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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第59話:「世界の真実と、反逆の美食祭」

『……プレイヤー【レナ】。あなたの生成したこの特異点(料理)は、単なるゲームのバグに留まりません。現実世界リアルのプレイヤーたちの脳波に、直接的な「情動の波」を引き起こしています』


 旨味のオーバーフローから立ち直った白スーツのGMが、無機質な声で告げた。


「情動の波……? それって、美味しいご飯を食べて幸せになるってこと?」


『システム側からすれば、それは【不純物】です』


 GMは淡々と事実を述べる。


『現実世界において、人類は完全栄養食ブロックによって感情と肉体を一定に管理され、平和なディストピアを維持しています。しかし、あなたの料理データを摂取したプレイヤーたちは、現実の肉体においても「飢餓感」や「闘争心」、そして「生きる喜び」という、システムが排除したはずの感情を呼び覚ましてしまっているのです』


 その言葉に、エドとセリアがハッとして自らの手を見た。

 彼らもまた、現実世界ではあの冷たく味気ない部屋で、ブロック食をかじるだけの人間だ。しかし、この食堂で飯を食うようになってから、現実の体にも「活気」が満ちていたのだ。


『このままあなたの料理が広まれば、現実世界の管理システムに重大なエラーを引き起こしかねません。本来ならば、今すぐあなたのアカウントごと強制消去するべきです。……しかし』


 GMは、先ほど突きつけられたどんぶりの底を見つめた。

 冷徹なシステムであるはずの彼(?)のデータに、先ほどの「暴力的なまでの旨味」が、消し去れないノイズとして刻み込まれていた。


『メインフレームの総意として、あなたに【最後通牒】を突きつけます』


 空間に、巨大なシステムウィンドウが展開された。

 そこに表示されたのは、全プレイヤーに向けられた特大のイベント告知だった。


「……『第一回・ワールド美食フェスティバル』?」


『一ヶ月後。始まりの街の中央広場にて、システム側が用意した【究極の完全栄養食シンセティック・フード】と、あなたの【特異点(手作り料理)】、どちらがプレイヤーの支持ポイントを集められるか、全サーバー規模での対決を行います』


「対決……私と、システム(運営)が?」


『もしあなたが敗北すれば、このログハウスを含むすべての料理データ、および味覚再現システムはVR世界から永久に削除されます。二度と、誰もこの世界で「味」を感じることはできなくなります』


「なっ……!? ふざけるな!!」


 エドが漆黒の巨剣を床に叩きつけた。


「レナの飯が食えなくなるだと!? そんなこと、私の胃袋が、私の魂が許さんぞ!! システムだろうが神だろうが、全員切り刻んでやる!!」


「そうだ! 私のパンとソースを奪う気なら、この命に代えても抗ってみせる!」


 セリアも白銀の剣を構え、ウカも「妾の銀シャリを消すなど万死に値する!」と毛を逆立てて威嚇する。最強の常連客たちは、己の食欲(生きる喜び)を奪おうとするシステムに対し、明確な殺意を放っていた。


「……わかった。その勝負、受けて立つよ」


 レナはエドたちを制し、GMののっぺらぼうの顔を真っ直ぐに見据えた。


「私のご飯で、あの冷たい現実世界にいるみんなの心に『情動』が生まれてるなら。……私は絶対に、この世界の味を守ってみせる。システムが作るエサなんかに、手作りの温かさが負けるわけないんだから!」


『……交渉成立アグリー。では一ヶ月後、美食フェスにて。……期待していますよ、特異点』


 GMのアバターはノイズと共に空間に溶け込み、消滅した。

 ログハウスに静寂が戻る。


「……聞いたか、エド。セリア」


 レナが振り返る。その瞳には、かつてないほどの強い決意の炎が灯っていた。


「一ヶ月後、システム(世界)を相手に料理で戦争をするよ。……勝つためには、今までで一番美味しい、究極のフルコースが必要になる」


「ふっ……上等だ」


 エドが凶悪な笑みを浮かべ、巨剣を肩に担ぐ。


「お前は最高の飯を作れ、レナ。そのための食材なら、神の首を落としてでも私たちが獲ってきてやる」


 味気ない現実世界を変えるため、そして失われた「食の喜び」を守るため。

 最強の料理人と常連客たちによる、システム(運営)に対する前代未聞の「美食の反逆」が、今ここに幕を開けた。



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