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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第54話:「星屑の林檎と、禁断のアップルパイ」

「よし! それじゃあ、エルフさんたちから貰った素材で、とびっきりのデザートを作ってあげるね!」


 レナはオリハルコンの調理台に、夜空の星のようにキラキラと内側から輝く『星クズ林檎』を並べた。

 そのまま生で食べても極上の甘さを持つ幻の果実。エルフの青年が「我らの森の至宝」と自慢げに語っていたものだ。


「さあ、調理開始!」


 レナは包丁を手に取り、その至宝の林檎を迷いなく八等分にザクザクと切り分けた。


「ああっ!? レナ様、なんということを! そのまま食べるのが一番美しい果実を、なぜ刃物で……ッ!」


 エルフの青年が厨房の外から悲鳴を上げるが、レナは止まらない。

 切り分けた林檎を鍋に放り込み、タウロス乳のバターと、黄金に輝く『世界樹の蜜』をたっぷりと注ぎ込んで火にかけた。


 ジュワァァァァァッ……。


「ひぃぃッ! 星クズ林檎が、火あぶりにされているぅぅッ!」


 エルフたちが絶望の声を上げる中、林檎は熱と蜜によってトロトロの黄金色へと煮崩れていく。

 レナは並行して、小麦粉とバターを何層にも折り重ねた『パイ生地』を錬成し、その中央に煮詰めた熱々の林檎をたっぷりと詰め込んだ。

 上から網目状に生地を被せ、表面にコカトリスの卵黄をハケで塗り、『極炎の魔導オーブン』へと放り込む。


「これでよし。あとは焼けるのを待つだけだよ」


「……おのれ人間。我らの神聖な果実を、あのようにグチャグチャに煮込み、あまつさえ小麦粉の牢獄に閉じ込めて炎で焼くなど……ただの冒涜ではないかッ!」


 エルフの青年が涙目で抗議する。

 しかし数十分後。


 チーン!


 オーブンの扉を開けた瞬間、その抗議は完全に沈黙した。


「はい、お待たせ! 『星クズ林檎と世界樹の蜜の極上アップルパイ』だよ!」


 厨房中に爆発的に広がったのは、極限まで熱されたバターの暴力的な香ばしさと、濃縮された林檎の甘酸っぱい匂い。

 キツネ色にこんがりと焼き上がったパイ生地の隙間からは、黄金色の林檎の蜜がグツグツと音を立てて溢れ出している。


「ま、待ってね。これに、冷暗庫にしまっておいた『フロスト・カウの特濃アイスクリーム』を乗せて……」


 熱々のアップルパイの上に、真っ白で冷たいアイスが丸く乗せられる。

 熱と冷気がぶつかり合い、アイスの底がトロリと溶けてパイ生地に染み込んでいく。


「さあ、食べてみて!」


「……」


 エルフの青年はもはや言葉を発することなく、震える手でフォーク(マーカスが買ってきた)を握り、アイスとパイを一緒にすくって口に運んだ。


 ザクッ! トロォォォ……。


「――ッ!!?」


 エルフの青年の瞳から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。


「な、なんということをしてくれたのだ……ッ! サクサクの生地の食感の直後、中から煮詰められた星クズ林檎の狂気的なまでの甘みと酸味が、熱帯のスコールのように口内を蹂躙する! そして……この上に乗った冷たい白い甘味アイスが、熱々の林檎と絡み合い、計算し尽くされた温度差で脳を完全にバグらせてくるぞぉぉぉッ!!」


「美味い……! 美味すぎるッ! 生で食うのが至高だと思っていた我々の常識は、ただの怠慢だったのだ! 神聖なる果実は、この暴力的なまでのカロリーと熱によって、真の姿を現したのだぁぁぁッ!!」


 エルフたちは床に這いつくばりながら、顔をアイスと林檎の蜜まみれにして狂喜乱舞している。


「うむ! この熱さと冷たさの同居! デザートでありながら、恐ろしいほどの破壊力を持ったカロリーの化け物じゃな!」


 ウカも狐耳を限界までピンと立て、尻尾を振り回しながらアップルパイを頬張っている。エドやセリアも無言でフォークを高速回転させていた。


【料理名:『星クズ林檎の絶品アップルパイ・特濃アイス添え』】

【効果:MP限界突破。状態:『エルフの堕落』『至福の温度差』を付与】


 神聖な果実をバターと小麦粉で包み、熱と冷気の暴力で殴りつける。

 エルフたちの数百年分の矜持は、この日、熱々のアップルパイによって完膚なきまでに溶かされ、彼らもまた『夢の食堂』の熱狂的な信者(食材の供給源)へと堕ちたのだった。


第7章 完

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