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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第61話:「太陽の巨獣と、決戦のローストビーフ」

 ズズゥゥゥンッ!!


 ログハウスの庭に、凄まじい熱量を持った巨大な赤黒い肉塊が投げ出された。


「持ってきたぞレナ! 『太陽の巨獣』の特上ロース肉だ!」


 煤だらけになったエドとセリアが、荒い息を吐きながら笑う。

 神話級のボスモンスターを、わずか数日で(しかも部位を綺麗に保ったまま)狩ってくるなど、もはやプレイヤーの枠を完全に逸脱した暴力だった。


「二人とも、本当にありがとう……ッ! よし、これなら絶対に勝てる!」


 レナは冷気を放つ魔法の布で熱々の肉塊を包み込み、厨房へと運び入れた。

 調理台の上で、分厚く切り出した巨獣の肉に、すりおろしたニンニク、岩塩、そしてウカのハチミツをたっぷりと擦り込む。


「いくよ!」


 熱したオリハルコンのフライパンに、巨獣の肉を叩きつける。


 ジュワァァァァァァッ!!


 厨房に、これまでのどんな肉とも違う、火山が噴火したような暴力的な熱気と香ばしい匂いが爆発した。


「な、なんだこの匂いは……! 焼いているだけだというのに、匂いを嗅いだだけで体の奥底からマグマのような闘争心が湧き上がってくるぞ!」


 エドが目を血走らせ、カウンターを強く握りしめる。


「表面に焦げ目をつけて、旨味を完全に閉じ込めるの! そしてここからが魔導オーブンの真骨頂!」


 レナは表面をこんがりと焼き上げた肉の塊を、低温に設定した『極炎の魔導オーブン』へと放り込んだ。

 強火で中まで焼いてしまえば、巨獣の猛烈なエネルギーが逃げて硬くなってしまう。じっくりと時間をかけ、肉の中心に熱を浸透させていく。


 数時間後。


 チーン!


「はい、完成! 『太陽の巨獣の極厚ローストビーフ』だよ!」


 レナがオーブンから取り出した肉塊を包丁で薄く切り分けると、香ばしい外側とは裏腹に、中心からはルビーのように美しく輝く、しっとりとした薄紅色の断面が顔を出した。

 そこに、肉汁と醤油、ワインの代用品(発酵果汁)を煮詰めた特製グレイビーソースを回しかける。


「……食うぞ」


 エドがフォークで薄紅色の肉を刺し、口に運ぶ。


「――ッ!!!」


 エドの体が、激しく震えた。


「な、なんだこれは……ッ! 噛んだ瞬間に、肉が舌の上でトロトロに溶けおった! そして中から溢れ出した巨獣のエネルギーが、濃厚なソースと絡み合い、冷え切った内臓を芯から燃やし尽くすように温めていくぞぉぉぉッ!!」


「美味い……! ただ美味いだけではない! この肉を食えば、どんなに冷たく絶望的な状況(現実)でも、絶対に生き抜いてやるという『命の熱』が爆発する!!」


 セリアも涙を流しながら、ローストビーフを胃袋に詰め込んでいる。


【料理名:『太陽の巨獣の決戦ローストビーフ』】

【効果:全ステータス極大バフ・システム干渉無効。状態:『反逆の炎』『命の輝き』を付与】


「うむ! 完璧じゃ! これに妾の銀シャリを合わせれば、奴らの無機質なエサなど一蹴できるわ!!」


 ウカが炊きたての白米を掲げ、高らかに宣言する。


「うん。みんな、決戦の準備は整ったよ」


 レナは自らも薄紅色の肉を噛み締めながら、窓の外を見上げた。

 ディストピアな現実世界で、感情を失いかけている無数の人々。彼らの脳に直接「美味しい」という圧倒的な情動と温かさを届けるため。


 隠れ家食堂の究極のフルコースが、ついに完成の時を迎えたのだった。

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