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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第3章:「神様と、黄金の稲穂を求めて」

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第39話:「黒い小瓶の奇跡と、究極の和定食」

「ふふふ……真っ白なお皿にお茶碗、それに木のお箸! これでやっと『定食』らしい形にできるよ!」


 ログハウスの厨房で、レナは買ってきたばかりの最高級の白磁の食器を磨きながらご機嫌だった。


「ただの土を焼いた器に、随分と金を払ったものだ。肉の味が変わるわけでもあるまいに」


 エドがカウンター席で頬杖をつきながら、呆れたように言う。


「変わるの! 料理は見た目も味のうちなんだから! ……あ、そういえば、あの商人のおじさんがオマケでくれたコレ、なんだろう?」


 レナはアイテムボックスから、古びた黒い小瓶を取り出した。

『東の異国から流れてきた、使い道のわからない発酵調味料』と商人は言っていたが。


 レナがコルクの栓を抜き、小瓶の匂いを嗅ぐ。


「――っ!!」


 レナの目が見開かれ、肩が震えた。


「ど、どうしたレナ! 毒のガスでも入っていたか!?」


 セリアが慌てて立ち上がるが、レナは小瓶を胸に抱きしめ、感極まったように天を仰いだ。


「ち、違うの……これ……お醤油だ! 大豆を発酵させた、本物の『醤油』の匂いだよ!!」


「ショウユ……? なんだそれは。泥水のように黒いが」


「奇跡の魔法のお水だよ! エド、セリア、ウカちゃん! 今すぐお昼ご飯にするから、そこに座ってて!!」


 レナのテンションが限界を突破した。

 彼女はすぐさま石窯に火を入れ、厨房を凄まじいスピードで立ち回り始めた。

 ウカの力で実った『黄金の白米』を炊き上げ、真っ白な陶器の茶碗にふっくらと高く盛り付ける。

 そして、別の大きな白磁の平皿には、『水晶エビの特大エビフライ』と、タレが染み込んだ『巨大ナマズの蒲焼き』を合い盛りにした。


「よし……最後は、小皿にこのお醤油を垂らして……」


 トクトク……と、漆黒の液体が小皿に注がれる。

 その瞬間、厨房に芳醇で香ばしい、大豆が発酵した特有の香りが広がった。


「ほう……! 黒い水から、なんとも食欲をそそる深い香りがするのう! 妾の米に絶対に合う匂いじゃ!」


 ウカが狐耳をピクピクと動かして興奮する。


「はい、お待たせしました! 『隠れ家食堂の特製・究極和定食』だよ!」


 カウンターに、一人ずつお盆に乗せられた定食が配膳された。

 木の無骨な器ではなく、純白の陶器に盛り付けられたことで、蒲焼きの照りや、エビフライの黄金色がまるで芸術品のように際立っている。


「……美しい。確かに、器が白いだけで、こうも料理が輝いて見えるとは」


 セリアが白磁の皿を見て感嘆の声を漏らした。


「さあ、お箸を使って食べてみて! エビフライには、その黒いお醤油をちょっとだけつけてね!」


「箸……この二本の木の棒か。器用さを試されているようだが、私の腕力と精密な剣技をもってすれば……」


 エドが不器用にお箸を握り、苦戦しながらも巨大なエビフライを掴み、小皿の醤油にチョンとつけて口に運んだ。


 ザクッ!!


「――ッ!!?」


 エドの動きが完全にフリーズした。

 エビフライの油っこさを、醤油の鋭い塩気と大豆の深いコクが完璧に中和し、中のエビの甘みを何十倍にも引き上げている。


「な、なんだこの黒い液体は……ッ! ただの塩とは全く違う! 食材の旨味の底をぶち破ってくるような、とてつもない深みがあるぞ!!」


「本当だ! しかも、この黒い液体の味がついた衣で、白い米が無限に食える! なんだこの恐ろしい調味料は!!」


 セリアも箸の使い方など忘れ、手掴みでエビフライに醤油をつけ、白米を狂ったように掻き込んでいる。


【料理名:『隠れ家食堂の特製和定食』】

【効果:全ステータス極大上昇。状態:『望郷の念』『完全なる満腹』を付与】


「んふふ〜、美味しいでしょ? 和食の最強調味料、お醤油の力だよ」


 レナも自分のお茶碗を持ち、つやつやの白米にちょっとだけ醤油を垂らして口に運ぶ。

 現実世界では合成アミノ酸の味しかしなかった「醤油風味」ではない。本物の、時間をかけて発酵された大豆の味。


 最強の食器と、最強の調味料。

 ログハウスの『夢の食堂』は、この日、味覚においても視覚においても、完全に異世界の常識を置き去りにする極致へと到達したのだった。

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