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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第55話:「前編:黄金のちぢれ麺と、地龍の背骨」

「うーん……やっぱり、お醤油と出汁があるなら、アレを作らないと嘘だよね」


 ログハウスの厨房で、レナが腕を組んで唸っていた。


「アレとはなんだ。また新しい肉の調理法か?」


 カウンターで巨剣の手入れをしていたエドが、ピクリと反応する。


「ううん、お肉も使うけど……主役は『スープ』と『麺』! 私がずっと食べたかった、究極の麺料理『ラーメン』を作りたいの!」


「ラーメン……? 以前作った、うどんのようなものか?」


 セリアが首を傾げる。


「うどんとは全然違うよ! もっと細くて、黄色くて、強烈なコシと風味がある麺! そして、獣の骨を何十時間も煮込んで極限まで旨味を抽出した、暴力的なまでに濃厚なスープが必要なんだよ!」


 レナの熱弁に、エドの目がギラリと光った。


「獣の骨を煮込むだと……? 面白い。その暴力的なスープとやらを味わうためなら、どんな猛獣の骨でもへし折ってきてやる。最高峰の素材はなんだ?」


「えっと……普通の豚骨でもいいんだけど、どうせなら一番強くて、旨味が詰まってそうな骨がいいな」


「ならば決まりだ。セリア、行くぞ」


 エドが立ち上がり、漆黒の外套を翻す。


「おい、まさか『地龍アース・ドラゴン』の巣へ行く気か!? あそこは推奨レベル80超えの最難関ダンジョンだぞ!」

「だからどうした。究極のスープのためだ」


 エドとセリアは、呆れるマーカスたちを置き去りにして、究極の出汁(骨)を求めてログハウスを飛び出していった。


「さてと、二人が骨を獲ってきてくれる間に、私は『麺』の仕込みだね!」


 レナは気合いを入れ直し、マーカスが仕入れてきた『太陽の黄金麦(小麦粉)』を取り出した。

 ラーメンの麺をうどんと分ける決定的な要素、それは『かんすい(アルカリ塩水溶液)』だ。レナは森の特定の樹木から採取した灰を水に溶かし、自家製のアルカリ水を作り出していた。


 小麦粉にその水を少しずつ加え、体重をかけて力強く捏ねていく。


「ふははは! レナよ、なんという力強さじゃ! その生地から、凄まじい反発力コシを感じるぞ!」


 ウカが厨房のカウンターから身を乗り出して見学している。


「でしょ? このアルカリ水のおかげで、麺が黄色くなって、独特の風味と強烈なコシが生まれるの。これを細く切って、手で揉んで『ちぢれ麺』にするんだよ!」


 レナが生地を薄く延ばし、包丁で等間隔に切り分け、絶妙な力加減で揉み込むと、見事な黄色いちぢれ麺が完成した。


 それから数時間後。


 ズズゥゥゥンッ!!


 ログハウスの庭に、地響きと共に巨大な物体が投げ出された。


「おいレナ! 獲ってきたぞ。地龍アース・ドラゴンの背骨と大腿骨だ!」


 全身を返り血と泥で汚したエドとセリアが、息ひとつ乱さずに立っていた。

 その後ろには、トラックほどもある巨大なドラゴンの骨が転がっている。


「すごい……! さすが二人とも! よーし、これで最強のスープを作るよ!」


 レナは地龍の巨大な骨をハンマーで砕いて髄を露出させ、特大の寸胴鍋に放り込んだ。そこにネギの代わりの香草と、生姜をたっぷりと加え、ゴルドが作った魔導コンロの最大火力で一気に煮立たせる。


 ゴォォォォォォッ!!


 数時間後、鍋の中は白濁し、地龍の骨髄から溶け出した暴力的な旨味の成分が、とてつもない匂いとなって厨房に充満し始めた。


「な、なんだこの匂いは……ッ!? 骨を煮ただけで、肉を焼くよりも遥かに濃厚で野蛮な匂いがするぞ!?」

「くっ……早く! 早くそのスープを飲ませろレナ!!」


 エドとセリアが、寸胴鍋の前で血走った目をしている。


「まだまだ! ここからさらに煮込んで、特製の『醤油ダレ』と、トッピングの『極厚チャーシュー』を合わせないと完成しないんだから! 今日は徹夜で煮込むよ!」


 極上の麺と、地龍の骨から立ち昇る凶悪なスープの匂い。

 エドたちはその暴力的な香りに一晩中拷問されながら、究極の一杯の完成を待ちわびるのだった。

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