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戦わずに全部潰したら、誰も戦わなくていい村になった  作者: 慈架太子


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97:防衛連携テスト

朝の空気は、磨き上げた刃のように冷たく、そして澄んでいた。

だが、この日の村に漂っていたのは、いつもの活気ある喧騒ではない。肌を刺すような、ぴりついた緊張感。


「よおし、野郎ども! 今朝の村は、まるで弦を限界まで引き絞った大弓みたいじゃないか。空気を吸い込むだけで肺がシャキッとするぜ!」


カイゼルは広場の中央で、いつものように底抜けに明るい声を響かせた。

だが、その視線の先にある「防衛線」を見る目は、最高にゴキゲンで、かつ最高に冷徹な鑑定士のそれだった。


「今日は特別な『身体検査』の日だ! 設計図の上じゃ完璧だが、実戦で歯車が噛み合わなきゃただのガラクタだからな。――エルダ軍曹、ステージの準備は万端か?」


「……ああ。甘えは一切捨てさせた。これより、防衛連携テストを開始する」


エルダ・ヴァルグレイが一歩前に出る。その銀髪が朝陽を弾き、周囲の空気を一瞬で戦場へと塗り替えた。カイゼルは満足げに頷き、一歩下がる。


「ははっ! 現場の指揮は全部任せたぜ、軍曹殿! 俺は特等席から、お前らが作り出す『鉄壁のアンサンブル』を堪能させてもらうよ!」


### 1:見えざる「目」と、潜む「牙」

「配置開始」

エルダの短く鋭い号令。その瞬間、村人たちの動きが加速した。


音もなく森へ消えていくのは、獣人の索敵班だ。彼らの耳と鼻は、もはや村の周囲数キロを網羅する「生きたレーダー」と化している。

「索敵班、展開完了。……ネズミ一匹通さねえぜ」

ガルムの低い声が風に乗って届く。


一方で、ドワーフたちは地面を叩き、鼻歌混じりに最凶の「おもてなし」を仕込んでいた。

「ここに落とし穴、こっちに拘束陣だ。……カイゼル、この仕掛け、踏んだら泣きを見るぞ!」


「ははっ! 頼もしいねえ、バルド! ――さて、人族の射撃班も準備はいいかい?」


「構えろ。……撃つな。まだだ」

エルダの指示で、民兵たちが魔導式バレット銃をぴたりと静止させる。緊張で指が震えるのを、隣のドワーフが肩を叩いて落ち着かせる。


「いい配置ね、レイナ。……これ、外の商人たちに見せたら、この村の『通行権』だけで金貨が山を成すわよ」

マリナが扇子を揺らし、不敵に笑う。


「ふふ、まずは『商品価値』の証明からね。……来るわよ」


### 2:連動する「三位一体」の暴力

「来る。三体、速度重視の獣型だ。北北西から侵入」

ガルムの報告が飛ぶ。


「左の誘導路へ追い込め。ドワーフ、罠の準備を。射撃班、照準を固定しろ」

エルダの采配には、一滴の迷いもなかった。


森の奥で枝が折れる音が響き、魔物が姿を現す。一直線に村を狙う獣たち。だが、彼らが踏み込んだのは、カイゼルが設計し、ドワーフが構築した「死の廊下」だった。


ズドンッ――!

「一体、落とし穴にドロップ! ざまあみろ!」

ドワーフのバルドが叫ぶ。


「次、二体目! 撃て!」

乾いた音が連鎖する。ストーンバレットが魔物の体勢を崩し、続けざまにウィンドバレットがその脚を切り裂く。最後にソイルバレットが地面を隆起させ、魔物を完全に固定ホールドした。


「全弾命中! 拘束完了!」

「……やるじゃない、野郎ども!」

カイゼルが陽気に口笛を吹く。


だが、三体目が盲点を突いて右翼へ回り込んだ。人族の射撃班との距離が近すぎる!

「右だ! 距離が近い、撃てない!」


その焦燥を、銀色の閃光が断ち切った。

エルダが音もなく踏み込み、一閃。

魔物の動きが止まり、そのまま音もなく崩れ落ちる。


「……終わりだ。一人でやるなと言ったはずだぞ。役割を繋げ」

エルダの静かな、しかし確信に満ちた声が広場に響いた。


### 3:守れる村、売れる平和

「ははっ! 完璧だ! 獣人が見つけ、ドワーフが足を止め、人族が仕留め、エルダが穴を埋める。……これこそが俺の描いた『繋がる防衛』の正解だぜ!」


カイゼルが歩み寄り、泥まみれの民兵たちの肩を叩いて回る。

「見てみな、野郎ども! お前らは今、自分たちの手で『絶対の安心』を作り出したんだ。自分を誇れよ!」


「……勝った。俺たちで、本当に守りきったんだ……」

人族の男が震える手で銃を握りしめ、隣の獣人と顔を見合わせて笑った。


「価値、確定ね」

マリナが満足げに頷く。

「守れる村は、それだけで最高級の商品。レイナ、これならどんな荷車も安心して呼び込めるわね」


「ええ。流れるための『安全』が手に入ったわ。……忙しくなるわよ、カイゼル」


夕暮れ時。村には戦勝祝いの、最高にいい匂いが漂っていた。

「今日はドワーフの秘蔵の酒も出すぞ!」「肉だ肉だ!」

種族の垣根を超えた笑い声。そこにはもう、かつての「差別」も「不信」も残っていない。


「……強くなってる。人は脆いが、仕組みは不滅だ」

エルダが焚き火の端で、小さく、誰にも聞こえない声で呟いた。


「ははっ! 聞こえてるぜ、軍曹殿! 仕組みを回すのは結局『人』の熱量なんだ。お前が育てたこいつらは、もう誰にも負けやしねえよ!」


カイゼルの陽気な笑い声が、夜の帳を明るく照らす。

守る者が繋がり、仕組みが牙を持ち、村は盤石なる要塞へと昇華した。


止まらない物語は、防衛成功という名の「自信」を燃料にして、さらなる未踏の未来へと加速し続けていた。

「未来の設計図は、今や鉄壁の盾に守られて、最高にキラキラ輝いてるぜ!」

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