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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第57話:「警告音(アラート)と、現れた特権階級(システム)」

「ふぅ……。エドもセリアも、どんぶりの底まで舐め回す勢いだったね」


ログハウスの厨房。

レナは空になったどんぶりを洗いながら、カウンターで幸せそうに腹を出して眠っている最強の二人と、狐姿で丸まっているウカを見て微笑んだ。


この『夢の食堂』には、もう足りないものはない。

最高の仲間、最高の設備、そしてどんな味でも再現できる食材。


(……ずっと、このまま美味しいご飯を作り続けられたらいいな)


レナがそう願った、その瞬間だった。


『――警告アラート警告アラート。該当エリアにて、規定値を超える異常なステータス変動バグを検知』


「……えっ?」


空気が、凍りついた。

ログハウスの中にいる全員の視界を覆い尽くすように、真っ赤な『システムウィンドウ』が空中に無数に出現したのだ。


「なんだ、この赤い板は……ッ!? 私の剣が、すり抜けるぞ!?」


飛び起きたセリアが白銀の剣を振るうが、システムが作り出したホログラムには物理攻撃が一切干渉しない。


『異常データの発生源を特定。対象オブジェクト【ログハウス・厨房設備】および、未登録の消耗アイテム群。……これより、データ強制削除デリートを実行します』


無機質な声と共に、空間がぐにゃりと歪み、ログハウスの中心に「真っ白なスーツを着た、のっぺらぼうのアバター」が降り立った。

プレイヤーではない。このVR世界の根幹を管理する、運営の『ゲームマスター(GM)』だ。


「貴様、レナの店で何をする気だ……ッ! 消え失せろ!!」


エドが咆哮と共に漆黒の巨剣を振り下ろす。

大地をも割るその一撃は、のっぺらぼうのアバターの頭頂部へ直撃した。


――キィィィィンッ!!


「な……ッ!?」


エドの巨剣が、見えないシステムプロテクトに弾き返された。

HPゲージすら表示されない。この世界において、彼らは「神」に等しい存在なのだ。


『NPC【エドワード】の敵対行動を確認。……権限コマンド実行。対象の座標を固定フリーズします』


白スーツのGMが指を鳴らした瞬間。

エドとセリアの体が、不自然なポーズのままピタリと静止した。瞬きすらできない。システムによって行動を完全にロックされたのだ。


「エド! セリア! ウカちゃんまで……ッ!」


ウカもまた、空中で跳躍した姿勢のまま凍りついている。

動けるのは、プレイヤーであるレナただ一人。


『プレイヤー【レナ】。あなたのアカウントは、現在重大な規約違反の疑いがあります。あなたが生成したアイテム(料理)は、システムが想定した限界バフ数値を大きく逸脱しています。これはゲームバランスを崩壊させる違法データです』


GMがレナへ向き直り、冷徹な機械音で告げた。


「違法データなんかじゃない! 私はただ、美味しいご飯を工夫して作ってただけだよ!」


『言い訳は不要です。ただちにこの異常な設備(魔導厨房)と、すべての食品データを削除します』


GMが手をかざすと、レナが苦労して手に入れたオリハルコンの調理台や魔導オーブンが、ノイズに包まれ、半透明に消えかかり始めた。


「やめて……ッ! そこは、私の大切な場所なの! みんなの笑顔がある場所なの!!」


レナは消えかかる調理台の前に立ち塞がった。

現実世界は、味気ないディストピア。ここで料理を作ることだけが、彼女の生きる希望なのだ。


『……退きなさい。あなたのアカウントごと凍結されたいのですか』


「退かないッ! ……システムだか何だか知らないけど、私の料理を『ただのデータ』扱いしないで! もし消すって言うなら……私の作ったご飯を一口でも食べてからにしなさいよ!!」


レナは涙目で睨みつけ、寸胴鍋に残っていた『地龍の豚骨スープ』をお玉ですくい、GMのアバターに突きつけた。


エドたちの物理的な暴力が通じない、絶対的なシステム管理者。

この冷徹な存在に対し、レナはたった一人、自らの『料理』だけを武器にして立ち向かうのだった。

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