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戦わずに全部潰したら、誰も戦わなくていい村になった  作者: 慈架太子


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113/130

113:布教開始 「異端の村」として攻撃。

最初は、ただの噂だった。


「……あの村はおかしい」


「神を信じていないらしい」


「秩序を乱している」


そんな声が、ゆっくりと広がる。


意図的に。


確実に。


マリナが報告書を机に置いた。


「来たわね。次の手」


カイゼルは目を通す。


宗教組織。


各地に影響力を持つ巨大な存在。


「布教……いや、扇動か」


「ええ」


マリナが頷く。


「敵は武力じゃない」


「思想」


レイナが苦笑する。


「一番面倒なやつね」


エルダは腕を組んだまま言う。


「切れば終わりじゃない」


その通りだ。


「むしろ増える」


カイゼルは静かに立ち上がる。


「対処する」


それだけ。


いつも通り。


村は変わらない。


畑では作物が育ち、狩猟隊は森へ向かい、料理人は鍋を振るう。


笑い声。


生活音。


穏やかな日常。


そこへ――


「神の導きを受けよ!」


声が響いた。


外から来た一団。


白い法衣。


象徴的な紋章。


明らかに“外”。


村人たちは戸惑う。


「何だ……?」


「旅の人?」


違う。


「この村は異端である!」


宣言。


空気が変わる。


「神を否定し、秩序を乱し、正しき道を外れた者たちよ!」


一方的な断罪。


エルダが前に出る。


「……言いたいことはそれだけか」


冷たい声。


だが剣は抜かない。


相手は武装していない。


「我らは導く者だ!」


男は胸を張る。


「正しき信仰へと――」


カイゼルが歩み出る。


止めない。


ただ聞く。


それだけ。


男が続ける。


「このままでは破滅する!救いが必要だ!」


一拍。


そして――


「証明しろ」


カイゼルが言った。


静かに。


「……何?」


男が眉をひそめる。


「救いだ」


「それがあるなら、見せろ」


単純な要求。


だが本質。


「我らは教えを――」


「違う」


カイゼルは遮る。


「結果だ」


言葉ではない。


現実。


「この村は回っている」


指し示す。


畑。


市場。


人の流れ。


「食べている」


「働いている」


「笑っている」


否定できない。


「それ以上の“救い”を出せ」


沈黙。


男は言葉を失う。


マリナが横から言う。


「ちなみに」


笑顔で。


「この村、税も取られてないし、借金もないわよ?」


レイナが続く。


「病人は減ってる」


「流通は安定」


「飢えもない」


完全な現実。


「で?」


マリナが首を傾げる。


「何を救うの?」


一撃だった。


言葉ではなく。


構造で殴る。


男は顔を歪める。


「……だが!」


「異端は異端だ!」


それしかない。


理由がない。


エルダが一歩前に出る。


「なら帰れ」


冷たい声。


「ここは守る」


それだけ。


だが――


相手は引かない。


「いずれ分かる!」


「この村は滅びる!」


捨て台詞。


そして去る。


静けさが戻る。


村人たちはざわつく。


「大丈夫か……?」


「何だったんだ……?」


不安。


当然だ。


カイゼルは振り返る。


「問題ない」


一言。


それでいい。


レイナが動く。


「情報回すわ」


マリナが頷く。


「対外対応は任せて」


エルダが言う。


「警戒強化」


全員が動く。


自然に。


翌日。


噂は広がる。


「異端の村」


「危険な集団」


だが――


同時に。


「豊かな村」


「安全な村」


「飢えない場所」


もう一つの情報が広がる。


止められない。


レイナが笑う。


「流れは止まらない」


マリナが補足する。


「むしろ増幅する」


なぜか。


「見た奴が分かるから」


現地に来た者。


商人。


旅人。


全員が言う。


「普通に良い村」


それで終わり。


宗教側の言葉は、現実に負ける。


数日後。


再び使者が来る。


今度は少人数。


態度も違う。


「……話がしたい」


マリナが笑う。


「最初からそうしなさいよ」


席が用意される。


食事が出る。


普通の対応。


料理人が腕を振るう。


「どうぞ」


使者は戸惑う。


「……いいのか?」


「客だからな」


カイゼルが言う。


それだけ。


食べる。


驚く。


美味い。


温かい。


静かに崩れる。


「……なぜだ」


使者が呟く。


「なぜ敵に優しくする」


カイゼルは答える。


「敵じゃない」


一拍。


「ただの来訪者だ」


線引きが違う。


世界が違う。


使者は黙る。


エルダが見ている。


何も言わない。


だが理解している。


これが強さだと。


マリナが最後に言う。


「帰って伝えなさい」


笑顔で。


「ここは壊せない」


レイナが続く。


「止まらないから」


使者は何も言えない。


帰るしかない。


夜。


村はいつも通り。


笑い声。


灯り。


変わらない日常。


だが――


一つだけ変わった。


外からの見え方。


「異端の村」


それはもう意味を持たない。


代わりに広がる。


「止まらない村」


カイゼルは静かに空を見る。


「来るな」


戦いは望まない。


だが――


来るなら。


「守る」


エルダが隣に立つ。


「任せろ」


マリナが笑う。


「勝つわよ」


レイナが肩をすくめる。


「回すだけ」


答えは出ている。


思想では負けない。


構造で勝つ。


それがこの村。


明るく。


静かに。


そして確実に。


世界の“常識”を壊していく。


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