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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第45話:「猛吹雪のアイスクリームと、氷の暴君の搾乳」

「ブモォォォォォォッ!!」


 地響きのような咆哮と共に、フロスト・カウが巨大な氷の角を振り立てて突進してくる。

 その圧倒的な質量と冷気は、触れたものを一瞬で氷像に変えるほどの威力を持っていた。


「エド! セリア! 絶対にお腹には当てないでね!!」


 猛吹雪の中で、レナがフライパンを叩きながら悲痛な叫びを上げる。


「チッ、注文の多い雇い主だ。だが……」


 エドが漆黒の巨剣を構え、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。


「……その程度の縛り(ハンデ)がなければ、欠伸が出るからな」


 ズドォォォォォン!!


 エドが正面から突進を受け止め、巨剣の腹でフロスト・カウの頭部を強打する。

 強烈な衝撃波が吹き荒れ、巨大な牛の動きが完全に停止した。その隙を、白銀の閃光が見逃すはずがない。


「遅い! 私の剣は、氷の装甲の隙間すらも縫い裂く!」


 セリアが空中に跳躍し、神速の突きを放つ。

 銀の剣閃はフロスト・カウの装甲の継ぎ目、つまり「ミルクの詰まった腹部」を完璧に避け、四肢の関節だけを正確に貫いた。


「ブ、モォォ……」


 氷の暴君は四肢の力を奪われ、ドスンと雪原に崩れ落ちた。腹部ミルクタンクは無傷のままだ。


「よし! 二人とも完璧! さっそく搾乳するよ!」


 レナが空の木樽を抱えて駆け寄り、フロスト・カウから丁寧に『極寒の特濃ミルク』を絞り出す。

 樽の中に溜まっていくそれは、雪よりも白く、信じられないほど濃厚で甘い香りを放っていた。


「す、すごい……! 普通のミルクの何十倍も濃いよ! これなら最高のアイスができる!」


「レナよ! 氷の調達も済んだぞ! この辺りの万年氷は不純物が一切ない、極上の冷却材じゃ!」


 ウカがパピーに指示を出し、砕けた透明な氷の塊を大量に集めてくる。


「ありがとうウカちゃん! よし、みんな待ってて。ここで作っちゃうから!」


「なっ!? この猛吹雪の中で菓子作りを始めるというのか!?」


 セリアが呆れたように叫ぶが、レナの手はすでに動いていた。

 大きな金属のボウルに、持参したコカトリスの卵黄、『クイーン・ビーの黄金ハチミツ』、そして絞りたての『特濃ミルク』をたっぷりと注ぎ込む。

 それを、万年氷と塩を敷き詰めたさらに大きなボウルの上に乗せた。


「雪山の冷気と万年氷……これを使えば、一瞬で冷やし固められる!」


 レナは猛烈な勢いでボウルの中身をかき混ぜ始めた。

 マイナス数十度の冷気により、濃厚な液状だったミルクと卵黄が、瞬く間に滑らかなクリーム状へと変化していく。

 空気をたっぷりと含ませながら、極限まで冷やし固める。


「はい、完成! 『フロスト・カウの特濃ハチミツアイスクリーム』だよ!」


 レナが差し出した木の器には、黄金色のハチミツがトロリとかけられた、真っ白で丸いアイスクリームが乗っていた。


「……こんな凍えるような場所で、さらに冷たいものを食うなど、正気の沙汰ではないが」


 エドが震える手でスプーン(街で食器と一緒に買っていた)を握り、アイスをすくって口に入れる。


「――ッ!!!」


 エドの瞳孔が限界まで開いた。


「な……なんだこの滑らかさは……ッ! 氷のように冷たいのに、口に入れた瞬間に爆発的なミルクのコクとハチミツの甘さが溶け出してくる! 脳の髄まで痺れるような、暴力的な甘味だぞ!!」


「うおおおっ! 美味い! 寒さなどどうでもよくなるほど美味い! この冷たさが逆に、ミルクの濃厚さを極限まで際立たせている!! レナ、もっとよこせ! 樽ごと全部食うぞ!!」


「ふははは! 妾の言った通りじゃろう! 暖炉の前で食うアイスも良いが、極寒の中で震えながら食うアイスこそが至高なのじゃぁぁ!」


 猛吹雪の雪山で、最強の騎士たちと神様が、器を抱え込んで一心不乱に冷たいアイスを貪り食う。

 その異様な光景は、雪山の過酷な環境すらも完全に凌駕する『甘味の魔力』を証明していた。

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