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第七話:宣戦布告。伝統を背負う男・ガルド

このシリーズは既に完結まで執筆しております。

3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。

……静かすぎる。

さっきまでの魔素の狂乱が嘘のように消え、訓練場には肌を刺すような沈黙が降りていた。


膝をついたままのレオン。その少し前に立つ僕。そして、眼前にそびえ立つ壁のような存在――ガルド・ハイマンス。


「……私の責任だ。危険な術を、未熟な彼に授けた」


低い声が落ちる。ガルドは自らの非を認めた。だが、その瞳に宿る光は一切衰えていない。


「だが、私の考えが誤りだとは思わん。魔術は力だ。力は磨き、極め、正しく振るわれてこそ価値がある。……エディ先生、あなたのやり方は――甘い」


はっきりとした断定。僕は少しだけ考え、正直な思いを言葉にした。


「……そうかもしれませんね。でも、壊れたときに誰も守れないような力は、僕はちょっと怖いんです。生徒たちが傷つくのは、もう見たくない」


空気が一気に張り詰める。ガルドは小さく頷き、逃げ場を塞ぐように告げた。


「ならば、証明してもらおう。どちらが正しいか。力か、理論か。……私と戦え」


どよめきが、津波のように訓練場を飲み込んだ。


「講師同士で!?」「本気かよ……!」


(……ああ、やっぱり。そうなるよね)

心の中で苦笑する。けれど、不思議と嫌な気分ではなかった。逃げる理由も、もうどこにもない。


「……分かりました。よろしくお願いします、ガルド先生」

「待ってください! ガルド先生、正気ですか!」


騒ぎを聞きつけ、割って入ったのはメディウスだった。珍しく余裕を失った顔でガルドを睨みつける。


「講師同士の私闘など、前代未聞です。理事長に報告させてもらいます!」

「その必要はないわ」


鈴を転がすような、けれど場を完璧に支配する響き。


「……ミラ理事長」


いつの間にか、観覧席の最前列に彼女が立っていた。


「面白いじゃない。新しい魔術と、伝統の魔術。どちらが優れているか、私もこの目で見極めたいわ」


ミラは微笑む。だが、その瞳の奥には教育者としての、あるいは魔術師としての鋭い計算が光っていた。


「ただし、正式な決闘として行うわ。場所は闘技場。全校生徒の観戦を許可します。……日時は明日。準備の時間は、それで十分かしら?」


「問題ないです、理事長」とガルドが即答する。

「……エディ、あなたは?」


ミラの視線が僕を射抜く。

(正直、気が進まない。目立つのは苦手なんだ。……でも)


視線を向ければ、不安げなクロエ、真剣なリテラ、そして悔しさを噛み締めながら何かを掴もうとしているレオンがいた。


「……やります。受けて立ちます」

「決まりね」


嵐が去った後のような、けれど熱気が澱んだ訓練場。


「先生! 大丈夫なの!? あの人、学院最強とか言われてるよ!?」


駆け寄ってきたクロエに、僕は苦笑いした。


「うん、強いね。正直、勝てる保証なんてどこにもないよ」

「いや、そこは『任せろ』って言ってよぉ!」


少しだけ笑みがこぼれる。隣でリテラが真っ直ぐな瞳で問いかけてきた。


「エディ先生。私たちに、何かできることはありますか」

「あるよ。……ちゃんと、見てて」

「見る、ですか?」

「そう。明日、全部見せるから。魔術がどういうものか、どう扱うべきか。それを、明日一日で全部覚えて帰ってくれたらいい。それが君たちの宿題だ」


二人は、深く、静かに頷いた。


少し離れた場所で、一人立ち尽くすレオンに歩み寄る。


「レオン君。さっきの、怖かったよね」


ごまかさずに言うと、彼は「……はい」と素直に零した。


「でも、いいところまで行ってたよ。ちゃんと組めてた。崩れたのは、最後の詰めだけだ。だから――」


一拍置いて、僕は彼の目を見て言った。

「次は、そこを直せばいい。君の才能は本物だ」


レオンの瞳が揺れる。


「……俺は。先生に、勝てますか」

「なれるよ。ちゃんと考えればね。……明日、そのヒントを見せてあげる」


レオンは小さく頷いた。その目は、もう暴走してはいない。確かな知的好奇心と、再起への意志が宿っていた。


……正直、気が進まない。

明日になれば、闘技場は人で溢れ返るだろう。


けれど、逃げる理由はない。やるべきことも、もう決まっている。

深く、深く息を吐き、僕は自らの「道具」を確かめた。


(証明するだけだ。魔術は壊すためのものじゃない。理解して、扱って、守るためのものだってことを)


「――理論で、勝つ」


小さく呟き、僕は明日への一歩を踏み出した。


【※読者の皆様へ。重要なお知らせ】


この話を読んでいただきありがとうございます。


「面白いかも! 続きが楽しみ!」

「陰ながら応援してるよ!」

「引き続き頑張ってください!」


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