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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第46話:「雪下の果実と、暖炉の前の背徳的な甘味」

「……美味い。美味いが……さすがに体が凍りそうだ」


 吹雪が吹き荒れる雪原で、エドが空になった木の器を持ちながらガタガタと震えている。

 アイスの暴力的な美味さにテンションが上がっていたものの、マイナス数十度の環境でさらに体を冷やす行為は、最強の騎士のHP(体温)をゴリゴリと削っていた。


「わ、私もだ……剣を握る感覚がなくなってきたぞ……早く帰って、あの温かい『猪汁』を飲ませてくれ……」


 セリアも白銀の鎧を霜で真っ白にしながら、涙目でレナに訴えかける。


「ご、ごめんね! じゃあ急いで帰ろ……」


「待てレナよ! 帰る前に、あそこの雪を掘るのじゃ!」


 レナが撤退を指示しようとしたその時、パピーの背中で丸まっていたウカが、狐耳をピンと立てて雪原の一角を指差した。


「雪の下から、強烈な『甘酸っぱい』匂いがするぞ! あれは絶対にアイスに合う代物じゃ!」


「甘酸っぱい……果物!?」


 レナは寒さも忘れ、ウカが指差した場所の分厚い雪を両手で夢中になって掘り返した。

 すると、凍てつく土の中から、ルビーのように赤く輝く、一口サイズの果実が群生しているのが見つかった。


「これは……『スノー・ベリー(雪下苺)』だ! 雪の中で糖度を極限まで高める、幻の果実!」


 レナは急いでスノー・ベリーをアイテムボックスに突っ込み、凍え死にそうなエドとセリア(そしてミレ)を引き連れて、全力で森の拠点へと帰還した。


 数十分後。


「はぁぁぁぁ……生き返るぅ……」


 ログハウスの厨房。

 勢いよく燃える石窯と暖炉の火の前に陣取り、エドとセリアが毛布にくるまって溶けそうになっていた。


「やっぱり、お家が一番だね。……よし、みんな体が温まったところで、本番だよ!」


 レナは地下の冷暗庫(システム報酬の無限収納)に保存しておいた『フロスト・カウの特濃アイス』を取り出した。

 そして、純白の陶器の小鉢にアイスを丸く盛り付け、その上に、先ほど雪山で採ってきた真っ赤な『スノー・ベリー』をたっぷりと乗せる。


「はい、お待たせ! 『特濃ミルクアイスの雪下苺添え』だよ!」


 暖炉の火がパチパチとはぜる、ポカポカに暖かい部屋。

 そこで差し出された、ひんやりと冷たい極上のデザート。


「……いただく」


 エドが毛布にくるまったまま、スプーンでアイスと苺を一緒にすくい、口に運ぶ。


「――ッ!!!」


 エドの瞳孔が再び開いた。


「な、なんだこれは……! 暖かい部屋で食うアイスが、こんなにも美味いとは……ッ! 冷たさが全く苦にならず、むしろ火照った体を心地よく冷ましてくれる! そしてこの赤い果実の強烈な酸味が、ミルクの濃厚な甘さを無限に引き立てているぞ!!」


「美味い……! 吹雪の中で食った時よりも、遥かに甘く感じる! 暖かい部屋で、冷たい甘味を貪る……なんという背徳的で、贅沢な時間なのだ!!」


 セリアも毛布をはねのけ、夢中でスプーンを動かしている。


「ふははは! 妾の言った通りじゃろう! 苺の酸味とミルクの甘味、まさに神の采配じゃぁぁ!」


 ウカも暖炉の前に寝転がりながら、顔をアイスまみれにして至福の表情を浮かべている。


 現実世界では、気温を一定に保たれた無機質な部屋で、味のしないブロックをかじるだけの生活。

 しかしこの『夢の食堂』では、外の厳しい寒さを乗り越えた先に、暖炉の火の温もりと、冷たくて甘い最高のデザートが待っている。


 レナは自分の分の苺アイスを口に運びながら、甘酸っぱさとミルクの優しさに、心からの笑みをこぼすのだった。


第5章 完

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