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戦わずに全部潰したら、誰も戦わなくていい村になった  作者: 慈架太子


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96/130

96:物流接続

朝は早い。

だが、この村の朝は、単に鶏の声で目が覚めるようなのんびりとしたものではなかった。

朝日が地平線をなぞる頃には、すでに村全体の鼓動が一定のリズムを刻み始めている。


「おーっと! 今朝の村は、まるで高級時計のゼンマイを一気に巻き上げたみたいじゃないか! 全員の動き出しがピッタリ揃ってて、見てるこっちの背筋が伸びるぜ!」


カイゼルは広場の中心で、いつものように底抜けに明るい声を響かせた。

視線の先には、収穫、選別、加工。それぞれの班が、まるで一つの生き物のように流動的な動きを見せている。


「いいわね、このピリッとした空気。……カイゼル、今日からこの熱量を、内側で腐らせずに『外』へ解き放つわよ」


物流の女王、レイナ・ヴェルシアが軽く伸びをしながら現れた。その瞳はすでに、村のゲートの先にある「未知の市場」を射抜いている。


「ははっ! 待ってました! 今日から俺たちの価値を、世界中にデリバリーするってわけだな。――レイナ、指揮は全部お前に任せるぜ!」


「ええ、任されたわ。……いい、野郎ども! これだけは肝に銘じなさい。――今日からこの村のルールはたった一つ。絶対に出荷を『止めない』ことよ!」


### 1:滞留は「死」と同義なり

レイナの指示は、これまでの村の「丁寧な作業」に激震を走らせた。

「完璧なんて求めて手が止まるくらいなら、八割の出来で流しなさい! 止まった瞬間に、価値はただのゴミに変わるわよ!」


「ははっ! レイナ節が炸裂してるな! ――いいか、野郎ども! 失敗は後で俺が魔法でリカバーしてやる。だから今は、自分の持ち場を川の流れみたいにスムーズに通すことだけ考えろ!」


カイゼルの陽気な煽りを受け、現場の空気が変わる。

エルフが流れるような手つきで選別し、ドワーフが流れ作業の中で梱包を仕上げ、獣人がそれを矢のような速さで集積場へ運ぶ。

「ここで止めない!」「迷ったら流せ、後で戻すわよ!」

レイナの鋭い声が飛ぶたびに、物流という名の「血管」が太く、逞しく脈動していく。


「……早いな。現場の判断速度が、数時間前とは別物だ」

高台から全体を見下ろしていたエルダが、感心したように、しかし危うさを見逃さぬ目で呟いた。


### 2:リスク分散という名の「合理」

午後。出荷の準備が整う。

並べられた荷車を見て、人族の若者が首を傾げた。

「なあ、なんで全部まとめて一台のデカい馬車に乗せないんだ? 分散させると効率が悪くないか?」


「ははっ! いい質問だぜ、相棒! ――レイナ、教えてやってくれよ。商売の『影』の歩き方をさ!」


「単純よ。全部一箇所に固めて、もし途中で魔物や野党に襲われたらどうするの? ――全滅ロストよ」

レイナは不敵に笑い、荷車を三つのグループに分けた。

「分散すれば、一つが潰れても半分以上は残る。……商売は『勝ち続ける』ことじゃない。『負け切らない』ことなのよ」


「……悪くない判断だ」

エルダが前に出る。

「護衛は最小限でいい。速さを殺さず、かつ異常を即座に知らせる『目』を配置する。……獣人、頼めるか?」

「ああ。一粒の荷も、無駄にはさせねえぜ」


### 3:世界へ繋がる「最初の一歩」

夕方。村のゲートが開いた。

積まれたのは、エルフの知恵、ドワーフの技術、獣人の勇気、そして人族の汗が結晶となった「価値」そのものだ。


「よおし、野郎ども! 出陣の時間だぜ! 今日、この村はただの安息の地から、世界を回す『ハブ』へと進化するんだ! 誇れよ、お前らが送り出すその一つひとつが、俺たちの伝説の第一章なんだからな!」


カイゼルの陽気な笑い声に見送られ、最初の出荷部隊が村を出ていく。


「流れは繋がったわね、カイゼル」

マリナが隣で、算盤を弾くような瞳で微笑む。


「ああ。……止まらねえぜ、もう。外へ、内へ。この循環がデカくなればなるほど、俺たちの村は誰にも壊せない『概念』になるんだ!」


夜。村にはいつものように明るい灯りが灯っていたが、そこには「自分たちの成果が外へ羽ばたいた」という、新しい誇りが満ちていた。


「強くなってるな……俺じゃなく、この仕組みそのものが」

カイゼルは夜空を見上げ、満足げに目を細めた。


止まらない物語は、物流接続という名の「血管」を手に入れ、外の世界という大海原へ向かって、圧倒的な加速を始めていた。

「未来の設計図は、今や世界地図の上にまで広がってるぜ!」

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