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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第47話:「金の亡者と、絶対不可侵の聖域」

「ふふふーん♪ 今日は何を作ろうかなー」


 お昼前のログハウス。

 レナが鼻歌交じりに仕込みをしていると、突然、店の扉が乱暴に蹴り開けられた。


「ここが、街で噂になっている『隠れ家食堂』か。随分と小汚い小屋ではないか」


 現れたのは、全身をギラギラと光り輝く純金の装備で固めた、恰幅の良い男だった。

 その後ろには、高レベルと一目でわかる重武装の護衛プレイヤーが十人以上も控えている。


「いらっしゃいませ。あの、まだ営業時間前なんですけど……」


 レナが困惑して尋ねると、男は鼻で笑い、カウンターにドサリと重い革袋を投げ捨てた。

 チャリン、と大量の金貨が擦れ合う音が響く。


「俺は始まりの街の最大派閥『黄金の天秤』ギルドマスター、マーカスだ。単刀直入に言おう。お前の料理スキルと、この店の権利を全て俺のギルドに譲渡しろ。ここにいる間抜けな客どもを追い出し、俺たちトップ層のためだけの専属料理人になるなら、この金貨五千枚をくれてやる」


 マーカスは傲慢な笑みを浮かべ、レナを見下ろした。

 彼の目には、レナがただの「運良くレアな料理スキルを手に入れただけの、無力な生産職」にしか見えていない。


「……えっと」


 レナは金貨の袋をチラリと見て、すぐに興味なさそうに視線を外した。


「ごめんなさい、お断りします。ここは私と、私の大切な常連客たちのための食堂だから。お金なら、この間お皿を買った時にいっぱい貰ったし」


「……あぁ?」


 マーカスのこめかみに青筋が浮かぶ。


「おいおい、わかってないようだな。これは交渉ではない、『命令』だ。俺に逆らえば、この森で二度とアイテム採集などできないように、うちのギルド員で完全に封鎖してやるぞ。……おい、お前ら。少しこの店を『模様替え』してやれ」


 マーカスが顎でしゃくると、後ろの護衛たちが下品な笑いを浮かべて武器を抜き、店内に足を踏み入れた。


 その瞬間だった。


「――羽虫が。誰の許可を得て、私の食事処に土足で踏み入った?」

「――五月蝿いぞ、ブタ。レナの飯の匂いが濁る。今すぐその首を刎ねてやる」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!


 ログハウスの奥、エドとセリアの専用個室から、空気が凍りつくような、物理的な質量すら伴う「特級の殺気」が膨れ上がった。


「な、なんだッ!? このプレッシャーは……ッ!?」


 マーカスが悲鳴を上げ、後ずさる。

 二階からゆっくりと降りてきたのは、漆黒の外套を纏う死神と、白銀の鎧を纏う戦乙女。


「う、動けない……! な、なんだコイツら……! ステータスが見えない! レベル測定不能だとぉッ!?」


 護衛のプレイヤーたちが、武器を構えたままガタガタと震え、次々と膝から崩れ落ちていく。

 エドとセリアが放つ威圧感だけで、彼らのHPバーはゴリゴリと削られ、恐怖による『麻痺』状態に陥っていた。


 さらに。


「ふぁぁぁ……騒がしいのう。妾の安眠を妨げる愚か者は、どこのどいつじゃ?」


 パピーの背中に乗った狐耳の神様ウカが、神々しい黄金のオーラを放ちながら厨房から顔を出した。


「か、神霊クラスのNPCまで従えているだと……ッ!? な、なんだここは! ただの飯屋じゃなかったのか!?」


 マーカスはついに腰を抜かし、金貨の袋を放り出して床にへたり込んだ。

 絶対的な武力と、神の加護。

 ここはもはや、一介のプレイヤーギルドごときが手を出していい場所ではなかったのだ。


「あーあ、もう。エドもセリアも、あんまりお店の中で殺気出さないでよ。ほら、お客さんが腰抜かしちゃったじゃない」


 レナは呆れたように息を吐くと、怯え切ったマーカスの前にしゃがみ込み、ふわりと笑った。


「お金で私を買うことはできないけど……『お客さん』としてお金を払ってくれるなら、極上のご飯を作ってあげる。どうする? 食べる?」


「ひっ……! く、食う! 食います! なんでも払いますから、命だけはぁぁぁッ!!」


 こうして、始まりの街を牛耳るトップギルドのマスターは、金と権力ではなく、圧倒的な暴力の前に完全に屈服し、涙と鼻水を流しながら「ただの客」としてカウンター席に座らされるのだった。

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