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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第51話:「黄金のパシリと、常識を砕くふかふかのパン」

「レ、レナ様ぁぁぁッ!! お持ちしました! 今週の貢物……もとい、お代でございますぅぅッ!」


 昼下がりのログハウス。

 扉を勢いよく開けて転がり込んできたのは、すっかりパシリの顔が板についた『黄金の天秤』のギルドマスター、マーカスだった。

 彼の背後には、ボロボロになった数人のギルド員が、巨大な麻袋を抱えて倒れ込んでいる。


「いらっしゃいマーカスさん。今回は何を仕入れてきてくれたの?」


「は、はい! 凶悪な魔鳥が巣食う『断崖エリア』の頂上でしか採れない、超激レア素材……『太陽の黄金麦』でございます!」


 マーカスが麻袋を開けると、そこには光を反射してキラキラと輝く、上質な黄金色の小麦が大量に詰まっていた。


「わぁ……! すごい! これなら最高に美味しい『アレ』が焼けるよ! ありがとうマーカスさん!」


「も、もったいなきお言葉! では、本日のまかない(TKG)を……」


 マーカスが床に正座して待機するのを横目に、レナはさっそくオリハルコンの調理台で黄金麦を精製し、純白の小麦粉を作り出した。


「おいレナ。さっき『焼く』と言ったか? まさか、その粉で『パン』を作る気か?」


 カウンターでエドが怪訝そうな顔をする。セリアも露骨に顔をしかめた。


「パンだと……? やめろレナ。あんなものは、遠征中に仕方なく水で流し込む『石の板』だ。お前の美味い飯の後に、なぜ歯が折れるような保存食を食わねばならんのだ」


 この異世界(VRゲーム内の設定)において、パンとは「極限まで水分を飛ばしてカチカチに焼いた保存食」のことだった。エドやセリアにとって、それは食事ではなくただの苦痛なのだ。


「ふふん、まあ見ててよ。私のパンは、石なんかじゃないから!」


 レナは小麦粉に、タウロス乳から作った特製バター、コカトリスの卵、ハチミツ、そしてウカの豊穣魔法で活性化させたイースト菌を混ぜ合わせ、力強く捏ねていく。

 生地が耳たぶのような柔らかさになったところで一次発酵させ、丸く成形して『極炎の魔導オーブン』へと放り込んだ。


 数十分後。


 チーン!


「はい、お待たせ! 『太陽の黄金麦で作った、ふかふか丸パン』だよ!」


 オーブンの扉を開けた瞬間、暴力的なまでのバターの香りと、小麦が焼ける甘く香ばしい匂いが厨房に爆発した。


「なっ……!? なんだこの匂いは……! パンの匂いではないぞ!?」


 エドが驚愕し、セリアが目を丸くする。

 木のお盆に乗せられて出てきたのは、彼らが知る平べったい石の板ではなく、ふっくらと丸く膨らみ、キツネ色に輝く魅惑の塊だった。


「……触ってみて。熱いから気をつけてね」


「ふん、どうせ見た目だけで、石のように硬いのだろう」


 エドが疑り深い目で、黄金の丸パンを指先でツンと突いた。


 フニッ。


「――なッ!?」


 エドの指が、パンの表面に深く沈み込んだ。


「や、柔らかいだと……!? なんだこの弾力は! まるで……まるで雲か、スライムの赤ん坊に触れているようだぞ!!」


「そんな馬鹿な! パンが柔らかいはずが……ッ!」


 セリアも慌てて自分のパンを両手で掴み、真っ二つに割った。


 フワァァァァァ……。


「うおおおっ!? 中から湯気が! そして、信じられないほど白い! スポンジのように空気を含んでいるぞ!」


「いいから、熱いうちに食べてみて!」


 エドとセリアが、震える手でその『ふかふか』を口に運ぶ。


「――ッ!!!」


 二人の瞳孔が、限界まで開いた。


「溶けた……! 噛む必要すらない! 歯を立てた瞬間に、バターの濃厚なコクと麦の甘みが、口の中で爆発して溶けて消えたぞ!!」


「美味えぇぇぇぇッ!! 私が今まで食っていた『パン』と名乗る石は一体なんだったのだ!? このふかふかで甘い物体こそが、真のパン! 武器を持ったまま食える、最強の主食ではないかぁぁぁッ!!」


「うむ! 銀シャリも良いが、このフワフワの麦の塊も悪くないのう! レナ、妾にはあの『果実のジャム』を塗ってくれ!」


 エドとセリアが、過去のトラウマを完全に上書きされ、狂ったように丸パンを胃袋に詰め込んでいく。


【料理名:『太陽のふかふか丸パン』】

【効果:HP・MP完全回復。状態:『常識の破壊』『小麦の虜』を付与】


 最新鋭の魔導オーブンと、黄金の小麦。

 パシリの執念がもたらした極上の素材によって、隠れ家食堂はまた一つ、異世界の常識を美味しく粉砕したのだった。

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