですね)


エディは一度だけ視線を返し、深く息を吐いた。


「……分かりました。ただし、少しでも危険と判断した場合は、即座に退避してください」

「了解!」


短く、確かな返事が重なる。


準備が整う。

地面に据え置かれたのは、多層式の結界発生装置と、その中心に鎮座する球状の核構造。エディがこの一ヶ月、心血を注いで組み上げた「檻」だ。


(短縮詠唱、魔術具、魔術構築……僕のすべてを、ここに)


エディは誰にともなく告げるように、静かに手をかざした。


「……いきます」


魔素を流し込む。内部構築、起動。外殻構造、展開。圧縮工程、開始。

瞬時に、周囲の空気が重く、鋭く変質していく。


「……来るぞ」


ガルドの声が響く。魔素の密度が異常なほどに高まり、空間そのものが軋むような音が聞こえ始めた。


「魔術展開……核撃魔術、発動!」


次の瞬間。

世界が、白一色に弾けた。

轟音。衝撃。

視界を塗り潰す暴力的なまでの白光が、廃棄場を飲み込む。


「……っ!?」


地面が激しく揺れ、空気が引き裂かれる。耳鳴りがすべてをかき消し、圧倒的な破壊の塊が顕現した。


(来たか……!)


エディは歯を食いしばり、即座に手元の魔術具を遠隔起動させた。


「起動(トリガー)――!」


短縮詠唱による多層結界が咆哮を上げ、外殻が閉じる。爆発のエネルギーを、強引に内側へと押し込める。


(抑え込め……外へ出すな!)


凄まじい衝撃が結界の内壁を叩く。強固なはずの防壁が、目に見えて軋み始めた。


「なっ……これ、本気か……!?」


レオンが声を上げ、クロエも言葉を失って立ち尽くす。

爆発は収まるどころか、閉じ込められたことでその密度をさらに増し、内部で猛り狂っている。


「……想定以上、だな」


エディは冷静を装うが、額には脂汗が浮かんでいた。計算は完璧だったはずだ。安全域も十分に見積もっていた。

それでも、この「力」は僕たちの想像を超えてくる。


「先生!」

「まだだ! 下がってて!」


リテラの叫びに指示を飛ばすが、その直後。

結界に、走るはずのない亀裂が走った。


ミシ、ミシッ――。

背筋が凍るような破断音が響く。


「おいおい……まずいんじゃねえか、これ!?」


メディウスの顔が引き攣り、ガルドの表情も険しく一変した。


「……崩れるぞ」


その一言が、場を凍りつかせた。

結界の強度が限界に近い。内部圧力の膨張速度が、僕の制御を超えようとしている。

生徒たちを守ろうとメディウスとガルドは杖を構える。


(……持たない)


理解してしまった。このままでは、あの時と同じ光景が繰り返される。

網膜の裏に、師匠の背中が浮かぶ。


「……違う」


エディは小さく、自分に言い聞かせるように呟いた。


「今回は――僕が、止めて見せる! 再構築(リビルド)!!」


手を前に突き出し、さらに膨大な魔素を流し込む。無理やり構築を上書きし、結界を強化する。


(まだだ。まだ足りない!)

「……くっ」


外殻が悲鳴を上げ、亀裂が蜘蛛の巣状に広がっていく。

次の瞬間。

バキン、という明確な破壊音が廃棄場に轟いた。


「――!」


結界の一部が砕け散る。

そこから漏れ出す光。膨張し続ける圧力。

行き場を失った爆発が、牙を剥いて外へと溢れ出そうとしていた。


「先生!!」


悲鳴のような叫びが重なる。

だが、連鎖はもう止まらない。

絶対的な限界が――今、訪れようとしていた。


【※読者の皆様へ。重要なお知らせ】


この話を読んでいただきありがとうございます。


「面白いかも! 続きが楽しみ!」

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