表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/64

第44話:「熱狂の宴のあとで、氷点下の甘味を求めて」

「ふぅ……みんな、よく食べたねぇ」


 翌朝。

 嵐が去った後のようなログハウスの厨房で、レナは大量の白い器を洗いながら満足げに息をついた。

 昨晩の大宴会で、シャルルをはじめとする常連客たちは、和定食の旨味に完全にノックアウトされ、幸せそうな顔で帰って(あるいは床で寝て)いった。


「あんな騒ぎは二度とご免だがな。私の剣は、羽虫どもの列を整理するためにあるのではない」


 二階から降りてきたセリアが、不機嫌そうに金髪を揺らしながらカウンターに座る。


「まあそう言うな、セリア。レナの飯が美味すぎるのが悪い。……おいレナ、今日の朝飯はなんだ。あの『おにぎり』というやつがまた食いたい」


 エドも欠伸をしながら現れ、さっそく食料を要求してくる。

 すっかりこの食堂の虜になっている最強の二人を見て、レナはふふっと笑った。


「朝ごはんは、昨日の猪汁の残りに卵を落としたおじやだよ。でもね、その前に相談があるの」


「相談? また新しい飯の素材か?」


「うん。昨日の定食の後、どうしても食べたくなったものがあるんだ。……『アイスクリーム』って知ってる?」


「アイス……? 氷の魔物のことか?」


 エドが怪訝な顔をする。

 無理もない。肉と硬いパンしかないこの世界で、氷を使った繊細な菓子など存在するはずもなかった。


「違うよ。甘くて、冷たくて、口の中でとろける最高のお菓子! タウロスの乳でも作れるけど、もっと濃厚な『特別なミルク』と『天然の氷』が欲しいの!」


「なるほど! 妾も賛成じゃ! あの熱い宴の後に、氷結の甘味……想像しただけで尻尾が震えるわ!」


 パピーの背中で寝ていたウカが、狐耳をピンと立てて飛び起きた。


「というわけで、今日は北の『万年雪山エリア』に行くよ! 狙うは、雪山にしか生息しない『フロスト・カウ』の特濃ミルクと、溶けない万年氷!」


「……おいおい、正気か?」


 セリアが頭を抱えた。


「万年雪山は、推奨レベル50以上の超危険地帯だぞ。ブリザードが吹き荒れ、強力な氷属性の魔物がうごめく死地だ。たかが菓子作りのために行く場所ではない」


「えっ、そうなの? でも、エドとセリアなら大丈夫でしょう?」


 レナが首を傾げて、純粋な信頼の眼差しを向ける。


「……ふっ。私を誰だと思っている。氷の魔物など、我が白銀の剣で一刀両断にしてくれるわ」


「おいセリア、お前まで乗せられてどうする。……まあいい。その『アイス』とやらが私の舌を満足させるなら、雪山の主ごと狩ってきてやる」


 結局、食欲(とレナへの甘さ)には勝てず、最強の護衛二人は重い腰を上げた。


 数時間後。

 暖かな森を抜け、一行は文字通り肌を刺すような吹雪が吹き荒れる『万年雪山エリア』へと足を踏み入れた。


「さ、寒いですぅ……! レナさん、本当にこんなところに牛さんがいるんですかぁ……?」


 ミレが防寒具(厚手の外套)に身を包みながら、ガタガタと震えている。


「うむ……妾の神の鼻が、猛烈な『乳脂肪分』の匂いを捉えておる! この吹雪の奥じゃ!」


 ウカのナビゲートに従い、分厚い雪をかき分けて進むと、突如として猛吹雪の中から巨大な影が現れた。


「ブモォォォォォォッ!!」


 それは、体長が5メートルはあろうかという巨大な牛の魔物。全身が鋭い氷の結晶で覆われ、吐き出す息は周囲の空気を一瞬で凍らせている。


「出たな、フロスト・カウ! 全身が氷の装甲で守られている厄介な魔物だ」


 エドが巨剣を抜き放ち、殺気を膨らませる。


「エド! セリア! お乳の張ってるお腹のところは傷つけないでね! ミルクがこぼれちゃうから!」


 レナが吹雪の中で叫ぶ。


「無茶を言う! ……が、造作もない!」

「氷の装甲ごと、中身だけを叩き潰す!」


 極寒の地で、アイスクリームへの執念を燃やす最強の二人が、巨大な氷の牛へと襲いかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ