↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/38

第六話:再戦。暴走するプライドと、守るための構築

このシリーズは既に完結まで執筆しております。

3日ごとに予約投稿をしておりますので、気長に読んで頂けると嬉しいです。

……嫌な予感がする。

ガルドとの対峙が始まる直前、訓練場の空気が、物理的な重圧とは異なる「歪み」を帯びた。


視線の先、さっきの位置から一歩も動かない人影。レオン・ヴァルツァだ。彼は俯いたまま、地を這うような声を絞り出した。


「……まだ、終わっていません」


顔を上げた彼の瞳を見て、背筋に冷たいものが走った。焦燥、執着、そして自分を否定されたことへの純粋な拒絶。それらが混ざり合い、危うい光を放っている。


「レオン君、もう十分だ。さっきの構築、君の到達点は見えたよ」

「……違う。負けていない。俺は、まだ――!」


レオンの手が激しく震える。止めるべきだと直感が叫んだ瞬間、彼は禁忌に近い高密度の詠唱を開始した。


「『大地よ、深淵より応えよ――その力をもって、全てを押し潰せ』!」


集まる魔素の量が異常だ。制御域を遥かに超え、術式の継ぎ目からバチバチと火花のようなノイズが漏れ出す。


「『地殻崩壊(グラウンド・ブレイク)』!」


瞬間、地面が悲鳴を上げ、視界が歪んだ。だが、それは強力な術の発動ではない。構築が自重に耐えきれず、内部から「暴走」を始めた予兆だった。


「レオン君! ダメだ、それは崩れる!」

「……今さら、止まりませんよ。先生……ッ!」


狂ったように笑うレオンの顔が、あの日、目の前で白光に呑み込まれた師匠の背中と重なる。

(……っ。また、同じことが――)


呼吸が止まり、足がすくむ。視界が白く染まりかけたその時、鋭い声が僕を現実に繋ぎ止めた。


「先生! 危ない、逃げて!」

「エディ先生……!」


クロエとリテラの叫び。……そうだ。あの時とは違う。今の僕には、目の前で怯える生徒たちがいる。守るべき「今」がある。


僕は震える右手を左手で抑え、深く、長く息を吐いた。

(大丈夫だ。やることは、いつもと同じ。……壊すんじゃない。守るんだ)


視線を上げ、暴走の渦中へと踏み出す。

(――解析(アナライズ))


脳内に流れ込む膨大なノイズ。歪な構造、過剰な魔素、連鎖する崩壊の起点。一点を突くだけではこのエネルギーは殺せない。


(なら、全部を支えるまでだ)


銀の針を三本、指の間に挟む。

「先生!? 何を――!」

「大丈夫。ちょっと、直してくるだけだよ」


叫ぶクロエに軽く手を振り、僕は魔力の奔流の「核」へ手をかざした。


(――解析(アナライズ)。深度最大。……見えた。ここが連鎖の終着点だ)


一本目の針を突き立てる。

(――遮断(インターセプト))

暴走する流れを一時的に分断。だが、溢れた魔素がすぐさま別の歪みを生む。


(想定内だ。……次はこれだ)

二本目、三本目を同時に。

(――再構築《リビルド)


意識を尖らせ、荒れ狂う魔素の奔流を「本来あるべき形」へと無理やり編み直していく。膨張していた力が、僕の手元で急速に収束し、静かな光へと変わっていく。


そして。

訓練場に、完全な無音が訪れた。

暴走しかけた「地殻崩壊」は、発動することなく、ただの穏やかな光の粒子となって消えた。


「……え」


呆然と立ち尽くす観客。レオンはその場に膝をつき、震える手で地面を叩いた。


「……俺は。何を……」


僕はゆっくりと彼に歩み寄り、その肩に手を置いた。


「レオン君。さっきの、危なかったね」

「……はい」

「でもね、止められたよ。君が止まれなかった分、こっちで止めた。……だから次は、自分の意志で止まれるようになろう」


レオンが顔を上げる。その瞳からは闇が消え、滲んだ悔しさだけが残っていた。


「……俺は。まだ、強くなれますか」

「なれるよ。今の恐怖を、ちゃんと覚えていられるならね」


レオンが小さく頷くのを見て、僕は顔を上げた。そこには、険しい表情でこちらを見つめるガルドがいた。


「……私の責任だ。危険な術を、未熟な彼に授けた」


ガルドは一度目を閉じ、だが再び開いた瞳には揺るぎない信念が宿っていた。


「だが、私の考えは間違っていない。魔術は力だ。力なき者に、誰も守れはせん。……エディ先生、あなたのやり方は、あまりに甘い」

「……そうかもしれません。でも、壊れた時に誰も守れないような力は、僕はちょっと怖いんです」


素直な思いをぶつけると、ガルドはわずかに口元を歪めた。


「……面白い。ならば、その『甘さ』で私の『正統』を凌駕してみせろ。次は、私とだ」


どよめきが今日一番の大きさで沸き起こる。

僕は小さく息を吐き、手の中の銀の針を握り直した。視線の端で、レオンがじっと僕の手元を見つめている。


――次は、壊さないために。

その静かな決意を背負って、僕は老魔術師へと向き直った。


【※読者の皆様へ。重要なお知らせ】


この話を読んでいただきありがとうございます。


「面白いかも! 続きが楽しみ!」

「陰ながら応援してるよ!」

「引き続き頑張ってください!」


と思ってくださった方は、この下にあるポイント評価欄を【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】にして、『ポイント評価』をお願いします。

是非とも宜しくお願いいたします。


今後も更新を続けていく為の大きな励みになりますので、どうか何卒よろしくお願いいたします。


↓広告の下あたりに【☆☆☆☆☆】欄があります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。